テレビとネットの横断業界誌 Media Borderhttps://mediaborder.publishers.fm/2024-03-15T00:44:00+00:00ゴジラのアカデミー賞受賞は日本のコンテンツ業界にとって、とてつもなく大きな一歩だ【日本映画の絶望と希望・1】
2024-03-15T00:44:00+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28532/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/9372df39421142bf9f2d459390c89589.jpg" /><a href="https://godzilla-movie2023.toho.co.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><br /><span style="font-size: 12px;">※トップ画像は「ゴジラ-1.0」公式サイトより まだまだ映画館で上映中だ!</span></a></p>
<p> </p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>ゴジラというブレークスルー</strong></span></p>
<p>映画「ゴジラ-1.0」がアカデミー賞で視覚効果賞を受賞した。おめでとうゴジラ!おめでとう山崎監督!おめでとう東宝のみなさん!そしておめでとうロボット!<br />11日(月)に受賞が報じられると、山崎監督らVFXチームが壇上に上がりシュワルツェネガーとダニー・デビートからオスカーを受け取る姿がニュース映像で流れた。この時、山崎監督の隣の女性が男性の写真を手にしていたことに気づいただろうか。<br />写真の男性は、阿部秀司さんという映画プロデューサーでこの作品にも関わっているし、山崎作品には必ずエグゼクティブプロデューサーとしてクレジットされている。残念なことに昨年12月に亡くなった。<br />アカデミー受賞は天国で聞いただろうが、アメリカで公開されてヒットしたことは亡くなる直前に耳に入っていたそうだ。最期の最期で人生最大の喜びを感じたにちがいない。阿部秀司さんは、そういう”持ってる”人だ。山崎監督を世界に送り出す偉業を成し遂げた。</p>
<p>冒頭で「おめでとう」の最後に書いたロボットは「ゴジラ-1.0」の制作会社だ。阿部秀司さんはその創業者。そして私は、2005年から2011年までロボットの社員だった。前半は経営企画室長として、当時イマジカと経営統合してイマジカロボットグループとなり上場を目指す際、必要なことを多岐に渡り整える作業をした。社長だった阿部さんの横で事務方を務めたのだ。<br />またロボットが関わる映画について、いくら出資して興行収入がいくらになったらどうリターンがあるかをシミュレーションしたりもした。そうすると自然に日本の映画ビジネスの構造と課題が身に染みてわかるようになった。<br />最近はみんなが言うことだが、日本のコンテンツ市場はそこそこ大きいから国内でそこそこ回る。だから海外に出る必要がなかった。当時の私は、海外に市場を広げないと行き詰まると予測していた。いやすでに行き詰まっていた。<br />映画に限らず日本のコンテンツビジネスに携わる人々は全体的に国内のほどほどの市場に満足していて、海外に行くモチベーションが生まれなかった。だからヒットしても天井があり、しかも低い。満足していたのは大きな会社だけで、現場はいわゆる「やりがい搾取」されていた。<br />この袋小路から抜け出すには海外に飛び出し市場を広げるしかない。私がMediaBorderで海外展開の話題を時々出すのは、今もその思いがあるからだ。だがその後ロボットを辞めてからも考え続けた結論は、「実写は無理、アニメならいける」というものだった。逆に言うと、実写は海外展開を諦めるしかなくない?と考えていた。<br />そこに「ゴジラ」のアカデミー視覚効果賞受賞だ。なるほど!と思った。しかも取ったのは山崎貴監督、自らVFXを操り特撮で物語を構築できる人。なるほどと言うのは、普通の実写は難しいけど特撮という手があった!という意味だ。特撮なら海外展開できる!山崎監督のような実績と才能を持つ作り手ならいける!しかもゴジラのキャラクターパワーが強力なブーストとなった。ブレークスルーになる要素が揃った「これしかない」という形だったのだ。<br />ではなぜ海外展開がそれほど必要だったのか。日本の映画ビジネスの微妙な規模による限界についてさらに解説しよう。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>映画興行市場2000億円の中途半端さ</strong></span></p>
<p>映画制作には億単位のお金がかかる。特に特撮を駆使しなくても、ビジネスとして映画を作れば3億円くらいはすぐにかかる。「低予算映画」もあるが、それはスタッフが手弁当で頑張っていたり、役者が安いギャラで熱演していいものができる。コンスタントに展開するビジネスとして映画を作れば3億円は決して巨額ではない。<br />では3億円で作った映画が興行収入10億円になったとする。日本映画としては上から30位くらいには入るヒットだ。でもそれでは元が取れない。<br />興行収入とは映画館に入ってきたお金、つまり小売の売上高の総額だ。ケースによるが半分は小売、つまり映画館の取り分だ。小売の利益率としては大きいが、映画館はスペースが必要で設備投資もかかる運営の大変な小売業なのだ。<br />それでも半分の5億円が残る。これもケースバイケースだがそこから配給会社が手数料を4割程度持っていく。すると2億引かれて3億残る。これでトントン。だが配給会社はP&amp;A(と昔呼ばれたがいまはちがうかもしれない)を差っ引く。Pはプリント、Aはアドバタイズつまり広告。<br />昔は公開館数分、フィルムをプリント(複製)する必要があり、1本40万円とか60万円とかかかるので、全国200館ロードショーだと何千万円もかかった。広告も映画館に置くチラシから予告編制作、直前に新聞広告、テレビCMを打つのでP&amp;Aは億単位でかかったものだ。いまはデジタル上映になりプリント費はコストダウンされただろう。新聞広告も今はやらないし、P&amp;Aはずいぶんリーズナブルになったはず。でもCM打ったりすればいまだに1億円くらいすぐかかる。<br />1億円がP&amp;Aとすると配給手数料2億円+P&amp;A1億円で3億円持っていかれる。残りは2億円で、制作費3億円なので1億円赤字。これを2次利用料で補えるかどうかになる。昔はDVD、いまは配信だろう。おそらく1億円はあちこち配信してなんとかなりそう・・・にしてもやっとトントン。<br />これは3億円かけて興行収入10億円になった時の話。日本映画製作者連盟が毎年出す映画産業統計によると、2023年の日本映画で10億円以上の映画は34本だった。公開本数は676本なので5%くらい。残りの95%、642本はその後数年かけてリクープできたか、元々低予算でみんなが我慢して乗り切ったか、赤字で泣いているかだ。<br />日本の映画興行市場は不思議と2000億円台と枠がはめられたように拡大しない。変遷はあって、昔は洋画が圧倒的に強く6割くらい占めていたのが2000年台に邦画の方がシェアが高くなった。全体も2000億円前後がずーっと続いたのが2010年代後半には徐々に増え、2019年には2600億円を超えた。このまま3000億円まで膨らむのかと期待したが、コロナ禍で水をさされ、ようやく去年は2200億円以上に持ち直したところだ。</p>
<p><a href="https://assets.st-note.com/img/1710405843782-w7iRqQktek.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" rel="nofollow"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1710405843782-w7iRqQktek.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="349" /></a> <a href="http://www.eiren.org/toukei/data.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">日本映画製作者連盟「映画産業統計」より筆者作成</a></p>
<p>決して2000億円台から増えない市場で、2次市場含めてなんとか持ってる映画業界。北米に次ぐ世界2位の規模だったが、2012年に中国に抜かれ3位に落ちて今もそのまま。この中途半端さが、日本映画市場の悲しさだった。国内で我慢して、現場をやりがい搾取し、お金を出す企業の社員もそこそこの給料で、役者はスターとチヤホヤされていればなんとなくみんないい気分でやっていける。<br />でも私はずっと感じていた。こんなのおかしいし、こんなやり方じゃ破綻する。現場も含めてみんなが本当にいい気持ちになるには世界に行かないと、世界市場でポジションを持たないとダメだ。<br />ロボットで知れば知るほど、そんな思いが膨らんだ。答えは世界、これは間違いない。どうすればいいのか。そう思っていたところに、チャンスが訪れたが、それをまったく活かせず終わった一件があった。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>2009年アカデミー賞ロボット作品「つみきのいえ」は海外に売れたか?</strong></span></p>2024-03-15T00:44:00+00:00NHKは6つのテキストサイトを停止、新聞業界は得をするのか?
2024-03-11T00:33:27+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28504/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/e6896498cdd545d99254ac15e0ba024c.jpg" /></p>
<p id="0d5f5853-9292-49d1-8334-93fca1ecb9a8" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>NHKが自分で選択し、新聞協会の攻勢もあってテキストニュースを縮小</strong></span></p>
<p id="2280e1ff-fb5c-4f87-ba65-3c6899928942">NHKは「政治マガジン」「事件記者取材ノート」「国際ニュースナビ」「サクサク経済Q&A」「サイカル」「アスリート×ことば」の6つの特設サイトを3月29日に終了する。この件は内部情報を得ていたので記事にしようと思っていたら、朝日新聞が報じていた。</p>
<figure id="4c36bbce-ec2b-4241-b060-514b18671140" data-src="https://digital.asahi.com/articles/ASS375VHPS36UCVL04P.html" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://digital.asahi.com/articles/ASS375VHPS36UCVL04P.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">NHK、「政治マガジン」など6サイト更新停止へ 新サービスを検討:朝日新聞デジタル</a></span></div>
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<p id="1c3b955e-394c-4279-86a5-d76a0c9df6a6">これには驚いた。新聞協会が要望していたことを、NHKが具体化するのに「関係者への取材でわかった」とスクープのように書くのはどういう神経だろう。<br />「サイトの停止でサービス低下を懸念する声があるが」とまで書いていて、だったら要望するなよと言いたくなる。<br />NHKテキストニュース縮小の経緯については2月29日にも佐々木俊尚氏をゲストに配信した「新メディア酔談」で説明している。</p>
<p><video controls="controls" width="300" height="150">
<source src="https://youtube.com/live/xDTJZMoRGrs" /></video></p>
<p id="d440d749-f7a7-43a9-a7d2-b6c6e8e25348">この中で佐々木氏にお見せした、経緯を説明するチャートを載せておこう。</p>
<figure id="44935a5b-6200-42f7-9850-950e2b9e07f8"><a href="https://assets.st-note.com/img/1709882466175-YqAFKltPc1.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1709882466175-YqAFKltPc1.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="293" data-modal="true" /></a>
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<p id="c88e3585-3282-428b-928c-118a43390084">23年5月26日の総務省有識者会議「公共放送ワーキンググループ」でNHK井上副会長が「NHKのネット業務は放送と同一の内容」を方針とするとプレゼンしたことが発端だ。元々NHKネット業務が必須業務化されることに反対していた日本新聞協会がこれに勢いづくように大攻勢をかけ、最終的にNHKのテキスト情報は災害時や重大事件を除くと「番組表など放送番組に密接に関連する情報又は放送番組を補完する情報等に限定する」と決まってしまった。<br />NHKが自ら言い出したことであるのは間違いない。その代わり、放送の同時配信アプリ「NHKプラス」は必須業務となり、テレビを持たない人でも積極的に使いたい人は契約できることになった。<br />つまり、NHKは「プラス」の有料化と引き換えに、テキストニュースの大幅縮小を呑むことで、新聞協会とバーター取引をしたと見ることができる。ていうか、そうなのだ。<br />共同通信は、新聞協会が必須業務化を承認したとわざわざ記事にしている。まるで29日に向けてタイミングを合わせたかのような動きではないか?</p>
<figure id="5da2d7f1-a9b3-443b-a6e6-ea544888c498" data-src="https://nordot.app/1138766001043423461" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://nordot.app/1138766001043423461" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">NHKネット配信必須化受け入れ 範囲限定を評価、新聞協会 </a></span></div>
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<p id="7da23878-3b41-4bf4-852e-11956fec2cc2">そこに、国民にとっての利益になるかどうかの視点は全くない。そこをまったく考えずに業界の内輪だけを気にして決めた、国民不在の決定だ。だが果たして、新聞社にとって利益になるのだろうか?新聞協会には、メディアがどれだけ危機的状況かが見えていないようだ。</p>
<p id="abfafb44-e41f-4482-a8a7-0f4e0727c145" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>新聞は伸びるネット広告市場で売上を落としている</strong></span></p>
<p id="b2d13f08-614b-4826-b192-8d442f5ea50e">新聞業界の人々は私が想像していた以上に「NHK民業圧迫論」を唱える。頭の硬い年配者が言っているだけで若い現場の皆さんはそんなこと考えていないと思っていたが、そうでもないようだ。<br />ここからは新聞の皆さんに言いたいのだが、新聞協会の言う通りなら今回NHKのテキストニュースが大幅に縮小されることで、民業圧迫が大きく後退するはずだ。それで皆さんは実際に得をするのだろうか?経済的メリットがあるの?<br />2月27日に電通が発表した「2023年日本の広告費」で衝撃を受けたのは、「新聞デジタル」が下がっていたことだ。</p>
<figure id="fc4fee10-0851-4730-900f-c7c9dc603745"><a href="https://assets.st-note.com/img/1709883567980-Zeku3bWFzu.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1709883567980-Zeku3bWFzu.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="215" data-modal="true" /></a>
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<p id="b5199f6b-a943-4438-ab47-574d1a961d81">電通は「インターネット広告費」の中に2018年から「マス四媒体由来のデジタル広告費」の分類を設け、それぞれのデジタル版の広告収入を載せている。「ラジオデジタル」はradikoの売上だろう。「テレビメディア関連動画広告」はTVerやABEMAだと思う。<br />「新聞デジタル」「雑誌デジタル」はそれぞれのネット版のことだ。「新聞デジタル」は雑誌に比べると小さいが、毎年伸びていた。インターネット広告市場全体が伸びているから当然と言えば当然。伸びないはずがない。<br />ところが、2023年は208億円で、前年の221億円から6%近く下がっていたのだ。そんなことがあるのかと驚いた。</p>
<figure id="1b1a8741-85ab-4dc0-9c47-fdea02270d8a"><a href="https://assets.st-note.com/img/1709883962162-P3NybDrjQQ.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1709883962162-P3NybDrjQQ.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="645" data-modal="true" /></a>
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<p id="864e0caf-3c2f-4c33-a785-80e4bc182d82">伸びている市場でとにかく活動していれば、全体に合わせて伸びるものだ。下がるなんてこと、起きるはずがない。だが起きていた。上の2軸グラフを見れば明らかなように、ネット広告の成長に沿って伸びていた新聞デジタルが、突然カクンと折れて下がっている。<br />NHKの民業圧迫のせいだろうか?NHKは前々からネット展開を行なってきた。それが突然2023年になって急に本格的に圧迫してこうなったのか?いやいや、NHKのテキストニュースにそこまでのパワーはないし、突然影響するなんておかしい。ではなぜか?先日来書いているように、ネット業界が荒れているせいだ。MFAサイトが広告収入を収奪したり、SNSで記事が前ほど拡散されなくなったり、おかしなことになっている。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28473/">ネット広告市場は悪魔に侵され3兆3330億円に膨らんだ</a></span></p>
<p id="7cbd7d61-6af1-40b4-b9cf-74e90f3c8eef">つまり、新聞にせよNHKにせよ、まっとうな記事が流通しにくくなっているのだ。MFAだの、フェイクニュースだの、詐欺広告だの、インプレゾンビだのにネット上のコミュニケーションが侵されているからだ。<br />そんな中でのNHKのテキストニュース縮小はとんでもない大間違いではないだろうか。少なくとも、カオス化するネット空間においてまともな情報源が減ってしまうのだ。国民にとって、よりによってこんな時になんてことするんだという事態。<br />新聞のネット版にとってもむしろマイナスに働きそうだ。まっとうなニュースが減ることで、他のまっとうなニュースの流通にも悪影響を及ぼすのではないか?<br />「民業圧迫論」は正しい主張と言えるのか?ライバルを蹴落としたつもりが、自分たちの居場所まで削ってしまっていないか?<br />想像してみてほしい。来年電通が発表する「2024年日本の広告費」で「新聞デジタル」は回復するだろうか?NHKテキストニュースが縮小したおかげで、あなたたちの広告収入は増えるのか?そんな実感あるの?<br />たぶん、増えないんですよ。なぜならば、この現象はNHKとまったく関係なく起こっているから。新聞のネット版へのトラフィックがそもそも減ってるからだよ。おかしなサイトが増え、SNSでは雑誌のスクープを軸にした罵り合いが氾濫し、まっとうなニュースがYahoo!とスマニューでしか届かなくなっている。いや、Yahoo!ニュースもPV減らしていると思う。少なくとも私は、Yahoo!に書いても前ほど読まれなくなっている。</p>
<p id="27fd8a59-5ad0-42ff-a29f-360232aa10a0" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>全メディアで協力して情報圏を作れ、国民のために</strong></span></p>
<p id="815727bc-b15e-45fa-a98a-664741dea261">これを解決するには、スクラムを組むしかない。NHKのテキストニュースを縮小するのではなく、それをポータルのように使ってまっとうなニュース同士でリンクを貼って連携していく。<br />NHKでガザのニュースを読んだら、朝日新聞や読売新聞の解説記事に飛べる。両方を読み比べることができる。<br />能登半島の復興の記事がNHKに出たら地元紙にリンクが貼られていて、もっと細かい地域のニュースが読める。読者はそのリンクを渡っていれば、荒れたネット空間に出なくてもまっとうな情報が手に入る。<br />もちろんその情報圏には民放のニュースも入ってもいい。いま動画ニュースは結構視聴されている。YouTubeでは怪しい陰謀論動画だけが見られているわけではなく、意外に民放のキャスターによる解説動画が何十万回も再生されている。能登半島地震の時もローカル局の動画がかなり回った。<br />それらも相互リンクに加わってもらい、新聞でさらに解説した記事に飛べれば、読む側にとってこんな便利な仕組みはない。<br />これまで、既存メディアはプラットフォーマーにしてやられてきた。服従させられ、広告収入を抜かれてきた。逆襲する時だ。<br />その際に「新たな国産プラットフォーム」なんて作らなくてもいい。NHKをハブにすればいいのだ。なにしろ彼らは広告収入を得てはいけない。経済的にはスルーで、得られるべき広告収入は新聞や民放がちょうだいすればいいわけだ。<br />NHKから新聞へ、民放へ。民放から新聞へ、新聞から民放へ。そんな空間をつくれば私たちも安心して渡り歩ける。荒波に打たれかねないカオスの海へ出る必要は無くなる。人々を不安にしない公共情報圏は今なら作れる。荒れたネットに辟易としている人々は大勢いるはずだから。<br />もちろん使う側は気軽にネットにも出ればいい。選択肢を、自己責任のネットワールドと、信頼できるメディアに囲まれた安心世界と、両方用意し使い分けてもらえばいい。<br />これが絶対正解とは言わないが、方向性としては協力し合って何らかの共栄圏をつくることで間違いないと思う。その線に沿って一緒に話し合えば、適した形が見つかるはずだ。<br />だが問題はNHKにしろ新聞業界にしろ、上層部は「国民のために力を合わせる」なんてことは考えないことだ。なぜならば、ネットを自分で使ってないから、いまの荒廃ぶりがわからない。そして残念なことに、上層部で議論してもらわないと共栄圏は実現しない。<br />いや、どうかなあ?新聞業界の人は若い層も「NHKは敵だ!」で凝り固まってるんじゃないの?共栄圏を構築する、なんて発想がそもそも、新聞業界には持ち得ないことかもしれない。<br />それはともかく、29日に起きようとしているのは、言論界が自らの首にギロチンを落とすようなことだ。NHKも新聞業界も、その重みがまったくわかってない。もう手遅れだ。どうしようもなく愚かなことが、もうすぐ起ころうとしている。</p>
