テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年03月号 vol.94

世界も視野に、堅実に、飛躍する。〜U-NEXT堤天心社長インタビュー〜

2023年03月10日 09:54 by sakaiosamu
2023年03月10日 09:54 by sakaiosamu

2015年にNetflixが日本でもサービスを開始して以来、SVOD業界はプレイヤーが次々に増えた。U-NEXTは国内発サービスとしては古参。海外から来たガリバーNetflixや、huluなどのテレビ局系サービスが何かと話題を振りまくのに比べると地味な存在だったかもしれない。だが筆者のようなディープなVODユーザーにとっては最も頼もしいサービスであり続けた。テレビでの視聴を前提にUIがよくできており、価格は2,000円強と他より高いが、1200円分のクーポンで新作を個別課金で視聴でき、ポイントが余ったら提携映画館でも使える。2021年にはワーナーとの提携でHBO、HBO Maxの作品を独占配信しドラマも充実。筆者も『メア・オブ・イーストタウン/ ある殺人事件の真実』『ジ・オファー/ ゴッドファーザーに賭けた男』などの傑作を堪能した。ワーナー・ディスカバリーとの独占契約強化も今週、発表された。

画像 筆者お気に入りのドラマ『ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男』
© 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
U-NEXTにて見放題独占配信中

映画やドラマのコアファン相手に堅実にサービスを進化させてきたU-NEXTはゴーイングマイウェイ。一方テレビ局系サービスは乱立気味で、早くまとまればいいのにと思っていたのだが、2月半ばにU-NEXTがテレビ系サービスの一角であるParaviとの経営統合を発表したのは、私に限らず業界中が驚いた。
U-NEXTは母体となったUSENも含めたグループ企業の一員。全体を束ねるUSEN-NEXT HDの宇野康秀社長がU-NEXTについて1000万人を目標に掲げて勢いを感じさせた。

U-NEXTを実際に運営する堤天心社長はどう考えているのだろう。MediaBorderでは2016年3月、つまりちょうど7年前に堤氏にインタビューしている。当時は今と体制が違い、U-NEXTの事業本部長だったがサービスの責任者であることは変わらない。当時の記事も軽く読み返してもらうといいだろう。

 

テレビ局系サービスとの統合の背景

Paraviとの統合を受けて、7年ぶりにインタビューをお願いした。堤氏は7年前と変わらない謙虚さで驕ることなく語る。その堅実な姿勢を語りながら、視野を広げた今後の大胆なビジョンも示してくれた。一人のユーザーとして、これからを期待したくなるお話が聞けた。(以下「」内が堤氏の発言)

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--今回、驚いたのはU-NEXTさんがテレビ局系のParaviとくっついたこと。しかもParaviは複数のメディアのジョイントで一番ややこしい。どちら側から言い出したのでしょう?

「どちら側というわけではなく、お互いシナジーが見込めそうだというのが今回統合に至った最大の背景です。元々コンテンツホルダーとしてテレビ局さんとのお付き合いがありました。」

--いつ頃からそんな話を?

「昨年の9月です。コロナ禍でOTT含めデジタルサービス全体が世界的にも伸びる状況が2、3年ありましたが、昨年秋ぐらいからコロナが明けて、市場全体がまた次のフェーズに向かう気配が出てきました。
OTT市場全体が成長率では、少し落ち着くかもしれませんが、成長トレンドは変わらないと思っています。このタイミングで発表させていただいたのも、象徴的なのかなと考えています。」

--そもそもテレビ系のサービスと組めないかとのお考えはあったのですか?

「我々の立場からすると、映画を中心にしつつHBOなど海外ドラマとアニメーションに力入れてましたが、国内ドラマに関しては、例えばオリジナルをバンバン作るほど優先順位を高く持ってなかった。そこはテレビ局さんが1番、歴史的にもノウハウ的にもお持ちです。日本のユーザーさんもドラマに関しては、テレビで放送されたドラマをテレビで見る、もしくはTVerなど見逃しで見るのは視聴習慣として根強いものがあると感じてました。国内ドラマもしくはバラエティの領域には、自前で行くというよりは、どこかしらのテレビ局さんと組めたらいいなとずっと考えていた背景はあります。局さんによってカラーがあり考え方含めて個性をお持ちで、今回はTBSさん、テレビ東京さんと未来志向での合意に至った形です。」

--PPJは複数メディアのジョイントビジネスでしたが、テレビ局以外も株主として参画するとどうなるのでしょうか。

「ある意味ニュートラルですね、我々は。PPJさんに出資されていた企業さんが新聞社さん含めて今回、株式交換した流れになってます。ただ、今後ずっとそうかどうかは流動的ですね。」

--株式交換とは別に第三者割当増資をTBSホールディングスさんと博報堂DYメディアパートナーズさんが行っています。どうしてこの2社だけなのかが気になります。

「こうしてほしいということは、我々としてはあまりなく、各社さんそれぞれの意向によることです。ただ、我々からするとTBSさんだけでなくテレビ東京さんも、業務提携を同時に結ばさせていただいてます。」

--TBSホールディングスさん博報堂DYメディアプレイヤーズさんが取締役を送り込むことは?

「現時点で決まってる事実は特段ないです。これからの色んな協議の中でとなるかと思いますが、現時点では何も決まっていません。」

--ユーザー的に気になるのは、どういうサービスになるのかです。U-NEXTの中にParaviという枠ができるのか、それとも、Paraviが持ってたコンテンツがU-NEXTの中にジャンルごとに分かれていくのか。

「それも詳細についてはまだ決まってなくて、検討の上でにはなりますが、両方の可能性もありますね。」

--つまり、既存のユーザーからすると例えばTBSのドラマを検索したら、普通に出てくる。

「そういうことになるでしょう。まだ確定はしてないんですが。我々のサービスの中で、Paraviというある種のレーベルが存続することになる形です。」

U-NEXTが国内をまとめるのか?

--ところで宇野さんがインタビュー記事で「1000万を目指す」とおっしゃってました。ユーザー的にはすごく嬉しくて、このまま乱立していても使いにくくてしょうがない。正直私は、テレビ局系を少しずつ解約しちゃってます。だから、テレビ局にとっても、どっかにまとまるのが1番いいんじゃないか。1000万ってのもそれを踏まえておっしゃってるのかなと。海外から強いサービスが次々に来てDisney+もあっという間にポジションを獲得しちゃった。ユーザーから見ると、国内勢はまとまれよと思うわけなんです。U-NEXTさんはその旗上げをしたと受け止めたのですが。

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