テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年12月号

2023年、MediaBorder的10大ニュース(前編)

2023年12月26日 14:48 by sakaiosamu
2023年12月26日 14:48 by sakaiosamu


※トップ画像はAdobe Fireflyで「放送事業はもはや成長できずインターネットに活路を見出すしかないがまだまだ途上である」と入力して出てきた生成Ai画像

いつのまにか2023年も残り数日。MediaBorderもこれが今年最後の記事になりそうだ。昨年は読者の皆様に投票してもらったが、今年は私が勝手に決めてMediaBorder的10大ニュースをお届けしよう。一度に書くと長ーくなるので、まずは1〜5をどうぞ。

1:テレビ放送事業の地盤沈下が決定的に

今年は何と言ってもこれだろう。テレビ放送は事業としてもはや絶対に再浮上することはないと誰もが認めざるを得なくなった。民放の話ではあるが、NHKの受信料も若い人の新たな契約が望みが薄い上に人口減少、値下げ圧力などで今後上がることはないだろう。
電波を通してエリアごとに一律の情報と娯楽を届ける仕組みは事業としてもう下がるだけだ。私はどこかで近郊すると思うが、少なくとも今後10年程度は減少するだろう。
代替は10年前からインターネットに可能性があるのもみんなわかっていたが、足踏みしている間に間に合わなくなっている。2023年は、そのことを放送業界全体で認識した歴史的な年として刻まれるだろう。
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2:ジャニーズ事務所問題勃発、社会的な問題へ

ジャニーズ事務所を創業したジャニー喜多川氏による性被害がBBCの報道をきっかけに露呈し、大きな社会問題として取り上げられた。帝国とも称されたエンタメ業界で絶大な力を誇ってきた組織があれよあれよという間に解体され、新組織に外からトップが就任した。
その中で「メディアの沈黙」も批判され、事態を温存した大きな原因と指摘された。各キー局が報道番組として、そしてのちには会社としての検証を行いその結果を番組として放送した。だが決して「それで済んだ」わけではなく、来年まで持ち越しになりそうだ。
私はその決着として、そもそもテレビ局とは娯楽を提供するのか、報道を中心とした情報を提供するのか、二択で問われる時が近いうちに来ると思う。どちらを取るべきかは明白だが、それはまた別の機会の議論としたい。
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3:NHKが新聞協会の圧力でテキストニュース縮小へ

この件は別のメディアも含めていちばん多くの記事を書いたかもしれない。総務省の会議を毎回傍聴してこれほど馬鹿げた議論が大真面目に展開されることに呆れた。NHKのテキストニュースは、どうやらなくなりはしないが放送された範囲を超えた独自のものは載らなくなるらしい。新聞協会の圧力にも呆れたが、結局はNHK内部の問題で、ネットで受信料を今後は得たいらしいのに、ネットで人々との接点を減らすのは頭が悪いとしか思えない。おそらくNHKはいまも敬われる存在だと思い込んでいる人物がいるのだろう。核となる人物の名前も知ったが、そんなたった一人の誤った認識でNHKの公共的役割がネットでは構築できないと思うと、なんとも言えない情けない気持ちになる。このテーマは来年も追っていくことになるだろう。
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※東洋経済オンラインにも数回の寄稿をしているので一つだけ紹介しておく

4:ParaviをU-NEXTが統合、SVOD勢力図ほぼ固まる

今年の配信業界で最も驚いたのが、2月のニュースだった。ParaviがU-NEXTに統合されるというのだ。TBSと日本経済新聞グループ、WOWOWの連携で2018年に鳴り物入りで誕生したParaviがたった5年で他のプレイヤーの中に入るとは!誕生時に取材に行き、意気軒高の関係者に取材した私からすると、あの時の高揚はなんだったのか。
だがNetflixが一時期行き詰まったりディズニー+の赤字が露呈したり、SVODが曲がり角にあるのは見えていた。ここで旗を下ろすのは潔いとも言える。テレビ局はSVODでBtoCに新たな活路を見出そうとしていたが、むしろ無料広告型のTVerに全力を注ぐ判断だろう。そうするとHuluの日テレやTELASAのテレビ朝日はどうするのか気になる。いずれにせよ、2010年代後半からのSVOD時代はここで第一幕が降りたのだ。次から何がどうなるのかに目がむき始めた。
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5:TVer大躍進、テレビ局は無料広告型へ

今年は何と言っても、TVerが大躍進した。月間3000万UBを超え、一部の若者たちにとっては無料で好みのドラマが視聴できるサービスとして定着している。今後のテレビ業界の成長を担うプラットフォームとして誰もが認める存在になった。
だが課題も多い。ローカル局の番組が埋もれがちであることと、目当ての番組を見たら直行直帰してしまうことだ。その解決は、新たな見せ方、新しい配信スタイルを付加することだろう。これについては、Inter BEEで私が進行を務めたセッションでCOO蜷川氏がなんらかの新しい、いきなりストリーミングが始まるような形態を付け加えると宣言した。
TVerはぜひさらに進化して頑張ってもらいたい。個人的にはUIも使いにくいので改善してもらいたいところだ。
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まず、INTER BEE MAGAZINEでTVerの若生社長にインタビューした記事があるので参考されたい

MediaBorderでは様々な角度で書いている

今後のテレビ業界に関する無責任な推計〜日本の広告費2022を元に〜

テレビ神奈川がTVerで「tvk祭」を開催。担当者インタビュー全文

TVerで人気爆発のきっかけは、濱家の遅刻だった!〜さんいん中央テレビ『かまいたちの掟』制作者・川中優氏インタビュー(前編)

INTER BEE BORDERLES、VODセッションでもらった質問に回答をいただいた 

 

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