<div data-v-69a1e462="" data-v-2baf2fcb=""> </div>2024-03-11T00:33:27+00:00リモート勉強会「ミライテレビZoom雑談」を3月22日に開催します
2024-03-05T08:20:36+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28484/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/cfaebdd730b64496a4dcc210462a7c6e.jpg" /></p>
<p>MediaBorder購読者だけが参加できる勉強会を開催します。2月には、リアルな場で集まる「ミライテレビ推進会議」を開催しました。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28375/">勉強会「ミライテレビ推進会議」を再開します</a></span></p>
<div>
<p id="d31f3019-0307-4179-ab12-f25e10f806ba">このリアルな勉強会は今後、2ヶ月に一回の頻度で開催していく予定です。それとは別にやはり隔月で、Zoomで集まるリモート勉強会もやろうと思います。こっちは発表者の話をじっくり聞くと言うより、ネタ振り役の方にお題と意見を投げかけてもらい、あとはわいわい意見を出し合うやり方にします。Zoomなのでどこにいても参加いただけます。<br />では今月のネタ振り役とテーマを発表します!</p>
</div>2024-03-05T08:20:36+00:00ネット広告市場は悪魔に侵され3兆3330億円に膨らんだ
2024-03-04T00:52:29+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28473/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/9f42c57749994434b672189007838fdd.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※画像はAdobeFireflyに「インターネットに表示される広告は数が多すぎてコンテンツが見えなくなっている」と入力して描かれたもの</span></p>
<p>2月27日、毎年恒例の電通による「2023年日本の広告費」が発表された。前年の日本で使われた広告費を媒体別に集計し発表したものだ。</p>
<p>毎年発表されるデータから、テレビ(地上波)、新聞、インターネット広告費をピックアップしてグラフを作成してきた。2023年の数字を入れて見てみよう。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>ネット広告に倍の差をつけられた地上波テレビ広告</strong></span></p>
<p><a href="https://assets.st-note.com/img/1709271480323-mrlbIe2rks.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" rel=" nofollow"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1709271480323-mrlbIe2rks.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="438" /></a> <a href="https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0227-010688.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">電通「2024年日本の広告費」より作成</a></p>
<p>電通発表のテレビ広告費には衛星放送も合わせた「テレビメディア広告費」の項目もあるが、私は過去のデータとのつながりを見るために「地上波テレビ」の項目でグラフを作成している。地上波テレビ広告費(グラフの青い線)は前年の1兆6768億円から1兆6095億円へと4.0%下がった。かろうじて1兆6000億円台を保ったが、来年は1兆5000億台に下がるだろう。<br />新聞広告費は3697億円から3512億円へと5.0%下がった。そしてインターネット広告費は3兆912億円から3兆3330億円へと7.8%、2418億円も上がった。その勢いはまだまだ止まる所を知らない感じだ。地上波テレビを倍にしても届かない高みに上ってしまった。<br />言うまでもないことだが、地上波テレビ広告市場は何と言っても視聴率全体が下がっていることが大きい。そして当面この傾向は続く。それはもはや、業界全体が覚悟していることであり、神風など吹くことはない。ビジネスモデルの抜本的改革がないと下がりゆくのみだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>DXの優等生、雑誌広告の異変</strong></span></p>
<p>ところで今回のデータで「おや?」と感じたことがある。ここ数年、インターネット広告費の中に「マス四媒体由来のデジタル広告費」の項目が入って、既存メディアのデジタル版の広告費の成長の様子がわかるようになっていた。雑誌は、紙媒体の広告費は毎年数%下がっていたが、「雑誌デジタル」がぐんぐん伸びて、このまま進めば「両輪」になりそうに見えていた。デジタル広告はこんな風に成長させるべきだという好例であり、メディアDXの優等生と目されていた。</p>
<p><a href="https://assets.st-note.com/img/1709273449509-8HYUaAltz3.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" rel=" nofollow"><img style="max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1709273449509-8HYUaAltz3.jpg" alt="画像" width="550" height="122" /></a> <a href="https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0227-010688.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">画像:電通発表「2024年日本の広告費」より</a></p>
<p>ところが、「雑誌デジタル」はなんと横ばい、610億円から611億円へとほとんど成長が止まった。<br />さらによく見ると新聞デジタルに至っては221億円から208億円へと下がっている。デジタル広告で「下がる」ということがあるのか?!<br />市場が伸びているタームでは、とにもかくにもその市場に対応した商品を出せば、多かれ少なかれ伸びるものだ。インターネット広告市場がまだまだ成長し、地上波テレビの倍にまで伸びたなら、雑誌も新聞もデジタル広告は伸びるはず。ところが、そうじゃなかった。<br />なぜか?インターネット広告の伸びは、たぶんおかしいのだ。ネット広告全体があちこちでネジがゆるんでいっていて、ある時一気に崩壊するのではないか。私はそんなことを危惧している。ここから、じっくり解説しよう。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>ネット広告市場は詐欺と押し売りで成長している</strong></span></p>2024-03-04T00:52:29+00:00ローカル局は災害にどう対処するか〜各局の能登半島地震報道まとめ〜
2024-02-27T01:33:44+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28453/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/1fd9288252c34ed09aab4f07f3074b25.jpg" /></p>
<p>筆者は能登半島地震をテレビ局がどう伝えたか、情報収集してきた。<br />まずテレビの放送内容をデータ化するエム・データ社に依頼し、関東・関西・中京地区の1月1日の各局の放送データをもらい、その中で地震についてどう報道されたかを東洋経済オンラインで記事にした。</p>
<p style="list-style-type: none;"><span style="font-size: 18px;"><a href="https://toyokeizai.net/articles/-/728104">「能登地震」を元日のテレビはどう放送したか</a></span></p>
<p style="list-style-type: none;"><span style="font-size: 14px;">この記事の作成過程で地震の被害に遭った石川県・富山県・新潟県の各局からの情報も求めた。各局のお問合せ窓口から問い合わせ、知ってる方がいる局の情報はメールでもらったりしたがかなり時間がかかった。それをようやくまとめて記事にしたのがこれだ。</span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28372/">能登半島地震、三が日のローカル局は地震報道をどれくらい伝えたか</a></span></p>
<p id="b22de06a-275d-49b1-b498-e10a80db97c8">ただ、この時点でも2局の情報が足りてなかった。それもようやく揃ったが、東洋経済オンラインに続きとして掲載するタイミングは逸してしまったのでここでお伝えしたい。</p>
<p id="c0d9f4a6-b2ab-41a5-bbf0-ce2b57a0480c" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>災害報道を続ける意義、通常番組に戻る意義</strong></span></p>
<p id="17a7470a-9240-4b0a-ad21-1be486d025de">まず1月1日の放送での地震報道について。石川県から見てもらおう。<br />先に復習すると、関東の民放は16時13分前後に一斉に正月番組から地震報道にカットインした。その後、21時には他局が正月番組に戻った中、TBSだけは引き続き報道を継続した。</p>
<figure id="95d82b9f-cf81-4228-a5d8-2c8532a5da5a"><a href="https://assets.st-note.com/img/1708921925635-t4dk5vUpL4.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1708921925635-t4dk5vUpL4.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="227" data-modal="true" /></a><br /><span style="font-size: 12px;">(各局からの情報を筆者がExcelで整理した)</span></figure>
<p id="77a10336-d6d4-4620-8eb0-9cf385f65667">石川県でもTBS系列の北陸放送が地震報道を続けた。黄色い部分はキー局発の報道部分で赤色がローカル発の部分。北陸放送は能登現地にスタッフがいたこともあり、ローカル発でも数回に渡り伝えている。<br />また石川テレビはフジテレビが21時10分に正月番組に戻った後も、地震特番を続けている。<br />その結果、21時以降は2局は地震報道、2局は正月番組を放送している。たまたまだろうが、県民にとってはいいバランスだったのではないだろうか。発災後すぐ日が暮れた上、最も被害が大きい能登半島の様子は把握しにくかった。それでもわずかな情報でも知りたい人もいれば、ずっと地震報道を見続けるのはしんどい人もいただろう。<br />災害時のテレビの役割には大きく2つあると思う。1つは刻々と変化する災害情報をリアルタイムで伝えること。もう1つは、緊迫した気持ちを和らげる娯楽番組を放送すること。そのバランスはケースバイケースとしか言えない。示し合わせたわけではないだろうが、NHKが全国的に地震報道を続けたことも含めて、石川県ではいいバランスの放送になったのではないか。<br />富山県、新潟県も似た状況だ。</p>
<figure id="ddf05767-97a8-4534-b539-8987856c450a"><a href="https://assets.st-note.com/img/1708923115768-rYceVrv2Tu.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1708923115768-rYceVrv2Tu.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="346" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="3583110d-4112-40f1-9d16-4158d0044ecf">この2県でも、キー局発の地震報道の合間にそれぞれローカル発の部分を織り交ぜて放送している。そしてTBS系列の富山のチューリップテレビ、新潟の新潟放送が21時以降も地震報道を継続。それ以外では、新潟の日本テレビ系・テレビ新潟放送も21時以降に地震報道を継続している。富山が3局エリアであることも含めて考えると、それぞれいいバランスの放送だったように思える。</p>
<p id="8f95dba3-cd7f-4f94-823e-64205e582eaa" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>テレビで、そしてあらゆる手段で伝え続ける</strong></span></p>
<p id="c3157d80-6528-4030-a604-884a4105c9d1">次に、各局の2日3日の地震報道とL字放送についてまとめた表をお見せする。縦長にしたのでスマホでも読みやすいと思う。</p>
<figure id="28f78517-ad20-4d9e-8618-77ad46bd65d1"><a href="https://assets.st-note.com/img/1708923530089-W9nM6NLmou.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1708923530089-W9nM6NLmou.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="668" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="523c3eeb-9ff2-44ec-9089-0430d44ad3a8">1月1日に情報が取りにくかった分、2日や3日に各局が特番を組んで独自の報道をしている。フジテレビ系列は2日8時30分からキー局の特番があり、石川テレビと富山テレビはその前の時間に自局発の特番を組んで続けて編成している。<br />L字は富山新潟は1月2日までだったが、石川県の4局は3が日後も1月末〜2月初旬まで出し続けている。能登半島をエリアに持つ局としては必然だっただろう。<br />次にネット活用とその後の特番など。</p>
<figure id="8b665d0a-5008-4926-92d1-a4eea43bed6b"><a href="https://assets.st-note.com/img/1708924136921-RMh1oHf92V.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1708924136921-RMh1oHf92V.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="673" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="9b5b5e94-dbea-4746-bd80-b49f0f78f502">今回は放送や通信が繋がらない地域が出てきて、広範囲で停電が続いた。放送なら大丈夫、というわけでも、ネットなら万全、というわけでもない。<br />だからこそ、テレビ局がネットで報道する意義も大きかったと思う。またネットでのデマやフェイクニュースがこれまでの災害よりずっと多かった。AIの進化やXのルール変更で意図的なデマが起きやすくなっている。確かな情報を伝えるメディアとして、テレビ局のネット報道の役割は増したと思う。実際、地震報道を切り出したいくつかのYouTube動画が100万回を超えて再生されていた。<br />また発災1ヶ月を節目にした特番が多かった。能登半島では地震情報と共に被災者たちの状況を伝える意義も大きく、特に石川県の局にとっては、まだまだ能登半島地震は終わっていない状況だろう。<br />情報を寄せてくれた局の中には、ラジオについてもどう伝えたかをまとめていた方もいた。私は質問項目に入れていなかったのだが、情報をもらってから、ラテ兼営局には聞くべきだったと反省した。テレビとラジオが並行してどう地震を伝えるかは被災者から見ると重要な観点だし、こういう時にこそ、兼営局の存在意義はある。留意すべき点として、今後忘れずにいたい。</p>
<p id="ab388120-c19e-4701-a0bc-44c953627297" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>「日本人の急所」を突いた地震から何を学ぶか</strong></span></p>
<p id="670aeb21-96c0-4f3c-9c72-5f97147ff383">さてこうした情報とは別に、反省点や思うところも書いて送ってくれた方もいた。<br />ある方は、今回の地震で対応が遅れた理由を2つ示してくれた。<br />・元日というローカル局にとって一番人員が手薄な日に起きた<br />・支局カメラマンを置いている局はあるが、カメラマン本人も被災しているため十分に取材で動けなかった<br />非常に特殊なタイミングで、特殊なエリアを中心とした地震が起こった、ということだと思う。<br />別の局の方は、似た内容をこんな風に書いてくれた。<br />「今回の震災は、ある意味、日本人の急所をあらゆるところからついてきているのではないかとも思いました。元日の夕方、1年で最も幸せな時間のはず。が、道路一本挫かれただけで、すべてが止まってしまう」<br />ここから想像を広げると、おそろしくなる。「日本人の急所」は正月の能登半島だけではなく、そこここにあるはずだ。<br />日本人がいちばんゆったりできるはずの元日にも、大きな災害は起きる。そこに局員がいても、自身が被災してしまう。そして日本には何かあれば閉ざされてしまいかねない地域は多い。<br />「こうした現象に放送局に何ができるのか?放送はどれだけ命を守れるのか?あらためて自戒する日々です。」<br />とも書いていた。発災からもうすぐ丸2ヶ月が経つ。総括するにはまだ早いだろうが、「何ができるのか?」を少しずつ考え、話し合う時かもしれない。<br />例えば元テレビ朝日で武蔵大学教授の奥村信幸氏は1月12日にYahoo!ニュースにこんな記事を載せている。</p>
<figure id="950ed2cc-704f-475e-a2ad-9917186dc44e" data-src="https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2881920f244aceac8d56dd533b2d0240b3a32bc6" data-identifier="null">
<div data-name="embedContainer">
<div data-embed-service="external-article">
<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2881920f244aceac8d56dd533b2d0240b3a32bc6" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">発生から10日:能登半島地震報道を振り返りメディアの課題を考える(後編:デジタルで「寄り添う」とは)(奥村信幸)</a></span></div>
</div>
</div>
</figure>
<p id="2e57e860-7f1e-4803-8e85-2351a0eb00ec">ネット活用については各局ともYouTubeでのニュース配信など奮戦したわけだが、奥村氏はYahoo!が作った「災害マップ」を取り上げている。被災地で必要な情報をマッピングすることは即役立ちそうなソリューションだ。民放も乗っかってもいいのかもしれない。<br />それも含めて奥村氏が「コラボレーションが必要だ」と書いているのも重要と受け止めた。民放同士、そしてNHK、さらに新聞社も含めた横の連携が災害時には必要ではないか。「何ができるか?」の一つの答えとして、検討すべきテーマだと思う。そしてそのためには、事が起こる前に話し合っておく必要があるだろう。</p>
<p id="4a757e4d-6658-4705-8e9f-5daca55e0450" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>公共の「共」を担う民放の役割は何か</strong></span></p>
<p id="e221703f-3720-4298-a026-3ebf49d9813a">ここ数年の放送業界の議論の中で「公共的役割」という言葉が浮上しているように思う。NHKが公共放送で民放はそうじゃない、ということではなく、どちらも公共的役割を担うメディアだ。メディアには元々そういう本質がある上に、公共の財産たる電波を使う放送局には、民間であっても公共的な側面が強い。<br />民放にも問われる公共性がはっきり求められる機会が今回の地震のような災害だ。災害時に何をどうするかを、民放が一緒に議論しておくことは必要なことだろう。そしてそこには、NHKも加わるべきはずだ。<br />「公共」という言葉は、よく見ると「公」と「共」が併存している面白い構造だ。それぞれに放送局を当てはめると、こうなると思う。</p>
<figure id="26311fd7-c266-4c95-a368-a5e3e1609469"><a href="https://assets.st-note.com/img/1708928891547-9LmeD2VpYW.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1708928891547-9LmeD2VpYW.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="349" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="1e4f9099-f7fe-40ce-a289-e31c03d5c04e">NHKは今回も災害報道で頑張った。ただNHKの地方局の職員は”赴任”してきた人たちだ。民放の社員も、必ずしもその地域で育ったとは限らないが、入社したら地域を離れるのは東京支社に一時的に異動した時くらいだろう。地域と共に暮らし、地域と共に年をとる。<br />NHKは公の放送局として地域に貢献する。だが民放は共に生きる者として地域で地域を支える。民放は公共的役割の「共」が強い放送局だと言える。<br />地域と共に生きるメディアは、今後ますます災害時の役割は高まるし、一緒に地域を支えるべきではないか。そう考える人も増えていると思う。<br />能登半島地震からメディアは何を学ぶべきか。もうしばらく追っていきたい。</p>
<div data-v-69a1e462="" data-v-2baf2fcb=""> </div>2024-02-27T01:33:44+00:00Netflixはなぜ自社作品に製作費をたっぷりかけられるのか、公開データから強引に試算してみる
2024-02-20T00:10:06+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28408/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/fb006a2d26b6463aab2f4d7799a4618a.jpeg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※写真は2015年9月1日のNetflix、日本サービス開始前夜祭イベントの様子</span></p>
<p>MediaBorder読者の皆さんならご存知の通り、Netflixが12月に作品個別の視聴時間を公表した。今後、年に2回レポートしていくそうだ。</p>
<p><a href="https://about.netflix.com/ja/news/what-we-watched-a-netflix-engagement-report" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Netflix「エンゲージメントレポートについて」2023年12月13日</a></p>
<p>最初の文章が、気が利いている。<br />「NetflixはYouTubeを除くどの動画配信サービスよりも、人々が視聴している作品に関する情報を提供してきました。 そして今まさに前進する時期を迎えたと考えています。」<br />もちろん、これは「うまい言い方をしている」だけだ。彼らはこれまで頑なに視聴時間などの情報を公開してこなかった。我々ユーザーに対してだけでなく、映画やドラマを売ったり製作する「仲間たち」に対してさえだ。<br />ところがハリウッドで役者たち脚本家たちがストライキを起こし、様々な要求を提示した中に、配信事業者の視聴時間データの公開も含まれていた。要求を突きつけられてようやく、”情報提供に積極的なNetflix”はオープンにしたわけだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>コンテンツ製作は2次収入も含めて収益性を見る</strong></span></p>
<p>そもそも私は、Netflixが視聴時間を「仲間たち」にも明かしてこなかったことが不思議だった。映画興行で言うと日本の場合、劇場収入だけではなかなかリクープできない。2次収入が入ってやっとトントン、うまくいけば利益が出るというスレスレのビジネスが映画製作だ。<br />もちろん劇場で大ヒットすればそれだけでリクープし、2次収入はまるまる利益になる作品もある。だがそんな幸運は稀で、多くの映画はカツカツで製作している。<br />ひと昔前は2次収入のメインはDVDだった。製作委員会にはビデオメーカーも参加し、この企画ならどれくらいDVD販売が見込めると試算してくれ、中にはMG(ミニマムギャランティ・最低限の支払金額)を切ってくれたりしていた。<br />ところが配信の時代になり、2次収入があてにしづらくなってきた。もちろんDVD同様、視聴時間に応じて収益を配分してくれる事業者もいるが、Netflixは視聴時間を公表しないしそれに応じた配分も基本的になしだ。<br />一方で、Netflixオリジナル作品を制作すると日本の水準とは比べ物にならない制作費をきちんと出してくれて最初はみんな喜んだ。なにしろ日本の業界は「やりがい搾取」で回っている。低い費用で最上級の仕事をしていた。だがNetflixはやった仕事に応じてきちんと費用を出してくれる。エビデンスがすべてに必要になるが、書類が整っていれば制作費がちゃんと出る。そんなことで喜んでいいのか、とも思うが、日本の業界では喜ばしいことだった。<br />だが、世界中でとてつもなくヒットしても、「よかったね」と言ってくれるだけで、それに伴う収入はもらえない。そういう契約になっているのだ。<br />それはハリウッドも同じ。だから役者や脚本家の組合は団結してストライキをした。このままじゃ儲からないから、短期的には損をしても、トム・クルーズから無名の俳優までストに従った。権利はこうやって獲得するものだと言う手本を見せてくれた。<br />こうしてハリウッドの連中が頑張ってくれたおかげで、日本でも数字を見ることができるようになった。素晴らしい!</p>
<p>Netflixの情報公開ページを見ながらふと気になった。たとえば日本のマンガ「ワンピース」の実写化ドラマの制作費は1話10億円とか20億円とか、とんでもない金額が伝わってくる。日本だと映画1本の制作費に10億円かける時は清水の舞台から飛び降りるような気持ちになるだろう。東宝が「ゴジラ」を撮る時ぐらいで、それでも20億円はおそらくかけていない。Netflixは1話あたりがそれくらいで、シリーズ総額だと100億円とか200億円とか目が飛び出るような数字が出てくる。<br />なぜここまでNetflixは制作費をかけられるのか、せっかく情報が公開されたのだから、試算をしてみようと考えた。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>コンテンツ提供者にいくら戻れば妥当かを試算</strong></span></p>
<p>まず基本情報を整理するが、こっそり語る話なのでここからは購読者限定にしよう。</p>2024-02-20T00:10:06+00:00NHKテキストニュース縮小は、情報の多元性の縮小でもある
2024-02-19T05:02:16+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28394/<p><a href="https://mediasuidan9.peatix.com/view" rel=" nofollow"><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/d398b211138f44d9b6e9bddccac29061.jpg" /></a></p>
<p><a href="https://mediasuidan9.peatix.com/view" rel=" nofollow">2月29日に配信イベント「新メディア酔談」</a>を、いつものスローニュース熊田安伸氏をパートナーに、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏をゲストに迎えて開催する。テーマは「NHKテキストニュース縮小問題」だ。なぜこのテーマにこだわるか、この記事で説明したい。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>「公共メディア」を宣言しネットで情報拡充</strong></span></p>
<p>NHKは2015年度〜2017年度の経営計画の中で「公共メディア」という言葉を使ってこう宣言している。</p>
<p><img src="https://assets.st-note.com/img/1707784565835-oH6Xae3ujU.png" alt="" width="620" height="172" /> <a href="https://www.nhk.or.jp/info/about/corporate_history/assets/pdf/2015/corporate_2015-2017.pdf" target="_blank" rel="noopener nofollow">2015年度〜2017年度中期経営計画 P7より</a></p>
<p>「公共放送から、放送と通信の融合時代にふさわしい”公共メディア”への進化を見据えて、挑戦と改革を続けます。」とある。放送通信融合時代にふさわしく「公共放送」から「公共メディアへの進化」と言っている。これからネットに力を入れていきますと明確に言っているのだ。<br />宣言に沿ってNHKはNEWS WEBに力を入れただけでなく、「政治マガジン」などスペシャルコンテンツも増やしていった。私が個人的に好きなのが「NHK取材ノート」。</p>
<p><a href="https://note.com/nhk_syuzai/" rel=" nofollow"><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/6b0b786db6554cd0a17a10a2ef639c57.jpg" /></a></p>
<p>記者たちの個人的な思いが語られる場で、ニュース番組からは見えない「ひとりの記者」の像が見えるのがいい。今後のNHKにはこうした「視聴者と同じ目線と立場」が必要で、「公共メディア」には「共」の姿勢が大事だとの理念が垣間見えた。<br />メディア研究者の視点で見ても、メディアが設備を持つ強い立場として上から伝えるのではなく、受け手と対等な立場で伝えることが「公共メディア」には欠かせないと考える。今後、放送で受信料が取りにくくなると想像すると、ネットでもなんらかの料金を得るためにも必要な姿勢だと見ていた。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>23年の新体制以降、一転した「公共メディア」の姿勢</strong></span></p>
<p>2015年度の経営計画は、何かと評判の悪かった籾井勝人氏が会長だった頃に出ている。その後、上田良一氏、前田晃伸氏と3年ごとに会長が交替して、様々な出来事もあったが、「公共メディアへ」の姿勢は揺らぐことはなかった。<br />その間にNHKは同時配信をアプリ「NHKプラス」を通じて提供するようになった。「公共メディアへ」の歩みは着々と進んでいるように思えた。<br />雲行きが変わってきたのは、2023年1月に稲葉延雄氏が会長に就任してからだ。そもそも稲葉会長就任時にいざこざが伝わってきていた。前田会長が推していた候補の名前が挙がると、急に発表当日に稲葉氏の名前が出てきた。この時、実際に何があったかはわからないが、稲葉会長体制が4月以降スタートすると「公共メディアへ」の姿勢が心もとなくなってきた。<br />ちょうど、総務省による有識者会議「公共放送ワーキンググループ」が22年から続いていたが、23年5月26日の会議で、4月にNHK副会長に就任したばかりの井上樹彦氏が「NHKのインターネット活用業務について」をプレゼンした。その内容は「放送と同一の情報内容」や「放送と同様の効用」といった言葉が多用され、ネットで提供する情報は放送と同じ内容に限定すると受け止められるものだった。<br />「公共放送から公共メディアへ」の理念を素直に受け止めると、放送はメディアの一つであり、ネットも含めて全体として公共メディアを形成する、と解釈したくなる。実際、これまでのNHKのネット展開は「NHKプラス」のようにまさに「放送と同一」のものもあれば、NEWS WEBをはじめとするネットニュースは「同一」ではなかった。そういう方向に進むものと受け止めていた。<br />井上副会長のプレゼンは、こうしたこれまでの方向性を大きく変えると宣言したと言っていい。公共放送WGは揺れた。有識者たちはNHKがネット展開に意欲がある前提で会議を進めてきたのに、井上副会長の姿勢はそれに逆行していたからだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>新聞業界の大攻勢と、NHK上層部との結託(?)</strong></span></p>
<p>8月に入ると、今度は日本新聞協会がNHKのテキストニュース縮小を主張してきた。それまでも、民放連とともにNHKのネット展開に反対してきた新聞協会だが、その勢いが増した。地方紙がやっとネット展開を始めたばかりで収益がおぼつかない中で、NHKのテキストニュースは「民業圧迫」になるとの論を強く唱え、公共放送WGでの発言も力強くなり、会議運営側も協会に配慮しているように見えた。自民党議員に訴えて回ったとの噂も出てきて、業界全体として大キャンペーンを展開しているようだった。<br />非常に奇妙なのが、NHKとは対立するはずなのにむしろ結託しているように見えたことだ。会議の場でも、NHKの出席者は反論せず、協会の主張を受け入れている様子だった。<br />それは当然で、協会の主張は先の井上副会長のプレゼンと対立しておらず、むしろ方向性は同じなのだ。協会としては会議のメインテーマである、NHKのネット業務の必須業務化そのものに反対しているわけだが、それは表向きで、テキストニュースを縮小する代わりに「NHKプラス」を必須業務化するのは認めてくれる。そんな内うちの合意ができていると言う人もいた。<br />結託が露骨だったのが、8月の会議のまとめの段階の出来事だった。8月29日の公共放送WGのまとめでは、NHKのテキストニュースについて以下に限定するとまとめられていた。</p>
<p><img src="https://assets.st-note.com/img/1707797497104-SnGPmKhsbB.jpg" alt="" width="620" height="75" /> <a href="https://www.soumu.go.jp/main_content/000897650.pdf" target="_blank" rel="noopener nofollow">公共放送ワーキンググループとりまとめ案(概要)8月29日版</a>P3</p>
<p>ところが8月31日に、公共放送WGの親会にあたる「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で「公共放送WGではこうまとまりました」と出てきた書類では同じ箇所がこう書き換えられていた。</p>
<p><img src="https://assets.st-note.com/img/1707797646653-KMmfeuW45X.jpg" alt="" width="620" height="66" /> <a href="https://www.soumu.go.jp/main_content/000898676.pdf" target="_blank" rel="noopener nofollow">公共放送ワーキンググループとりまとめ案(概要)8月31日版</a> P3</p>
<p>29日の会議の最後の方で新聞協会の出席者が「&quot;時間的制約のために載り切らなかった情報&quot;という曖昧な表現では際限なく載せられるではないか」と疑問を呈していたのは覚えている。だが会議は「そこはあとで議論しましょう」とさえならず終了したのだ。<br />ところが31日の親会に出てきた資料では、新聞協会がクレームをつけた箇所がきれいに削られている。後から聞いたところでは、29日の会議後に新聞協会とNHK、総務省が相談したと言う。<br />国の大事なことを議論する会議が、こんないい加減な、「声の大きな人の意見が通る」ようなことでいいのだろうか?民主主義を守る立場であるはずの公共放送と新聞社の代表たちが、物事をこそこそ決めるようなことをやって、管轄する立場の総務省も「はいはい」と書き換えてしまう。<br />この時の顛末に、最も私が「NHKテキストニュース縮小問題」にこだわるポイントがある。この国のジャーナリズムは、こんな人々の結託で成り立っているのだ。公の会議を、有識者も傍聴者も無視して、こんな談合まがいの進め方をしている連中が、企業や政治家がこっそり物事を決めることをとやかく言っている。あなたたちは、同じ穴の狢ではないか。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>正式決定はまだなのに、着々と進む「縮小」案</strong></span></p>
<p>このような顛末で、8月末に「テキストニュース縮小」は大筋が決まった。とはいえ、これはあくまで総務省が国会に出す案がまとまっただけで、今行われている国会で議論され、放送法改正が通り、それが実施されるのは2025年度になるだろう。<br />ところが、その後秋になって伝わってきたのは、すでに縮小案が出ていて、準備が始まっているとの噂だ。まだ決まったわけではない「縮小」がなぜ進むのか。しかも、NHKの様々なレイヤーの関係者が「こんな話が伝わってきた」と言っているものの、少しずつ情報が違っていたり、変わったりしている。公式な発表は内部でもないようなのだ。<br />いま私は実際に受信料を払っており、放送とは別にNHK NEWS WEBをはじめ様々なテキストニュースに触れることができる。それが具体的にどうなるかもわからない上に、とにかく「縮小する」ことが伝わってきている。「公共メディアへ」と謳っていて、だからネットでのテキストニュースにも力を入れていると受けとめてきた。それはいいことだし、当然の進化だからその方向で頑張ってほしいと思っていた。<br />それが「縮小」されるのは、到底納得できるものではない。業界の中には「確かに地方紙を圧迫してますよねえ」と言う人もいるが、それは業界内の論理でしかない。ネットでは地方紙も読めたほうがいいし、NHKのニュースも読めたほうがいい。どっちかが読めるからどっちかをやめよう、とはならない。それにどっちもまだまだ、日常的に接する環境を作れていない。Yahoo!などに載ったり、SNSで誰かにシェアされないと読まれない。ネットではちゃんとしたニュースの供給と適切な経路の整備が、全然足りていない。<br />新聞協会は「民業圧迫」とすぐ言うが、圧迫かどうかというほどどちらも直接読まれていない。今後、競争評価の仕組みも整えることになっていて議論が始まっている。それが具体化したら、既存メディアがネットで全然薄い存在だとやっとわかるだろう。特に若い世代は新聞もNHKニュースも、ほとんど接触してない。絶望的にニュースは危機に瀕しているのに、圧迫とかなんとか言ってコップの中で争っている場合ではない。<br />実際、能登半島地震で少し空気が変わったとも聞く。電波が届かず、通信が途切れ、電気さえ通じなくなる事態があちこちの地域で生じた。SNSではおかしなフェイク情報が錯綜し、どれが正しいかもよくわからない。明日が見えない人々に、どうやって真っ当な情報を届けるべきか、既存のメディアが力を合わせてどうしたらいいか考えて解決を議論する時なのだ。地震で「情報の多元性」を重視すべきと再認識されたと聞くが、だったらNHKも「放送と同一」にこだわらずテキストニュースでも何でも発信し、多元性に寄与すべきではないか。<br />「NHKテキストニュース縮小」というおかしな流れの問題を整理し、今後あるべきちゃんとした情報コミュニケーションはどうあるべきか、考えたい。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>3月29日「新メディア酔談」配信</strong></span></p>
<p>3月29日に「新メディア酔談」を配信するのは、そんな問題意識からだ。「酔談」はこれまで無料で配信してきたが、今回は今まで通りに無料で配信する前半部分と、あえて有料で配信する後半部分とに分ける。<br /><strong>●前半 オモテ面「なぜ縮小するのか?」</strong></p>
<p><iframe src="//www.youtube.com/embed/xDTJZMoRGrs" width="560" height="314" allowfullscreen="allowfullscreen"></iframe></p>
<p>上に書いたようなことを整理し、熊田氏にさらに情報を付け加えてもらい、また佐々木氏から解説や意見をもらう。<br /><strong>●後半 ウラ面「内なる声を聞く」</strong></p>
<p><a href="https://mediasuidan9.peatix.com/view" rel=" nofollow"><strong><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/26f0ab2d54504d1fa062f06deb1c27c5.jpg" /></strong><br /></a><span style="font-size: 12px;">申し込みは、画像をクリック↑</span></p>
<p>上のPeatixから申し込んでもらうことで前半後半フルで参加してもらえる。無料の前半部分が30分ほどで終了した後も、申し込んだチャンネルでそのまま後半に突入する。最初から申し込んでスムーズに後半に入ってもらうのが一番だが、前半に参加して後半も続けるかどうか決めてもらってもいい。申し込みは翌日まで受け付けるので、あとでアーカイブとして見てもらうことも可能だ。</p>
<p>少々ややこしいやり方となってしまったが、まずこの問題をできるだけ多くの方に共有したいのと同時に、ディープな話を少人数でじっくりしたいのもある。申し込み時に「内なる声」の記入欄もあるので、関係者の皆さんはぜひ「声」を聞かせてほしい。メールでも受け付けるので、できるだけ所属など関係者であることがわかる情報も添えて送っていただければと思う。</p>
<p><a href="mailto:sakai@oszero.jp" target="_blank" rel="noopener nofollow">sakai@oszero.jp</a></p>
<p> </p>2024-02-19T05:02:16+00:00勉強会「ミライテレビ推進会議」を再開します
2024-02-06T05:47:27+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28375/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/ce19601b02024545973a77d018f8d3f0.jpg" /></p>
<p>MediaBorder購読者だけが参加できる勉強会「ミライテレビ推進会議」を2月から再開します。2月26日(月)19時からです。開催は六本木ですが、東京在住ではない方も、リモートで参加いただけます。毎回、登壇者をお招きしてご講演いただき、その後は懇親会となります。コロナ禍でしばらくお休みしていましたが、今月から再開します。当面は2ヶ月に1度を目指します。今回の講演者と場所などは、購読者のみに共有します。放送業界のおじさんが中心なので、別業界の方、お若い方、大歓迎です。</p>2024-02-06T05:47:27+00:00能登半島地震、三が日のローカル局は地震報道をどれくらい伝えたか
2024-02-05T00:53:37+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28372/<p>能登半島地震からもう1ヶ月が過ぎてしまった。いまだに多くの人々が避難生活を続けており、被害の全容はまだまだ明らかとはいえない。<br />今回の地震ではメディアの役割と貢献について考えさせられた。中継所の電源切れで地上波放送の電波が長らく届かなかった地域もあり、地形によってテレビが影響を大きく受けることもあると思い知らされた。<br />さて私は、元日を中心にテレビが地震をどう伝えたかを東洋経済オンラインで記事にした。</p>
<p style="list-style-type: none;"><span style="font-size: 18px;"><a href="https://toyokeizai.net/articles/-/728104">「能登地震」を元日のテレビはどう放送したか</a></span></p>
<p id="692a77c8-c1ef-4d91-93bb-b25df39a0fd5">関東・関西・中京地区の地上波テレビ各局が何時から何時まで地震報道を行ったか、エム・データのメタデータをもとにまとめたものだ。<br />16時10分前後からNHKに続いて民放各局が正月番組の途中から地震報道に切り替えた。テレビ東京も約10分後には地震報道に切り替え、全局が地震を伝えた。<br />ただ詳細はなかなかわからず、NHKでは金沢局からアナウンサーが強く避難を呼びかけた一方で、地震の様子としては定点カメラからの映像が続いた。<br />テレビ東京は18時40分から、日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビは21時ごろから正月特番に戻った中、TBSだけは夜遅くまで地震報道を続けた。NHKとは別に民放が1局地震を伝え続けたのは頼もしかった。<br />一方、早々と「充電させてもらえませんか?」に戻ったテレビ東京、21時からそれぞれの正月番組に戻った他局についても、関東の視聴者としては情報がなく不安ばかりが募る中、ホッとさせてもらえた。<br />さらに知りたくなるのが、地震の被災地である北陸ではどう地震を報道したかだ。富山テレビには直接存じ上げてる方がいたので問い合わせ、この記事にも載せた。並行して石川・富山・新潟の3県の各局にはWEBのお問い合わせ窓口に質問を出し、回答をお願いしたがなかなか返事をもらえなかった。まだまだ余震も何度も起こり、能登半島が陸の孤島になって取材もままならない中でこんな悠長な問い合わせに回答する余裕がないのは当然と受け止めた。そんな中1局だけ記事を読んで連絡をもらえたのはとてもありがたかった。<br />1月最終週にもう一度WEBから問い合わせを送り、代表電話にかけたり、一度だけお会いした方を思い出してメールを出したりして多くの局から情報を得ることができた。東洋経済に続きとして記事を載せたいところだが、まだ待っている局もある。文章でいただいた情報を表にしており、確認のためにもまずMediaBorderで購読者限定の形で読んでもらうことにした。同時に、各局のみなさんにも確認してもらう。ということで、ここから先は有料購読者限定にさせてもらう。</p>
<p id="f37231ba-cbf0-41d5-b0ae-77c0b72bfb06" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>情報入手困難な中、様々にローカル発で報道した元日</strong></span></p>
<p id="783a4e03-9ef0-461d-a6ce-108f327bc33b">まず各局の元日の地震報道の様子を表にしたので見てもらおう。</p>2024-02-05T00:53:37+00:00X(Twitter)は告発と攻撃の場になってしまった(最初はおだやか空間だったのに)
2024-02-01T01:38:58+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28366/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/1d7a644fd6f347dbb28fa559aecc5cff.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※画像は「スマートフォンの中でたくさんの人たちが激しく口げんかしている 」と入力して生成されたもの</span></p>
<p id="bc17ef28-ac72-46f3-8399-b5b2d7402a4a" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>芦原さんの死で、逆に増える脚本家への攻撃</strong></span></p>
<p id="61f4a7d8-3044-4701-b61b-d1ccd250a76b">「セクシー田中さん」の原作漫画の作者、芦原妃名子さんが自殺したニュースには大きなショックを受けた。ドラマ放送時は毎回欠かさず見ていたのに。<br />だが私はここで「誰が悪いか」の追及はしたくない。ただ、今のテレビドラマ制作についてはかねがね問題があると感じていたので、これについては別途書こうと思う。<br />それより、今回の件ではっきりしたのが、SNSがすっかり殺伐とした場所になっていることだ。芦原さんの件で言うと、「脚本家が悪い」と攻撃する人があまりにも多い。だが芦原さんは、今回のプロセスを自分が書き綴ったことで彼女自身が攻撃されたわけではなく、脚本家への攻撃が殺到したことを気に病んだようだ。それは最後の投稿にこう書かれていることから推測できる。</p>
<figure id="e4eae382-f92f-43f2-8f42-5eba14126724" data-src="https://twitter.com/ashihara_hina/status/1751457987397652676" data-identifier="null">
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<p id="57912ec7-95a4-4d47-b293-01cd283672a6">だが驚いたのは、彼女の自殺が伝わると、脚本家への攻撃のボルテージがますます高まったことだ。どう見ても、自分の投稿がもとで脚本家が攻撃されたことを憂いていたのに、攻撃がさらに高まるのはどういうことかと思う。<br />ここで私が言いたいのは、このままではX(Twitter)がコミュニケーションの場として終わってしまいかねないことだ。痛切に感じているのが、いつのまにかXは誰かの悪事を暴露したり、それをもとに一斉に攻撃する場になってしまったこと。芦原さんの件でも「脚本家を責めるのは芦原さんの意志ではないはず」という投稿に「原因を作ったのは脚本家だ!」と噛み合わない議論を吹きかける人がいた。あいつが悪いのだから攻撃して何が悪いのだ、という姿勢。<br />と思っていたら、こんな記事があった。</p>
<figure id="80a6ee35-d21b-44a0-8abc-d645fbdbee08" data-src="https://kai-you.net/article/88756" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://kai-you.net/article/88756" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">粗探しする人が増加、2023年の炎上実態調査</a></span></div>
</div>
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</figure>
<p id="b46e43ed-1383-479b-888b-af6eb0ce7760">何かを批判したい人がX上で増え、何か言ってやろうとウズウズしながら投稿を見ているのだろう。</p>
<p id="14d8caad-3008-4fd8-b235-044691a01e7e" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>X(Twitter)とはネットの声でありバズを生む場だった</strong></span></p>
<p id="d33aeff3-9bb3-4ea7-a6fb-8b6a886da0f8">Xとは悪人を見つけて攻撃するための場であることが、すっかり共通認識になってしまったように思える。みなさん、そういう前提でXを使い、悪人が見つかったらそれ行けと集中砲火を浴びせる。それがXなのだと、みなさんが捉えているのではないか。<br />そのせいか、誰かを告発する投稿も増えた気がする。もちろん、長い間我慢し黙っていたことを告発することはいけないことでは決してない。黙っているより発した方がいい。ただ、いまあまりにも告発が多いのだ。そして告発を見つけたらすごい勢いで大勢の人たちが飛んできて告発された人物を罵倒し始める。</p>
<figure id="7390796b-4b0c-4025-aa5e-806f2e9bdf96"><a href="https://assets.st-note.com/img/1706704942305-Fckzffylav.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1706704942305-Fckzffylav.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="349" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="74003f45-d452-4aa0-afb8-e1b1331245de">Xで何かを言うのがものすごく怖くなってきた。<br />さらに、トレンドワードに乗っかっただけの意図不明な投稿が増えた。イーロン・マスクの方針変更の一つに、プレミアムアカウントを取得するとビュー数に応じた支払いを受け取るシステムがある。これを利用し、とにかく何がなんでもビュー数を獲得するために、何種類ものトレンドワードを貼りまくって奇妙な画像をくっつけた投稿が多いのだ。<br />X(Twitter)とはイコール、ネットの声だった。スポーツ紙の記事でよく「ネットではこんな声が上がった」と紹介されるのは、Xの投稿のことだ。SNSはいろいろあるが、オープンな発言が中心なのは今もXなのだから。<br />また「バズる」のも要するにX上で何度もリポストされることであり、他のSNSはバズを生まない。<br />つまりネットとはXのことであり、SNSの中心はXなのだ。比喩的に言うとインターネットの血流のようなもの。Xがなければネット上のどこに何があるかが伝わらなくなる、拡散されなくなるだろう。血がドス黒くなり、あちこちで固まって動脈硬化を起こしかけている。<br />X(Twitter)の終わりが近いのだと思う。今後、ぐんぐんユーザー数が減っていき、攻撃したい人たちだけが残るのではないか。それでも私は、自分の活動の告知に使い続けるだろうが、もうこれまでほど反応を期待できない。それより怖いのは、ちょっとしたことで攻撃者たちが殺到してなぜか炎上してしまうことだ。</p>
<p id="4bfc4bed-d66f-4465-baf6-b90a92dad03b" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>見知らぬ人々と出会える穏やかな空間だった</strong></span></p>
<p id="162aabf1-3da3-44d1-a9a9-03e11b709657">私は映像制作会社ロボット(「ゴジラ-1.0」もこの会社制作!)で経営企画室長をやっていて、2008年ごろからブログを書いていた。友人に「とにかくやりなさい」とTwitter(当時)を勧められたが、最初は何がなんだかわからなかった。<br />ブログは本名を隠して「我々プロダクションやデザイン会社はネットの時代になるとテレビ局や代理店に頼れなくなるぞ」と、業界環境を見て警鐘を鳴らすような内容だった。仲間内で1日50人くらいが読んでくれるブログだった。<br />ある日確認したらPV数が2000以上になっていた。どういうことだ?</p>2024-02-01T01:38:58+00:00日本のコンテンツは韓国と肩を組んで世界を目指せ
2024-01-26T00:39:45+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28337/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/7f3eb43c4f57401d9ab94c6b439d3c4c.jpg" /></p>
<p id="b2cabf85-f9b8-43f9-9cfa-3fcdb13337f5" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>YOASOBI&K-POPのコラボとゴジラのアメリカヒット</strong></span></p>
<p id="94c78196-700f-455b-b1f5-2e4f46888a08">昨年大晦日の「紅白歌合戦」は旧ジャニーズ事務所の出演はなく、盛り下がるのだろうとぼーっと見ていたら、だんだん惹き込まれていった。そしてクライマックスのYOASOBIとグループアイドルたちのコラボに目を奪われた。この辺りの印象は年明けに東洋経済オンラインで書いている。</p>
<p style="list-style-type: none;"><span style="font-size: 18px;"><a href="https://toyokeizai.net/articles/-/726415">「紅白歌合戦」最低視聴率でも評価悪くないワケ(東洋経済オンライン:24年1月12日)</a></span></p>
<p id="adfbcb5c-9f5a-431c-91e6-f616b2b16fac">グループアイドルの中には日本のグループもいたが、韓国のグループが中心だった。そのことも含めてこのコラボを評価する声が多かったと思う。<br />それにしても、YOASOBIと韓国アイドルたちが共演するのはどういうことか。何か意味深いものを感じていたら、こんなNHKスペシャルが年明けに放送された。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/WVN29JV3N4/">NHKスペシャル「世界に響く歌 日韓POPS新時代」番組ページ(24年1月7日放送)</a></span></p>
<p>NewJeansなど新進K-POPグループたちがBTSなどに続いてアメリカで評価される中、昨年YOASOBIも「アイドル」がアメリカでヒットし、フェスにも出演して観客たちをエキサイトさせたことをレポートしていた。なるほど、こういう流れの中で、紅白のコラボがあったわけだ。<br />アメリカのフェスも、アジアのミュージシャンたちを集めたものであり、それらのファンがいま形成されつつあるようなのだ。もちろんアジアから移民してきて暮らす「同胞」が核のようだが、白人も黒人もいる。黒人観客がアジアの音楽に乗って踊ってる様子を見るのは、なんだか嬉しい気分になる。<br />またYOASOBIの「アイドル」はアニメ作品「【推しの子】」のテーマソングであり、この作品がアメリカでも人気となり、同時に曲もヒットした。<br />日本のアニメと音楽、そしてK-POPと、アジアのカルチャーが欧米で親しまれる土壌が今できつつある。市場と言えるものができつつあることが、これまでと違うようだ。<br />そしてまた、「ゴジラ-1.0」と「君たちはなぜ生きるのか」の2つの映画がアメリカでヒットした。</p>
<p>後者はゴールデングローブ賞を受賞した一方で、前者の監督・山崎貴氏はアメリカに呼ばれプロデューサーたちと話しているという。</p>
<p>日本のコンテンツ産業に今、何かが起ころうとしている。ひと頃は日本のコンテンツは国内しか見ていなかったからダメだと言われていたし、それは正しい一方で、「ゴジラ-1.0」も「君たちはなぜ生きるのか」もまず国内市場向けに製作され公開された。「ゴジラ」の方はアメリカ市場で公開する意図が最初からあったようだが、中身はコテコテの大和魂と和の力の物語だ。アメリカに無理に合わせた内容では決してない。</p>
<p id="45d262b6-2be0-42e3-99ea-af6b7981862b" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>韓国のコンテンツ振興院は若い世代をサポートする</strong></span></p>
<p id="63bc8dba-f455-442c-82ef-ed83e0ddb089">日本のコンテンツビジネスの潮目が変わりつつあるかもしれない。そしてYOASOBIとK-POPアイドルのコラボが示唆するのは、日韓の協力関係だ。先を行き過ぎた韓国にはかなわないと思われがちだが、韓国も日本と力を合わせたいと考えているように見える。<br />たまたまなのだが、以前インタビューした黄仙惠氏と年末に久しぶりにお会いした。前の記事でも黄氏は日韓の協調をメッセージしていたし、年末に久しぶりに聞いたお話もそんな内容が中心になった。その直後に私は紅白とNスペで日韓協調の最前線を目の当たりにしたわけだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/24010/">日本のコンテンツ産業はジャンプする時!〜韓国と日本を結んできた、黄仙惠氏に聞いてみた</a></span></p>
<p id="c29ecf07-21e7-4f8f-b07e-c79839fe075c">年末の訪問はインタビューのつもりではなかったのだが、記事にする可能性を思って録音してあったので、黄氏の言葉で本記事の後半を構成しよう。(以下、太字が黄氏の発言)<br />2018年4月から2020年12月まで韓国コンテンツ振興院の日本センター長を務めた黄氏(現在は城西国際大学准教授)に、振興院の役割についてあらためてお聞きしたかったのが、この訪問の目的だった。<br /><strong>「韓国のコンテンツ振興院の目的のひとつは、育成です。例えばドラマ制作のスタートアップを若者たちが設立したら、オフィスをバックアップしたり海外でのプレゼン機会を与えたり、チューターをつけて内容や収益ビジネスについて教えたりします。ずっとではなく、申請を受けて審査したのち大体1年間です。」</strong><br />”ドラマ制作のスタートアップ”という言葉がまず新鮮に感じた。日本では既存の制作会社や放送局などで制作の経験を積んで実績ができたら独立したり会社を起業したりするので、”若者のスタートアップ”の概念は映像制作業界にはないように思う。<br />黄氏もそこには大きな違いを感じているようだ。<br /><strong>「日本にもVIPOやBEAJなど、コンテンツの海外展開を支援する団体はあります。でも補助金を出す相手はテレビ局やケーブルテレビ局、大手の芸能マネジメント会社など大企業も含まれていますね。この会社は立派で安心だから補助金を出そうという発想。大企業なのにどうして補助金がいるの?と思ってしまいます」</strong><br />耳に痛い話だが、言う通りだと思った。例えば地上波ローカル局だって実は自己資本比率は異様なほど高く、いま厳しい環境とは言え明日潰れるほどではない。自ら投資する発想がないから補助金に頼ってしまうのではないか。<br /><strong>「コンテンツ振興院には投資および支援する価値があるかを見極める力が必要になります。たった3人の制作会社だけど投資効果があると判断したり、映画やドラマの監督、プロデューサーたちなど専門家にも判断してもらう。ただし審査する人は審査対象と取引してはいけません。公正、公平を保ちながら、ウェルメイドの作品が作り出せるようにサポートすることが大事です。」</strong><br />日本の補助金審査ではスタートアップは評価されず、立派な企業が選ばれ大手代理店が実際を仕切ってしまう。そこから本当に新しいビジネスは生まれるだろうか。<br /><strong>「韓国の若者は仲間と一緒に企画して補助金をもらい、そのIPを拡大しつつ5年間スタートアップをやってみる。失敗したらその5年間のキャリアがあるので民間企業に入ればいい、という考え方をします。」</strong><br />韓国のコンテンツ業界には、ベンチャー精神を認める文化があるのだ。<br />もう一つ、韓国コンテンツ振興院はドラマやゲームが中心で、映画業界には映画振興委員会があるそうだ。文化体育観光部(韓国の”部”は日本の”庁”にあたる)の実行部隊としてコンテンツ振興院、映画振興委員会、そして著作権委員会の3つがある。ドラマ(シリーズも含む)はコンテンツ振興院の担当だから映画とドラマは分かれているのだ。<br />韓国では映画館の入場料の3%が支援金に回され、それを映画振興委員会が若い制作者に投資する。<br />分かれていた業界はコロナ禍により線引きがなくなった。「イカゲーム」のように映画会社が制作したドラマがヒットした。「ナルコの神」(Netflix配信作で個人的にすごく好きなドラマ)もそうだったという。<br /><strong>「放送用のドラマは編成上の都合で本数が決まります。でもOTT向けのドラマは何話でもいい。そして映画だから作れたアクションなどの表現力をドラマに生かし、クオリティが上がりました。」</strong><br />それまでの映画とドラマの棲み分けがなくなることで世界で認められるドラマが制作でき、危機がチャンスを作った。VR制作も進化し、「ヴィンセンツォ」はイタリアを舞台にしたドラマだがイタリアに全く行っていない。<br />「イカゲーム」などで韓国ドラマが世界中でヒットするようになったのは、韓国のコンテンツ産業政策の積み重ねがあった上で、コロナ禍がもたらしたチャンスがあった。</p>
<figure id="bb3bcbb0-fc8e-4bdf-b3f9-dc0ea4f9bb55"><a href="https://www.amazon.co.jp/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E6%88%A6%E7%95%A5-%E9%9F%93%E6%B5%81%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%BBK-POP%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E5%9C%B0%E5%9B%B3-%E6%98%9F%E6%B5%B7%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%BB%84-%E4%BB%99%E6%83%A0/dp/4065309492" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: 279px; width: 372px;" src="https://assets.st-note.com/img/1705650179988-VmUyVvOTPV.jpg?width=800" alt="" width="620" height="465" /></a>
<figcaption><a href="https://www.amazon.co.jp/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%84%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E6%88%A6%E7%95%A5-%E9%9F%93%E6%B5%81%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%BBK-POP%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E5%9C%B0%E5%9B%B3-%E6%98%9F%E6%B5%B7%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%BB%84-%E4%BB%99%E6%83%A0/dp/4065309492" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><br />黄氏の近著「韓国コンテンツのグローバル戦略」</a></figcaption>
</figure>
<p tabindex="-1"> </p>
<p id="068b24ad-61fe-421f-907f-f432ce2baecf" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>日本コンテンツの成功は韓国とのwin-winな関係が鍵</strong></span></p>
<p id="127f1b8e-be4b-4cd3-80f4-850dee608094">黄氏が振興院の日本センター長に就任した当時から、ミッションは日韓協調にあった。<br /><strong>「韓国のコンテンツビジネスは長らくその半分を日本市場に頼ってきました。でも私がセンター長の頃はすでに韓国コンテンツを日本で無理に広げる時代ではなくなり、一緒にできる形をどう作るか、win-winの関係づくりが目標でした。」</strong><br />共に成長するためには、日本の業界で変わった方がいい点がいくつかあると言う。</p>
<figure id="97c146e1-d34c-4f9e-9881-6ead2b41dd3a"><a href="https://assets.st-note.com/img/1706156776054-YWKkMTWXAW.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1706156776054-YWKkMTWXAW.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="407" data-modal="true" /></a>
<figcaption>いつもにこやかに話す黄氏</figcaption>
</figure>2024-01-26T00:39:45+00:00テレビ局ど真ん中の視点で、リアルに語る再編論
2024-01-24T01:20:57+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28334/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/536300f3793d4dd3a8679f1bc87faea1.jpg" /></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>内側から書かれた初めての具体的な再編論</strong></span></p>
<p>2024年は年明けからメディアを揺るがす事件が次々起こった。これは激動の年になるぞ。そう思っていたら、まさにその激動を象徴するような本が出版された。『テレビ局再編』という&quot;どストレート&quot;なタイトルで迫る本の著者は根岸豊明氏。「日本テレビにて編成、報道、メディア戦略に従事。同社取締役執行役員、札幌テレビ社長を歴任。」と著者プロフィールにある。<br />「ど真ん中の人じゃないか。」それを見て私はつぶやいた。これは珍しいなと興味を持った。<br />というのは、テレビ業界は市場として行き詰まり、ローカル局からじわじわ危機に陥っているのだから再編が必要ではないか、という正論はもっぱら学者や研究者、そして私のようにコンサルタントなる怪しい肩書きの人々が、外からやや無責任に語るものだったからだ。だがこの国のどの業界もそうであるように、外から見ればあれとこれをこうすればいいとわかっていることでも、内側にいるとそんなことをしたらあれがこうなってたいへんなことになる、と外側からはまったくわからない内輪の事情を持ち出されて議論が続かないものだった。<br />そして内側にいる人々は外から見ると過剰に「再編を語る」ことをタブー視し、腫れ物に触るように扱いかねて結局触らないのが当たり前だった。<br />2021年から総務省で「デジタル時代における放送制度のあり方に関する検討会」という有識者会議が始まって、ようやく”触れてもいいのかな?”という空気ができてはいた。だがやはり学者が再編論を書いたとしても、それを機に議論が起こったりしなかった。<br />そこにこの、ど真ん中にいた人が書いた「再編」本が登場したのだ。いったいどんなことが書かれているのか。さっそく手にしてみた。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>なかなかたどり着かない「再編」の中身</strong></span></p>
<p>手にとってまず目次を見ると、あれ?と腰を折られた。</p>
<p><a href="https://assets.st-note.com/img/1705987997020-N4SMiOeB0N.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" rel=" nofollow"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1705987997020-N4SMiOeB0N.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="465" /></a></p>
<p>「序章:テレビは若者に支持されているか」にはじまり、前半では80年代からのテレビ史を振り返っている。あれ?再編の話は?</p>
<p><a href="https://assets.st-note.com/img/1705988105785-aPAr7YTGhc.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" rel=" nofollow"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1705988105785-aPAr7YTGhc.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="465" /></a></p>
<p>第7章になってようやく「テレビ局再編を考えるヒント」と”再編”の言葉が出てくる。でもヒントだけ。そのあと1章挟んでやっと第9章が再編の中身らしい。</p>
<p>どうなんだこの本は?本当に再編について書いてあるのか?訝りながら読み進むと、なぜ再編をテーマにした本がテレビ史から入るのかがわかってくる。<br />そもそも、80年代以降のテレビを、どんな番組が制作されてきたかではなく、メディアとしてのテレビの視点で振り返った本はなかったように思う。テレビビジネスはテレビ局がぽんとできれば視聴者がついて成立するものではなく、社会や経済、制度の中でやってきたものだ。過去にはニューメディアの言葉が飛び交い、衛星多チャンネル放送が黒船のようにやってきたように見えてさほどでもなくなり、BS民放が誕生して「ローカル局炭焼き小屋論」なんてことも大真面目に語られてそれもさほどでもなかった。<br />そこにインターネットが登場して竹中懇の議論が巻き起こった一方でライブドア騒動もあったり認定放送持株会社制度ができたり、けっこうすったもんだがいろいろあった。<br />iモードが成功してITバブルが巻き起こりテレビ局もいっちょカミしたけどいつのまにか崩れ去り、思い返すと懐かしく悲しいNOTTVなんてのも出てきてすぐ消え失せ、iPhoneの登場が全てを塗りつぶしていった。<br />テレビを取り巻くさまざまな栄枯盛衰と、それによってできた制度や習慣などが丁寧に語られる。<br />「再編論」を語る前に、これまでのテレビを取り巻く出来事を全ておさらいし、現在位置を確認する。そこを踏まえないと再編論を語れないし、炭焼き小屋論は過去のものになったけれども、それ以上の危機がテレビというシステム全体にやってきていることを確認しておこうね、ということだと思う。<br />というのは、再編論が必要なのは単にローカル局がやっていけなくなるから、ではなく、テレビがネットワークも含めたシステムでできていてそれが危ういからだ。再編論とはローカル局を救えという話が第一義的かもしれないけど、同時におれたちがこうしてなんとか守ってきたシステム全体をどうするんだという話だよと、そんな意図で前半のテレビ史が編まれているのだと思う。<br />そしてなにしろど真ん中にいた根岸氏だからこそ、私のような門外漢が知らない話がたくさん書かれている。とくにBS民放局が鳴り物入りでスタートし、最初は良かったがみるみるうちにピンチになり、ところが地デジ化で救われた話など、今読むと面白い。<br />さらに、2018年の安倍首相が引き起こした不思議な放送法改革論議。この件を、「中の人」が書いたのは初めてではないだろうか。<br />このように、しばらく再編の話にはならないのだが、前半でここがポイントかなと思った箇所がある。</p>
<blockquote>
<p>「テレビ局再編」をポジティブに考えてみたい。退くのではなく、進むための再編を考えたい。テレビだけの閉じた過当競争ではなく、テレビの外にいるメディアと伍するための再編。様々な要素に鑑みてテレビは次代の戦略を練らねばならない。そのためには先ず、「骨太で筋肉質」な体質になっていくべきなのだろう。(『テレビ再編論』P108)</p>
</blockquote>
<p>ここにこの本の企画意図、もっというと著者が込めた思いがあると感じた。ネットがやってきてもなお、根岸氏はテレビこそを信じているし、社会的必要性は続く。今後も社会に貢献し続けるための「強靱化」には、再編が必要なのだと言っている。決して、「いつか死ぬけど延命するため」ではなく、「テレビは終わらない」からこの&quot;再編本”を書いたのだと言っているのだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>ブロック統合と3局体制のまだら再編</strong></span></p>
<p>後半のクライマックスでようやく具体的な再編論が出てくる。<br />根岸氏の論の前に、私はもともと2択と考えていた。ブロック化かクロスネット化。あるエリアでの再編を考えた場合、一つは現状のネットワークの近隣局同士で1局になるやりかた。これはテレビ朝日が総務省の会議で提案し、可能になった。X県、Y県、Z県で別々に放送局を運営していたのを、X県に統一し、Y県、Z県にも同じ内容の番組を放送する。<br />もう一つは、あるエリアでA,B,C,Dの4局あったのを、そのうちのAとBがくっついてそれぞれのネットワークからクロスネット局になり、CとDがくっついてクロスネット局になる。<br />根岸氏の再編の具体もこの2種類に近いのだが、なるほどと感心してしまったのが私が言うクロスネット化の方だ。根岸氏は「1局2波」になると設定している。<br />実は私も、2つの局をいきなりクロスネット1局にできるものだろうかと考えていたので、現実的だなあと思った。第9章にはある県で生まれた「1局2波」局の誕生記念式典の様子までシミュレーション小説のように描かれている。短い描写だが妙に生々しい。<br />第9章では、村上春樹の小説をもじって「203Q」と、2030年代のいつの日かの設定で、再編が具体化することを想定している。先のようで10年後だ。けっこう近未来に、そんな式典が行われるのかもしれない。<br />根岸氏は再編は「まだら模様」に進む、と書いている。各エリアには、そのエリア独自の放送局の在り方があり、各局も独自の経緯で成立しやってきた。全国一律のやり方では進められないから「まだら模様」なのだろう。<br />それに続いて、キー局の再編も「204Q」には起こることを匂わせている。「3大メガネットワーク」になっているらしいが、どこが残るかは明確に書かれていない。20年前、2020年代がこんな状態だと誰も予測できなかっただろう。同様に、メディア業界、社会全体、経済全体、世界全体の予想を綿密にできない限り20年後の予測は無理なのだ。<br />それでも根岸氏が「204Q」にまで書き至っていることには、<br />重要な意味があるように思う。20年もすれば、もっと大きな再編が間違いなく起きるぞ、と伝えたいのではないか。</p>
<p>ずいぶんネタバレしてしまった気もするが、もちろん書籍『テレビ局再編』にはここに書いたことの何百倍も詰まっている。テレビ局を生きてきた人だからこそ書ける密度の高い経験と考察が、読み始めるとあなたの頭の中に押し寄せてくるだろう。2024年の最初の月に出版された意味も大きい。MediaBorder読者の皆さんには、読むことをお薦めしたい。</p>
<p><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4106110253" rel=" nofollow"><img style="margin: 0px; width: 140px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/dcf428da43824cea876493e08156cad0.jpg" />Amazon書籍ページ</a></p>
<p>●お知らせ<br />1月30日(火)のウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」は、言ってみればCMセールスの”再編論”です。今までの常識を横に置き、こんなやり方にも可能性があるのではないか。そんな議論にご一緒に参加してください。<br />お申し込みはこちら↓</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view" rel=" nofollow"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view" rel=" nofollow">https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view</a></p>
<p>※MediaBorder購読者は3,300円が2,500円になる割引があるので、以下のコードを申し込み時に入力してください。</p>2024-01-24T01:20:57+00:00日本のテレビCMは安売りしてきたのかもしれない
2024-01-16T06:29:59+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28312/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/c8ee93e1b302438c8214185050ef74a1.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※トップ画像はAdobeFireflyに「日本の広告費は安いことに気づきテレビ局の人々は困っている、という様子を画像にしてください」と入力して生成されたもの。いろいろアレだが</span></p>
<p id="907c13c7-ada2-4f88-843e-effe904c9735">今回の記事は<a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">1月30日(火)開催のウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」</a>に関連した内容だ。(最初の告知の後、登壇者に読売テレビ・林俊明氏が加わっている)</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p id="82ae86f6-f755-49c0-a7ee-595b34669c08" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>日本のテレビCMにはイノベーションがなかった</strong></span></p>
<figure id="95d16879-d060-4adf-88ad-c98f7e72d2c0"><a href="https://assets.st-note.com/img/1705378511366-BQaQHAaaxQ.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1705378511366-BQaQHAaaxQ.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="349" data-modal="true" /></a>
<figcaption>グラフ:電通が毎年発表する「日本の広告費」より筆者作成</figcaption>
</figure>
<p id="fc0562b0-b453-49ff-996c-4e6b57f3e549">上は、電通「日本の広告費」から1985年以降のテレビ広告費(地上波のみ)と新聞広告費、そしてインターネット広告費をグラフ化したもの。ここではテレビ広告費を中心に解説しよう。<br />戦後の広告費は長らく新聞広告費が一番大きかった。それがテレビ広告費に抜かれたのが1975年。ただ、抜き去って新聞広告費と差が広まったわけではなく、上のグラフの80年代の部分のように共に成長を続けた。<br />90年代に入りバブルが崩壊すると最近で言う「K字回復」つまり新聞広告は漸減していくがテレビ広告費は一旦落ちてまた上がっていった。<br />2000年代になると2兆円で高止まりしたが、2008~09年のリーマンショックでカクンと下がった。このまま下がり続けるのかと、業界は暗澹たる空気に覆われた。<br />ところが2010年代、テレビ広告費はむしろじわじわ上がっていた。新聞広告費はさらに下がっていったのに。<br />そして2020年代、コロナ禍で乱高下したのち、この先は転げ落ちるように下がっていくであろうことがはっきりしてきた。<br />このテレビ広告費の推移はまさに日本経済を映しているように思う。高度成長の余波で80年代までは勢いよく上がっていたのがバブル崩壊後も慣性が働き伸び続けた。2000年代に足踏みしリーマンショックで大きな痛手を受けるがその後も悪くはなってないように感じられる。それはいわゆる「茹でガエル」状態であり、テレビ広告費が10年代にじわじわ上がったのは新聞広告市場を吸収したからにすぎない。日本経済がデフレで物価が上がらないのでなんとなくやり過ごせたのと似ていると思う。<br />日本経済は00年代に天井に達したしその後はひたすら停滞した。その間にイノベーションを起こすべきだったのに茹でガエルで火傷をするほどではなかったのでそのままダラダラと過ごしてきた。結果、イノベーションを起こす本気を誰も出さないまま今に至り、ジェットコースターが登り切って落ちるような下がり方がはじまりつつある。<br />このグラフにある40年近くの間、テレビCMは「タイム枠」と「スポット枠」の2つの商品しかなかった。テレビ放送そのものは地デジ化を乗り越えたが、テレビビジネスそのものにはイノベーションが起こらなかった。<br />ぜひみなさんもう一度グラフを眺めて、自分の人生と重ね合わせて想いを馳せてもらいたい。何かを起こそうとした誰かが猛烈に否定されたことなんかもあったのではないだろうか。特に2000年以降の業界はイノベーションを封じる方向にしか力学が働かなかった。</p>
<p id="d45a75fd-e537-43a0-bb56-aab246dd165b" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>スポットセールスの仕組みにあるもったいなさ</strong></span></p>
<p id="867c810d-4544-489d-bbb9-927e13ee5e7a">いや、イノベーションはいくつも起こってきた。わかりやすいのがTVerであり、またTVerでさえつい最近まで「視聴率に影響する」と否定的なことを言う人もいた。だが、TVerを作っておいてよかった。テレビ局にとって伸びる要素はそこにしかない。<br />もう一つ、地上波放送そのものの価値を上げるイノベーションが今起こりつつある。今年最初の記事でも紹介した、日本テレビのARMプラットフォームだ。それに続いて、中京地区のメ〜テレがスイッチメディアとの提携を発表した。</p>
<figure id="85cf9b76-4e50-40f6-ad8f-4b6c0cefc280" data-src="https://www.switch-m.com/news/nagoyatv_tval" data-identifier="null">
<div data-name="embedContainer">
<div data-embed-service="external-article">
<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.switch-m.com/news/nagoyatv_tval" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">スイッチメディア、メ~テレと東海3県のテレビ視聴データで番組の価値を再定義して広告主に提案する共同営業を開始</a></span></div>
</div>
</div>
</figure>
<p id="180f861d-56dd-4ecb-926d-f8def90338d9">いずれも、テレビCMの売り方についてのイノベーションであり、スポットセールスの新しい手法と言っていいと思う。</p>
<p id="f4776f93-a6bb-4053-a800-ef76d75d9ca4">ではスポットセールスの何が課題だったのか?</p>
<p id="ec13dbb5-3dfd-48fa-9b1a-a9ca7e8e081d">ご存知の通り、スポットセールスとは、番組に紐づけずにCM枠を売る手法でGRP(Gross Rating Point)を指標にする。例えば我が社のCM枠を100GRP購入したいとの広告主の要望に対してテレビ局は視聴率8%の枠を5つと5%の枠を6つと3%の枠を10個用意して売る、と言う具合だ。8×5+5×6+3×10=100と売り枠を構成する。<br />テレビ局が視聴率を取るのに躍起になるのも当然だ。視聴率はそのまま金額なのだ。視聴率至上主義とよく揶揄されるが、この仕組みを知ると当然のことだとわかる。<br />ただ、この視聴率の中身は様々だった。近年言われるのが、そして実際その傾向があるのが、高い視聴率でも中身は高齢者がほとんどという実態。そして多くの企業はCMを高齢者に向けて見せる意義を感じない。だが何しろ、高齢者ほどテレビを見る時間が長いし日本は高齢化でさらにその割合が多い。<br />これらによりCMについて奇妙な価値ギャップが生まれていた。</p>
<figure id="af201409-a5f2-4d57-baae-b6775cbc6c7d"><a href="https://assets.st-note.com/img/1705381900668-7lD0WW3xom.jpg?width=2000&height=2000&fit=bounds&quality=85" aria-label="画像を拡大表示"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1705381900668-7lD0WW3xom.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="439" data-modal="true" /></a>
<figcaption></figcaption>
</figure>
<p id="5b5c012c-5a07-4dc4-8afb-6ec02876552c">左のCM枠は直前の番組が若い女性に人気で、F1(20-34歳女性)がたくさん見ているが、視聴率は低い。広告主がF1にCMを見てほしいとしたら、価格は視聴率で決まるので低く「お買い得枠」になる。<br />一方右のCM枠は視聴率は高いがF3(50歳以上女性)が非常に多くF1は少ない。でも視聴率が高いので、この枠の価格は高いことになってしまう。若い女性に商品を売りたい広告主には割高になる。<br />ただ、スポットの発注では結局細かな枠の指定は原則的にはできない。だからF1が多かろうが少なかろうが、視聴率ベースで取引されてきた。そこに受給関係のギャップが生じる。<br />このギャップは前々からあった。90年代後半に東阪名で個人視聴率が出るようになってから、扱い高が多く強気の広告主は「F1の含有率を多くしてほしい」と枠が指定できないはずなのにそうなるように工夫を求めてきた。<br />そして最近は広告主側も様々な視聴データを元にして自分達が届けたいターゲットにCMが届くように細かな発注をしてくるところも出てきた。さらに「アウトドア志向が高い」とか「世帯収入800万円以上」など、広告主は細かくターゲットを設定している。できるだけそれに近い買い方をしようとする広告主もいる。<br />いずれにしろ、テレビ局は例えばF1が欲しい広告主に先の例の左側の枠を安く売ってきたことになる気がする。またどんな人が見ているかとは別に視聴率だけで売るのは結局、「いい枠」も安く売ることになりかねない。スポットセールスは右肩上がりの時代にとにかく売りやすく買いやすい仕組みとして、双方にとって重宝された仕組みだが、00年代に本来は見直すべきだったのではないか。</p>
<p id="c8646223-bf70-41db-80c7-76bd365be880" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>SAS、そしてインプレッション取引の向こうに</strong></span></p>
<p id="5c0b6dc8-d428-4be7-9292-ff454ae03881">日本テレビが開発し、いまは30局以上が参加しているSAS(Smart Ad Sales)は上に述べたギャップを解消するべく考えられた仕組みだ。スポット枠を単体で買えるようにしたもので、売る側からすると価格を高く設定できるのは大きなメリットだ。買う側からすると、これまでなら安く買えていた買い得枠のメリットがなくなるかもしれない。<br />だがCM出稿の戦術によっては買う側にとってもメリットがある。スポットは全体で1000GRPとか3000GRPとか、大きな単位で買うことが多い。新製品が出た時に一気に認知を獲得するにはそれくらい必要だからだ。<br />だがベンチャー企業のように少ない費用で着実に効果を求めたい場合、特に最近よく目にするスマホでの検索やダウンロードを落とし所にする新サービスでは若者層に見てもらい即効果を出したいので、SASは有効と言えるだろう。<br />そしてSASの進化の先には、スポット枠の半分以上が指名買いになる、という姿が可能性としてはある。もし実現したら、テレビ局全体が上向きになるかもしれない。<br />一方、日本テレビはARMプラットフォームを発表し、24年度末に具現化する予定だ。こちらのミソはインプレッション取引。ネットの考え方に合わせられるし、TVerなどと統合させることも見えてくる。<br />ただし、このインプレッションを「個人全体」のものにすると、数値を置き換えただけになってしまう。その辺りをどう考えているのかは、いずれ取材したいと考えている。<br /><br />1月30日のウェビナーではインプレッション取引だけでなく、先述のギャップを埋める考え方を楳田氏が提案してくれる。キーワードは「ターゲットCPM」の考え方だ。これについては、ぜひ当日聴講して一緒に考えてもらいたい。MediaBorderとしてもさらに解説する記事をまた掲載したいと思う。</p>
<p id="50cc88dc-93b0-498e-81bc-96afaf7ea8e4"><strong>●申し込みはこちら</strong></p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view">1月30日ウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」</a></p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p id="8cf3394f-9e6e-4039-98a8-38735ca934b4">※MediaBorder購読者は例によって割引があるので、以下のコードを申し込み時に入力してください。</p>2024-01-16T06:29:59+00:00動画配信サービスは役立たずのレコメンより情報を充実させてくれ(ユーザーの生の感想も)
2024-01-11T01:57:54+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28304/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/20a37059f19a470185774dcda822d721.jpg" /></p>
<h3 id="8fe0abd0-aa35-4951-b946-4f9cac1dca1a" tabindex="-1">パナソニックのテレビがFireTVベースに!</h3>
<p id="d9d2b91d-893c-40a3-865c-4dd69793769a">昨日、私のFacebookのタイムラインを一番賑わせたのはこの記事だった。</p>
<figure id="a06cf1c5-f336-456b-a1ff-74502006b014" data-src="https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF274AY0X21C23A2000000/" data-identifier="null">
<div data-name="embedContainer">
<div data-embed-service="external-article">
<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF274AY0X21C23A2000000/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">パナソニックHD、アマゾンとテレビ開発 視聴者ごとに映像提案 - 日本経済新聞</a></span></div>
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<p> </p>
<p id="b6c417c7-b7be-4a8e-a2fa-227e5363ebea">パナソニックがスマートTVの中身をFireTVベースにするという内容だ。確かにびっくりする。<br />私は長らくテレビにFireTVを挿して使っていた。正直言ってFireTVのUIは嫌いだった。データをもとにAI任せで作ったようなUIだと感じていた。AIが「こんなとこでしょ、人間には便利でしょ」と作ってるように思っていた。整理されてるようでどこかぞんざいで使いにくい。<br />3年前にスマートTVに買い替えようと選んだのがパナソニックのテレビだった。これまではVODを見るときはリモコンをFireTVのものに持ち替えて使っていたのが、テレビのリモコンだけで放送もVODも操作できるようになり格段に便利になった。<br />パナソニックのテレビがFireTVベースになるということは、前に戻る感覚になりそうだ。別に今のテレビがFireTVを実装することはないだろうから気にしなくていいのだろうけど、次に買い替えるときは別のメーカーにするだろう。<br />そして記事の中でここが気になった。</p>
<figure id="4d88ccdb-f7e6-47bc-ba13-81cb7e9e7ae9">
<blockquote>
<p id="a960faa1-622f-4380-ae19-b7b37d9fc7d1">「視聴者の好みに合った映像を、複数の動画サービスや地上波、過去に録画した映像から提案する。」</p>
</blockquote>
<figcaption><a href="https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF274AY0X21C23A2000000/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">「パナHD、アマゾンとテレビ開発 視聴者ごとに映像提案」より</a></figcaption>
</figure>
<p id="a4c2da87-16c6-497d-80db-cadb980fa6ad">複数のサービスから横断的に好みに合った映像を提案するというのだが、そもそもNetflixにせよAmazon プライムビデオにせよ、そんなにレコメンが上手でしたっけ?「好みに合った」と映画やドラマのメタからお前らが勝手に「あなたにぴったり」と判断したコンテンツを推してくる、あれだろう?あんなにアテにならないものはないよ!</p>
<h3 id="e19e41f2-b680-4151-a697-8c1c21e82171" tabindex="-1">VODはレコメンさえすればいいと思ってるのが間違い</h3>
<p id="030379a4-5932-4110-93ed-66f0bfdbf23a">一方でこんな記事も気になった。</p>
<figure id="8a56d920-3e20-4b8d-a278-1cc33a5f8d6b" data-src="https://forbesjapan.com/articles/detail/68396" data-identifier="null">
<div data-name="embedContainer">
<div data-embed-service="external-article">
<div><a href="https://forbesjapan.com/articles/detail/68396" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">米国で加速するサブスク動画離れ、エンタメの新潮流とは | Forbes JAPAN</span> </a></div>
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<p id="607ef623-41e7-4fc2-8f1f-2265d9e15849">2010年代はNetflixが米国メディア界で急成長し制覇した10年間だった。負けじとディズニーもHBOも誰も彼もがSVODサービスを立ち上げた。2020年代に入ると成長は踊り場に差し掛かり、代わりに救世主となったのがFASTだ。<br />なぜSVODが行き詰まったのか、上記記事に書かれているわけだが、一人の濃いユーザーとしてさらに一つ、重要な原因を挙げておきたい。サービスが続々出てきて旧作も新作もオリジナルも洪水のようにコンテンツが毎日流れ出てくる。どれを選べばいいのかわからないのだ。<br />これに対しNetflixはじめサービス側はレコメンデーションが役立ちますよと言ってくる。だが彼らのレコメンシステムなんかひとつも役に立ちはしない。あんたたちがオススメしてきたら、はいそうですかとユーザーが選ぶと思っているらしいのが腹が立つ。Netflixは日本上陸当初、我が社にはGoogleより優秀で高級取りのエンジニアが大勢いて、毎日レコメンデーションエンジンを磨いています、とドヤ顔でアピールしていた。だからユーザーのほとんどがレコメンされた中からコンテンツを選んでますと自慢してた。レコメンリストから選ぶしかないんだから当たり前だろ!<br />ユーザーの立場で実際にどんなプロセスで見るべきコンテンツを決めるか、少しでも想像してみろよ。複数あるサービスには日々「新作」がリストに並び、「あなたにおすすめ」リストは更新されるが、相当な映画好きである私の知らない作品がずらりと並んでいる。その時点で、当惑するのだ。全然知らないお友達が並んでいて、さて今夜は誰と過ごす?と聞かれても、知らないやつとメシ食わねえだろう!<br />だからどんなコンテンツか調べる。だが選んで押すと出てくる情報はほんの数行だ。新聞のテレビ欄の解説だってもっと書き込んであるぞ。たった数行と、聞いたことない出演者や監督名で、貴重な2時間を過ごすと決められるかよ!<br />と、それでも気になったコンテンツの情報をチェックしていくと、貴重な30分くらいがただ費やされていく。見てもいいかなというやつをマイリストに入れて、そう言えばニュースの時間だと放送に戻ってしまう。<br />こんな日々をユーザーが過ごしていれば、クレジットカードの細目を見て「あれ?このサービスはもう2ヶ月使ってないわ」と解約する。そんなことが世界中で起こっているのだと思う。行き詰まるのも当たり前じゃね?</p>
<h3 id="8cf62fc5-393e-4e19-8ee5-1df62dc74209" tabindex="-1">コンテンツの情報を充実させればSVODは伸びしろがある</h3>
<p id="58555b8f-9649-4821-969a-5d10c9d27eb9">例えば映画興行では配給会社が個々の作品についていて、公式サイトを立ち上げたり様々なメディアにリリースを配信して記事を書いてもらおうとする。おかげでユーザーにはそれらの記事がちょいとアンテナを張っていれば届いてくるし、気になったら公式サイトで詳しいことがわかる。<br />さらに、これかこれ、どっちをみようと迷ったらFilmarksのようなユーザーの評価サービスもある。試写会でいち早く見た人たちが「なんとなく見たらおったまげた!」とか「大好きな監督の新作だが今回はいただけない」などと生の感想を書き込んでくれている。これが大いに参考になるのだ。<br />なんとなく自分に近い感覚の人かなと感じた人の感想はそのまま受け止めるし、もっとシンプルに「こいつはすげえ映画だ!」「もう何度も泣きました」などとわかりやすく、でも本物の感動を伝えてくれる言葉は説得力がある。<br />映画興行ではそんな風に、一つのコンテンツを選ぶに至る環境が整っているのだ。<br />SVODサービスの大きな欠陥は、それがほとんどないこと。Netflixオリジナルの新作ドラマシリーズがあまり馴染みのない国の知らない役者だらけで”「ゴーン・ガール」のサスペンスと「クラウンズ」のゴージャスさ”とかだけ書かれていて、誰が見るというのか。<br />逆に言うと、SVODはこうした環境を整えていけば十分に伸びしろがあるのだ。2011年のHulu日本上陸以来、SVODサービスを浴びるように利用してきた私が言うのだからまちがいない。</p>
<h3 id="530478f0-af99-43ec-b38a-20e4a9405e50" tabindex="-1">同じことを言ってきたわけだけどね</h3>
<p id="d5c7bf96-7bca-4678-a5c0-96de38ec1b13">でもそんなことは私も、そして多くのファンも言ってきたことだ。MediaBorderで最も読まれたこの記事でも言っている。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/24582/">ネトフリジャパン批判に乗っかって、5年前の愚痴を書いてしまう</a></span></p>
<p id="6956b958-ccb7-4f85-bfb7-d25efdf6c12e">みんな、コンテンツを愛する人たちで、Netflixに期待する人たちだから愛を持って言ってきた。それぞれのコンテンツを丁寧にプロモーションしろよ、へたくそ!とね。<br />でも何しろ伸びていたので、そんな声は聞こえなかったんだろう。2022年に会員数が減ったときは反省するかと思ったら、広告プランを加える暴挙に出て、それでうまくいったと思ってる。でもそんなの絆創膏だよ。<br />多少ちゃんとしたことを書くと、今後のSVOD事業は個々のコンテンツをどうユーザーにアピールするかにかかっている。映画と同じ制作費で作ったコンテンツを、映画並みに宣伝予算かけないで当たるわけないだろう。<br />Netflixについては、近々もっと生々しい批判記事を書く予定なのでご期待を。</p>
<h3 id="36f9bbad-64f0-46d0-b2ee-75d59c7c09ce" tabindex="-1">●お知らせ:テレビCMの売り方を考えるウェビナー開催</h3>
<p id="5da85810-54c4-488d-940d-7c295174f04f">1月30日にウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」を開催する。詳しくはこちらを読んでいただきたい。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28233/">テレビCMの新しい売り方を議論するセミナーをなぜ開催するか</a></span></p>
<p id="50cc88dc-93b0-498e-81bc-96afaf7ea8e4">申し込みはこちら。</p>
<figure id="3c5290a5-96a1-49fd-8ac6-90dfd972ef01" data-src="https://note.com/oszerosakai/n/n7b9fa5ba57e2" data-identifier="n7b9fa5ba57e2">
<div data-name="embedContainer"> </div>
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<p id="40d04741-571f-4434-ae24-2c44d79cb076">申し込みはこちら。(画像をクリック)</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p id="ef7aa08c-1829-472c-b791-bd10697356cd">※MediaBorder購読者は例によって割引があるので、以下のコードを申し込み時に入力してください。</p>2024-01-11T01:57:54+00:00メディアは広告であり、2024年は広告が問われる
2024-01-08T02:27:42+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28283/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/c99112dc4c304d729db3e10b7254ef13.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※トップ画像はAdobeFireflyに「2024年は広告がメチャクチャになっているのが問題として浮上する」と入力して生成されたもの</span></p>
<p id="f10df8df-8c85-4dee-9606-13fb3f7679b2">みなさん、すでに2024年の業務を開始したことだろう。MediaBorderも遅ればせながら最初の記事をお届けする。今年、メディアにおいて最重要問題となるのは、広告だと思う。それは、テレビ広告においてとネット広告とで問題の方向が違ってくる。</p>
<p id="2ac90dc6-ff22-45b4-8764-ebb5b0504980" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>メディアは広告とセットの存在である</strong></span></p>
<p id="e64ee412-a864-4692-b3a6-f94abf25c63c">SVODはじめ「サブスク」の形態が2010年代に急速に浮上した。そのことをもって、今後のメディアはサブスクが主役になり広告モデルは古くなる、との声も聞かれた。当時から、それは大きな間違いだと感じていた。いや、メディアとは広告とセットなのだと。もちろん、例外は存在するが。<br />広告のことを侮蔑的に語りたがる人たちがいる。メディアの本質がわかってないなあと思ってしまう。逆にメディアの本質は広告とセットなのだ。<br />企業は商品やサービスを人々に提供してビジネスを行う。その際に、広告は欠かせない。そして広告の舞台はメディアだ。<br />広告を軸に捉えると、メディアは人々と企業の間を取り結んでいるのであり、それもメディアの社会的な価値の大きな要素なのだ。もちろんそこには常に、ジャーナリズムと企業サービスのせめぎ合いが起こるが、その葛藤も含めてメディアなのだと私は思う。<br />NHKのような「公共メディア」は別だし、SVODのようなサービスも別だ。だがNetflixとディズニー+は広告プランも選択肢に加え、アマゾンプライムビデオも海外ではそうなるらしい。<br />多くの人々に対しコンテンツを提供する存在にとって、広告モデルが重要なビジネス要素なのだとはっきりした。<br />なぜメディアは広告とセットなのか。それは、メディアとはイマを伝える存在だからだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27601/">メディアはイマであり、テレビはまあまあどうでもいいイマが強みだった</a>(MediaBorder23年7月18日)</span></p>
<p id="90bef6f9-352f-4ff2-a84f-909356c07ee0">イマを伝えると書いたそのイマの中には、実は広告も含まれる。広告を通じて、報道とは別の形で企業のイマを伝えているのだ。そしてそれがメシの種になる。だから今後も、メディアにとって広告は事業モデルの中心であり、サブスクともセットで運営することになる。これまでも新聞雑誌がそうだったように。完全に課金モデルだけで運営するメディアは限られるだろう。</p>
<p id="b273653f-728e-4ad9-aef3-42a797f3f376" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>ネットメディアの広告は今の形式の限界が近い</strong></span></p>
<p id="d9928b94-5b25-4e1d-b586-e5683925f266">ネット広告市場は22年にマス4媒体の広告市場をも超えて3兆円にまで膨らんだ。いまや広告市場のメインストリームだ。ところがその中身たるや無法地帯化してしまっている。<br />あれだけ世界を制したFacebookやX(旧Twitter)の広告がボロボロになると誰が想像しただろう。だが説明するまでもない通り、Facebookには誰がどう見てもインチキな広告が平気な顔でタイムラインに流れてくる。Xの方はイーロン・マスクのおバカな言動により広告主が引いている。新ルールで拡散されるほど収益がユーザーに入るようになり、ゲスな投稿が跋扈している。まともな場所と言えなくなる寸前だ。<br />またネット上のメディアの記事を読もうとすると、まるで読者の邪魔をするように広告がやたらと表示される。どう見ても広告の面積の方が本来の記事より大きい。ページをめくると前面を塞ぐ広告が表示され、閉じるボタンがわからない。記事を読み進む意欲をなくしてしまう。<br />そんな状態で接触した広告に効果があるはずがないのに、1インプレッションとしてカウントされてしまう。企業は間抜けなことに、そのインプレッションにお金を払っている。まるで狸の化かしあいのような、ほとんど詐欺に近い「市場」で大きな金額が動いてしまっている。<br />私は様々なメディアで記事を書いてきたが、自分が運営するこのMediaBorder以外では東洋経済オンラインと日経ビジネス以外では書かなくなった。広告表示がまともだからだ。<br />ひどい広告表示のメディアでは、質より量なのかどんどん書き手を増やし、どんどん記事を増やしている。クズ広告が載るクズのような記事を載せまくると、クズメディアに成り下がってしまうのではないか。<br />この問題は2010年代からあったし、私はそのテーマの本も書いたが状況はむしろ悪くなっている。このままでは臨界点を超えてしまう。私は今年、それが来ると思う。実際、ネットメディアは全般的に不調と聞く。今のやり方はダメなのだ。<br />うまいこと広告を表示させようという意図しかない広告は表示されても見られない。まず読者が、次に広告主がNOを突きつけてくる。だがFacebookもXもGoogleもどうしたらいいかは見出せないだろう。<br />だがシンプルな話だ。コンテンツと広告の整理、そこに尽きる。これが記事です、ここは広告です、という区別をはっきりさせる。それだけの話だ。必要なのは秩序なのだ。<br />このテーマの先は、今年様々に掘り下げていこうと思う。</p>
<p id="1f96345d-60cf-4aa8-a651-aa03fdba3c3b" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>テレビCMは安く売ってきたのを是正できるか</strong></span></p>
<p id="13a87319-b170-4365-b0c4-3ed75bfe070f">テレビCMの場合、まったく別の課題が今年浮上するだろう。昨年、日本テレビがARMプラットフォームを24年度末からスタートさせると発表した。さらに年明けにはこんなニュースも飛び込んできた。</p>
<figure id="1280051c-4d3f-4ce6-b41c-fa6e03f9fb53" data-src="https://www.switch-m.com/news/nagoyatv_tval" data-identifier="null">
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<div data-embed-service="external-article">
<div><a href="https://www.switch-m.com/news/nagoyatv_tval" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">スイッチメディア、メ~テレと東海3県のテレビ視聴データで番組の価値を再定義して広告主に提案する共同営業を開始 </a></div>
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<p id="d39110c5-9f26-4c4f-8c3f-d919d95e6cf2">中京地区の局と、スイッチメディア社の取り組みという点が面白い。一体何をしようというのか。<br />それを知る前に、既存のテレビCMの売り方に元々あった問題点を理解する必要がある。日本のテレビCMはCPMで見ると米国より安売りしてきた。ここでは見せられないが、実際にそういうデータはある。<br />なぜ安かったか。ポイントはスポットセールスにある。これは考えればわかることで、スポット枠をGRPで売ると安売りになってしまうのだ。本来高くても買いたい枠と、本来買いたくない枠を一緒にして売るのだから全体としては安売りになってしまう、ということだ。1個100円のりんごも、1箱だと30個入って2000円で売るようなことをやってきた。<br />その解決策が日本テレビが始めたSAS(Smart Ad Sales)で、スポット枠を単品売りするやり方だ。<br />もう少し詳しく説明すると、ある広告主がM1(若い男性)にCMを見せたいと考えたとしよう。番組Aは個人全体視聴率は低いがM1がたくさん見ている。その広告主にとっては買いたい枠だ。ところが個人視聴率は低いのでGRPで買うと安売りになってしまう。<br />ここで「売り方」の問題が出てくる。スポットで買う際になかなか「番組Aの枠を買いたい」と言っても通用しなかった。だからと言って突然タイム枠は取れない。そんな場合にはSASで指定買いできればいいわけだ。もちろん価格は交渉になるだろうが、GRPで買う時より多少高くても全体の中で納得できればいいわけだ。<br />このSASもまだ活用できていない局や広告主もいるだろうが、今後のひとつの方向性になるだろう。<br />その次にどう進むか。スイッチメディア社とメ〜テレの取り組みはそこを目指すのだろうが、そう簡単ではない。<br />とにかく答えは一つではなく、これまでのように「タイムかスポットか」からいかに考え方を広げられるかが今後のテレビ局の課題になるだろう。これについても、今年は重要なテーマの一つとして注力していきたい。<br />今年はメディア界にとって波乱の年になるだろう。いままで考えられなかったような議論や動きが巻き起こるのはまちがいない。MediaBorderを通じて先取りしてお伝えしていくのでぜひお読みください。</p>
<p id="36f9bbad-64f0-46d0-b2ee-75d59c7c09ce" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>テレビCMの売り方を考えるウェビナー開催</strong></span></p>
<p id="5da85810-54c4-488d-940d-7c295174f04f">注力する最初として、1月30日にウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」を開催する。詳しくはこちらを読んでいただきたい。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28233/">テレビCMの新しい売り方を議論するセミナーをなぜ開催するか</a></span></p>
<p id="50cc88dc-93b0-498e-81bc-96afaf7ea8e4">申し込みはこちら。(画像をクリックしてください)</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view">https://grounddesignmtg-6.peatix.com/</a></p>
<p>※MediaBorder購読者は例によって割引があるので、以下のコードを申し込み時に入力してください。通常3,300円が2,500円になります。</p>2024-01-08T02:27:42+00:002023年、MediaBorder的10大ニュース(後編)
2023-12-27T03:52:20+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28255/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/43c0d2d42b6d4fd782a5ee9f2f531a9c.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※トップ画像はAdobe Fireflyで「ローカル局は再編を迫られCTV市場の誕生が待たれる」と入力して出てきた生成Ai画像</span></p>
<p><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28245/" target="_blank" rel="nofollow noopener noreferrer">昨日の前編に続いて、</a>今年の10大ニュース後編として6〜10をお届けする。</p>
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<p><span style="font-size: 18px;"><strong>6:ローカル局再編の予兆</strong></span></p>
<p>すでに総務省の有識者会議では放送業界の縮小を前提にした議論が進んでおり、ローカル局をキー局傘下に入れやすくしたり、数局に分かれていた局が同じ内容を放送するのも選択としてありになっていた。今年度は赤字局がいくつも出るとの噂で、にわかにこうした新制度を使ってキー局傘下に入ったり再編するローカル局が出てくる、その予兆が見られている。<br />テレビ朝日系列は3県ずつで1局にまとまる方向性が出ていると言われている。そのためにキー局から役員が東北の局に赴任しているからだ。<br />東北のテレビ朝日系列6局は、まとまって<a href="https://topo-tv.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">「topo」</a>という映像配信サービスをスタートさせた。</p>
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<div><a href="https://topo-tv.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">東北の動画・情報配信サービスtopo(トポ)</span> </a></div>
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<p>筆者もさっそく登録してみたが、ローカル局がまとまることの困難さを思い知った感がある。「topo」はサービスとして再設計をお奨めする。<br />まず無料登録時に氏名と住所、電話番号をすべて入力させられる。普通ならこの時点で8割くらい離脱するだろう。なぜ今時、ここまで個人情報を入れさせるのか。何に使おうというのだろう。<br />そして動画が「無料」「会員無料」「定額見放題」「レンタル」に分かれていてシステムがややこしい。定額は月々550円で、夕方の情報番組の1コーナーをお金を払って見る人がいるはずがない。すべて無料にして広告型にすべきだった。<br />「topo」の先に再編の具体像は見えてこない。逆に、こんなに混乱したサービスを立ち上げてしまうことに、再編の困難が滲み出てしまっている。<br />ローカル局の再編はキー局主導ではうまくいかないと思う。ローカル局側がまとまって何をしたいか、どう組むつもりかを先によくよく議論しないといけないのではないか。このテーマは来年以降、さらに掘り下げるべきだろう。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27276/" rel=" nofollow">ローカル局はわかっているなら、動くしかない</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>7:CTV市場への注目とCMの売り方の模索</strong></span></p>
<p>CTVとはConnectedTVの略で、広義ではネットに繋がったテレビの使い方、つまりYouTubeやNetflixなどジャンルを問わずにテレビでネット動画を楽しむ行為のことだが、狭義でCTVと言えばその中の広告市場のことを指す。その多くはYouTubeが占めているが、それとは別にTVerとABEMAなど、テレビ局側が運営するサービスも重要だ。特にテレビ局にとっては、放送収入が下がる分をCTV市場を育てて補っていきたいところだ。とは言え22年の地上波の広告収入は1兆6千億円に対し、TVerやABEMAなどを合わせた広告収入は358億円。まだ2%といったところ。ただし前年比で40%以上伸びているので、同じペースで成長すると2030年には5千億円になるはず。CTVに全勢力を傾ける必要があるだろう。<br />併せて、CTV時代に向けて、あるいは下降の一途を辿る放送収入を守るために、CMの売り方も考えないわけにはいかない。と、思っていたら日本テレビがARMプラットフォームなるものを発表した。</p>
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20231127.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">地上波広告におけるリアルタイムなプログラマティック取引を実現<br />「ARMプラットフォーム」を2024年度末にリリース予定</a></span></div>
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<p> </p>
<p>11月27日の発表直前に話を聞きに行ったのだが、なかなかよく考えられている。これについてはセミナー告知記事の中で少し詳しく触れているので興味があれば読んでもらいたい。24年度末のリリースなので、その時までにじっくり広告主や代理店に説明していく予定だそうだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28233/" rel=" nofollow">テレビCMの新しい売り方を議論するセミナーをなぜ開催するか</a></span></p>
<p>ARMに限らず、来年はこうしたCMの売り方の選択肢を増やす議論が活発になりそうだ。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>8:FASTの議論が活発に</strong></span></p>
<p>活発に業界でFASTの議論がなされたわけだが、いちばん議論していたのは私かもしれない。あちこちに書いたし、今年の頭にセミナーもやった。Inter BEEでも直接は担当しなかったがサポート役となって奥村文隆氏のブッキングなども手伝った。<br />FASTでポイントなのは、米国市場では単純にSVODに代わるものとしてではなく、有料と組み合わせたりしてサービスの形態が固定的ではなくなったことだ。日本でも、単独で登場するかの前に、既存サービスに付加してスタートするかもしれない。Leminoも、立ち上げ時の取材ではFASTとしてスタートしたかったと言っていた。<br />一方で、米国のFASTプレイヤーが日本で様々な交渉をしている様子だ。おそらく来年には、既存サービスにFASTが追加されたり、日本で誰かが単独で立ち上げたり、米国のサービスが上陸したりするだろう。2015年にSVODが一気に続々登場したが、似たようなことに来年なると予測している。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27634/" rel=" nofollow">FASTは日本に来る!あるいは誰かが立ち上げる!〜奥村文隆氏インタビュー</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27687/" rel=" nofollow">FASTを実際に使ってみたら膨大なチャンネル数に驚いた件について</a></span></p>
<p>こちらの日経ビジネスでの連載も紹介しておきたい</p>
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00565/083000004/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">NetflixからFASTへ? テレビ受像機=ネットデバイスの時代</a></span></div>
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<p><span style="font-size: 18px;"><strong>9:ネット広告グダグダに</strong></span></p>
<p>インターネット広告は昨年ついに4マス媒体の広告費さえ超えた。それほど伸びるネット広告だが、中身はもうむちゃくちゃなことになっている。テレビを始め旧メディアは必ずしもネットに負けたわけではなく、今起こっているのは共倒れと受け止めるべきかもしれない。<br />このテーマはMediaBorderでは記事にしなかったが、日々ネットに触れていると誰しも感じているだろう。例えばFacebookに表示される広告が、いよいよ怪しいものが増えてきた。著名人の名前や写真を使っているが、絶対フェイクだし許諾もとっていないのは見え見え。そんな広告で怪しい情報商材などを売っているようだ。<br />あるいは、ネット上のメディア全般の広告表示があまりにもひどい。記事を読もうと開くと、本文に覆いかぶさるように幾つもの広告が表示され、記事が読めない。これでネット広告市場が成り立っているとしたら、広告主はお金をイメージを悪くするために使っているようなものだ。<br />しかもFacebookやX(Twitter)が自分たちのドメインからユーザーが出て行かないように、外部の記事へのリンク表示にものすごく消極的になっている。ネット上でのコンテンツとメディアのエコシステムが崩壊寸前になり、悪辣な事業者だけが得をする世界になりかねない。<br />私は3年前にそれを啓発するつもりで本を書き、いい方向に向かっているとレポートしたのだが、いい方向への力に悪い方向への力が勝ってしまい、状況は悪くなるばかりだ。</p>
<p><a href="https://www.amazon.co.jp/%E5%AB%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%81%AE%E3%80%88%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%80%89%E3%81%AF%E5%86%8D%E7%94%9F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B-%E5%81%A5%E5%85%A8%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%80%81%E3%80%8C%E9%87%8F%E3%80%8D%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%8C%E8%B3%AA%E3%80%8D%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%A4%A7%E8%BB%A2%E6%8F%9B-%E5%A2%83-%E6%B2%BB/dp/4781619053"><img style="margin: 0px; width: 140px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/75d5a5388f264722893342ca391f4d6d.jpg" /></a></p>
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<div><a href="https://www.amazon.co.jp/dp/4781619053?tag=note0e2a-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">嫌われモノの〈広告〉は再生するか 健全化するネット広告、「量」から「質」への大転換</a>
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<div>このテーマは来年追うべきものの一つになりそうだ。</div>
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<h3>10:自民党に呼ばれる</h3>
<p>MediaBorder的ニュースというより、私個人のニュースというべきだが、今年は政界にアプローチした。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27476/" rel=" nofollow">自民党の調査会に呼ばれてしゃべった件について</a></span></p>
<p>呼ばれたことを自慢したいのではなく、メディアの今後を考える上で、政界へのアプローチも必要になっている、その象徴として受け止めてもらいたい。<br />ある元官僚の方が言っていたのだが、放送業界のロビイングは他の業界に比べると上品なのだそうだ。他の業界はもっとグイグイ押してきて、官僚の側もずけずけ言い、そんな中から業界に何が必要か理解し合うことができ、結果として物事がうまく進むというのだ。<br />放送業界の場合、そもそも官僚の側にメディアというものにあまり口出しすべきではないのでは、との遠慮があるそうだ。メディアは自主独立の存在でなければならず、民主主義社会の不文律として、行政が関与しすぎてはならない。そんな思いがあるらしい。結果的にお互い気を遣い合い、よく言えば紳士的、悪く言うと距離がある関係になっている。<br />だが今ほど政治や行政とメディアが関わるべき時はないと思う。誰も正解がわからないまま、苦しくなったりむちゃくちゃになったりしている中、ほっておくと言論空間が荒野のようにすさんでしまう。<br />私としては、まがりなりにもできた細いつながりを、うまく活かしていきたいと考えている。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><strong>番外:さんいん中央テレビと田部長右衛門氏に感服</strong></span></p>
<p>今年のMediaBorderでもっとも読まれたのがこの記事だ。(note版での話です)</p>
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<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27453/">自分のやりたいようにやると決めました。最後に責任を取るのは私ですから〜さんいん中央テレビ・田部社長インタビュー(前編)</a></span></p>
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<p>noteは様々な人々が書いた記事から注目記事を集約するページを日々更新しており、その中で取り上げられたのだ。MediaBorderの記事は基本的には数百名の購読者向けなので、たまたまそれ以外の人が読んでくれたものでも多くて1000〜2000PV程度。ところがこの記事だけ1万PVを超えた。<br />メディア論を超えた面白さがあったのだろう。実際、田部氏の発想はテレビ局の範疇を超えて、完全に事業家だ。家業の一つであるテレビ局を、島根の財閥のトップとして経営している。そこにはメディアの重要性もあるし、テレビへの愛もある。だがそれ以上に彼は島根を背負っており、そのためのコミュニケーションの核がテレビ局なのだ。<br />そんな彼も、フジテレビでの修行を終え30歳をすぎてさんいん中央テレビに戻ってから、いきなりお殿様のように家老たちがひれ伏したわけではなく、戦って主権を勝ち取った。<br />ローカル局の経営者に必要なのは、自分の信念を貫く覚悟であり、それは血筋だけで済むものではなく、胆力で勝ち取るものなのだ。<br />田部氏とさんいん中央テレビも、もっと掘り下げたい対象だと考えている。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27457/">もはやメディア事業ではなくて地域創造カンパニー〜さんいん中央テレビ・田部社長インタビュー(後編)</a></span></p>
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<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27374/">TVerで人気爆発のきっかけは、濱家の遅刻だった!〜さんいん中央テレビ『かまいたちの掟』制作者・川中優氏インタビュー(前編)</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27401/">島根の報道マンが中国相手のファンビジネスを増殖中!〜さんいん中央テレビ岡本敦氏インタビュー</a></span></p>
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<p>2023年の10大ニュース、どうだったでしょうか。今年も語るべきことが多い一年でしたが、来年はもっと激動が起きると想像しています。その先っちょを追いかけていきますので、来年もMediaBorderをよろしくお願いいたします。</p>
<p>●お知らせ<br />1月30日にMediaBorderセミナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」を開催します<br />お申し込みはこちらから↓(画像をクリック)</p>
<a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view" rel="nofollow"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1703644718207-5JXfvn2QFv.jpg?width=800" alt="画像" width="620" height="347" /></a>
<p>MediaBorder定期購読者の方は3300円が2500円になる割引クーポンを発行しています。<br />こちらです↓</p>
</div>2023-12-27T03:52:20+00:002023年、MediaBorder的10大ニュース(前編)
2023-12-26T05:48:57+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28245/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/20b4ea580c6c4c6491640cd00e4ab63a.jpg" /><br /><span style="font-size: 12px;">※トップ画像はAdobe Fireflyで「放送事業はもはや成長できずインターネットに活路を見出すしかないがまだまだ途上である」と入力して出てきた生成Ai画像</span></p>
<p id="30a0e70d-6265-4d4f-861b-910e8866061d">いつのまにか2023年も残り数日。MediaBorderもこれが今年最後の記事になりそうだ。昨年は読者の皆様に投票してもらったが、今年は私が勝手に決めてMediaBorder的10大ニュースをお届けしよう。一度に書くと長ーくなるので、まずは1〜5をどうぞ。</p>
<div data-v-d0cf843c="">
<div data-note-id="77754859" data-note-key="n25d73051f150" data-v-d0cf843c="">
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<p id="98975285-6a5e-4d57-acb4-c9da0cc958ef" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>1:テレビ放送事業の地盤沈下が決定的に</strong></span></p>
<p id="00f593db-fabb-4d88-b1c0-cf1c46ff44ee">今年は何と言ってもこれだろう。テレビ放送は事業としてもはや絶対に再浮上することはないと誰もが認めざるを得なくなった。民放の話ではあるが、NHKの受信料も若い人の新たな契約が望みが薄い上に人口減少、値下げ圧力などで今後上がることはないだろう。<br />電波を通してエリアごとに一律の情報と娯楽を届ける仕組みは事業としてもう下がるだけだ。私はどこかで近郊すると思うが、少なくとも今後10年程度は減少するだろう。<br />代替は10年前からインターネットに可能性があるのもみんなわかっていたが、足踏みしている間に間に合わなくなっている。2023年は、そのことを放送業界全体で認識した歴史的な年として刻まれるだろう。<br />※関連記事</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27328/">放送収入はもう伸びないことがはっきりした〜2022年度キー局決算を考える</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27708/">1Q決算に見るキー局の中の「差異」と、ローカル局の「格差」</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28115/">キー局23年度半期決算ではっきりしたCTV市場の必要性</a></span></p>
<p id="62a52f23-d229-4628-a42c-5c359b0306ee" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>2:ジャニーズ事務所問題勃発、社会的な問題へ</strong></span></p>
<p id="fcedb99c-1a85-4929-8006-be47f83ac9ae">ジャニーズ事務所を創業したジャニー喜多川氏による性被害がBBCの報道をきっかけに露呈し、大きな社会問題として取り上げられた。帝国とも称されたエンタメ業界で絶大な力を誇ってきた組織があれよあれよという間に解体され、新組織に外からトップが就任した。<br />その中で「メディアの沈黙」も批判され、事態を温存した大きな原因と指摘された。各キー局が報道番組として、そしてのちには会社としての検証を行いその結果を番組として放送した。だが決して「それで済んだ」わけではなく、来年まで持ち越しになりそうだ。<br />私はその決着として、そもそもテレビ局とは娯楽を提供するのか、報道を中心とした情報を提供するのか、二択で問われる時が近いうちに来ると思う。どちらを取るべきかは明白だが、それはまた別の機会の議論としたい。<br />※関連記事</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27357/">日本のメディアは、一人の老人によるおぞましい行いを、海外から指摘されるまで扱えなかった</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27835/">ジャニーズ事務所会見で「なぜ日本企業が変われないかがわかった」件について</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27965/">テレビ局はジャニーズ性加害問題に、会社として姿勢を示さねば危機に陥る</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28160/">「楽しくなければテレビじゃない」を見直す時が来ている〜テレビ局自己検証番組を見て〜</a></span></p>
<h3 id="a679adcf-b0ac-4729-a01f-f27f046c94dd" tabindex="-1">3:NHKが新聞協会の圧力でテキストニュース縮小へ</h3>
<p id="32605b6a-ae40-4439-885e-cd43faaffa94">この件は別のメディアも含めていちばん多くの記事を書いたかもしれない。総務省の会議を毎回傍聴してこれほど馬鹿げた議論が大真面目に展開されることに呆れた。NHKのテキストニュースは、どうやらなくなりはしないが放送された範囲を超えた独自のものは載らなくなるらしい。新聞協会の圧力にも呆れたが、結局はNHK内部の問題で、ネットで受信料を今後は得たいらしいのに、ネットで人々との接点を減らすのは頭が悪いとしか思えない。おそらくNHKはいまも敬われる存在だと思い込んでいる人物がいるのだろう。核となる人物の名前も知ったが、そんなたった一人の誤った認識でNHKの公共的役割がネットでは構築できないと思うと、なんとも言えない情けない気持ちになる。このテーマは来年も追っていくことになるだろう。<br />※関連記事</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27540/">新聞業界がNHKを「民業圧迫」と詰めても誰も得しない件について</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27558/">ある放送局OBから放送業界へのメッセージ</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27741/">NHKは「公共メディアへ」の進化を投げ出してしまったも同然だ</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27757/">新聞業界の恐るべき政治力と、その無意味な使われ方</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27812/">すったもんだあった放送関係の有識者会議にあって、傾聴すべき重要な発言</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28198/">新聞協会の横槍とNHK自身の体たらくで、NHKのネットニュースがなくなる〜国民の権利侵害だ!〜</a></span></p>
<p id="9bbf3e8c-40b0-411f-9591-7449079d7187">※東洋経済オンラインにも数回の寄稿をしているので一つだけ紹介しておく</p>
<figure id="140d9cb6-61c5-4c10-a944-5dedd320eb2d" data-src="https://toyokeizai.net/articles/-/721132" data-identifier="null">
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<div data-embed-service="external-article">
<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://toyokeizai.net/articles/-/721132" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">NHKが「テキストニュース」を次々に閉鎖する懸念</a></span></div>
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<h3 id="30c2884a-3d41-442b-88d2-940dbb09488b" tabindex="-1">4:ParaviをU-NEXTが統合、SVOD勢力図ほぼ固まる</h3>
<p id="e1c8e8d3-3180-4516-b961-d84179ec6c25">今年の配信業界で最も驚いたのが、2月のニュースだった。ParaviがU-NEXTに統合されるというのだ。TBSと日本経済新聞グループ、WOWOWの連携で2018年に鳴り物入りで誕生したParaviがたった5年で他のプレイヤーの中に入るとは!誕生時に取材に行き、意気軒高の関係者に取材した私からすると、あの時の高揚はなんだったのか。<br />だがNetflixが一時期行き詰まったりディズニー+の赤字が露呈したり、SVODが曲がり角にあるのは見えていた。ここで旗を下ろすのは潔いとも言える。テレビ局はSVODでBtoCに新たな活路を見出そうとしていたが、むしろ無料広告型のTVerに全力を注ぐ判断だろう。そうするとHuluの日テレやTELASAのテレビ朝日はどうするのか気になる。いずれにせよ、2010年代後半からのSVOD時代はここで第一幕が降りたのだ。次から何がどうなるのかに目がむき始めた。<br />※関連記事</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/26982/">U-NEXTは日本のSVODをすべてまとめるのか?</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27072/">世界も視野に、堅実に、飛躍する。〜U-NEXT堤天心社長インタビュー〜</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27235/">変わったのは、名前だけではない〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(前編)</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27240/">目指すのは、サービスよりメディアなのか?〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(後編)</a></span></p>
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<p id="fb568a2e-a8f9-4edd-ba3a-5d9d46b77384" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>5:TVer大躍進、テレビ局は無料広告型へ</strong></span></p>
<p id="ac473ea9-b771-4181-929b-ce2fd762e9d6">今年は何と言っても、TVerが大躍進した。月間3000万UBを超え、一部の若者たちにとっては無料で好みのドラマが視聴できるサービスとして定着している。今後のテレビ業界の成長を担うプラットフォームとして誰もが認める存在になった。<br />だが課題も多い。ローカル局の番組が埋もれがちであることと、目当ての番組を見たら直行直帰してしまうことだ。その解決は、新たな見せ方、新しい配信スタイルを付加することだろう。これについては、Inter BEEで私が進行を務めたセッションでCOO蜷川氏がなんらかの新しい、いきなりストリーミングが始まるような形態を付け加えると宣言した。<br />TVerはぜひさらに進化して頑張ってもらいたい。個人的にはUIも使いにくいので改善してもらいたいところだ。<br />※関連記事<br />まず、INTER BEE MAGAZINEでTVerの若生社長にインタビューした記事があるので参考されたい</p>
<figure id="23158f6e-ae0c-4914-8419-c5d0981f83b8" data-src="https://www.inter-bee.com/ja/magazine/special/detail/?id=53670" data-identifier="null">
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<div data-embed-service="external-article">
<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/magazine/special/detail/?id=53670" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">2030年、日本の動画情報最大のインフラを目指す!〜TVer若生社長インタビュー〜 </a></div>
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<p id="47f57944-5d84-4ffa-9968-0ea2ac205eb0">MediaBorderでは様々な角度で書いている</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27022/">今後のテレビ業界に関する無責任な推計〜日本の広告費2022を元に〜</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27125/">テレビ神奈川がTVerで「tvk祭」を開催。担当者インタビュー全文</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/27374/">TVerで人気爆発のきっかけは、濱家の遅刻だった!〜さんいん中央テレビ『かまいたちの掟』制作者・川中優氏インタビュー(前編)</a></span></p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://mediaborder.publishers.fm/article/28128/">INTER BEE BORDERLES、VODセッションでもらった質問に回答をいただいた</a></span> </p>
<p> </p>
<p>●お知らせ</p>
<p>1月30日にMediaBorderセミナー<strong>「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」</strong>を開催します</p>
<p>お申し込みはこちらから↓(画像をクリック)</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/view"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p>MediaBorder定期購読者の方は3300円が2500円になる割引クーポンを発行しています。</p>
<p>こちらです↓</p>
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</div>2023-12-26T05:48:57+00:00テレビCMの新しい売り方を議論するセミナーをなぜ開催するか
2023-12-20T02:14:16+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28233/<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/"><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p id="b26381ef-0fee-4e89-9601-68eea37a8baf">1<a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">月30日(火)にウェビナーを開催する。「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」</a>のタイトルで、プログラマティカの楳田良輝氏にプレゼンしていただく。インテージの深田航志氏も登壇し、前説的に解説していただく。そんな構成だ。</p>
<figure id="f3ebd878-ad4f-45f5-939f-041092bf838d" data-src="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">ウェビナー「CTV時代のテレビCM データを駆使した新しい売り方を考える」</a></span></div>
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<p id="d54f6934-80cd-4c86-9642-035a8d15d59f">ここで展開したい内容を先に簡単に説明すると、こうだ。<br /><br />CTV時代にはテレビCMもネット広告の指標で売るようになる?→だったらインプレッションやCPMを基準にした売り方をいまのテレビCMに先に導入しては?→新しい指標をうまく使うことでテレビCMの価値を高く広告主に提案できるかも→広告主も結果的に納得で効果的な取引できてみんなHappy!<br /><br />あまり簡単になってないのでもっと縮めると、CTV時代の指標を先取りして使えばテレビCMのいい売り方ができる?!ということだ。</p>
<p id="33987f27-4571-4201-9d90-9f0514095919" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>日本テレビARMプラットフォームが起こす(?)変革</strong></span></p>
<p id="39035fc9-b00d-4d2f-902a-63a4b9229fa3">テレビCMの売り方は既に変わり始めている。日本テレビが始めたSAS(Smart Ad Sales)について知る人は多いだろう。すでに参加局は32局にまで広がっていると聞く。<br />続いて先日11月27日に発表したのが「ARM(Ad Reach Max)プラットフォーム」だ。担当の方にお話を聞いて、いたく感心した。</p>
<figure id="63ae4d2d-5fb2-4c47-b097-8175865789df" data-src="https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20231127.html" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.ntv.co.jp/info/pressrelease/20231127.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">地上波広告におけるリアルタイムなプログラマティック取引を実現<br />「ARMプラットフォーム」を2024年度末にリリース予定</a></span></div>
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<p id="c2fecd7a-ea2a-458e-9219-746e1ff3c62e">テレビCMの不便さ、不自由さを解消しネット広告の使いやすさに近づける。簡単にいうとそんな考え方だ。上のリンクからざっとリリースを読んでもらえばわかる。例えば、CM素材がデータ入稿になっても、まだ4営業日前に素材を搬入・確定させなければいけない。これを直前まで対応可能にするという。<br />中でも私が注目したのが「地上波×インターネット統合在庫セールス」だ。言葉通り、地上波とTVerのようなネット広告を区別せず同じ在庫から買ってもらえますよ、ということ。広告主からすると、届けたいターゲットにCMを見せられれば、テレビCMでもTVerでもいいわけだ。だが売り方が分かれているから別々に買っている。どっちでもいいからターゲットに届けてね、というニーズに対応できる。ただし、単位はGRPではなくインプレッションになるだろう。<br />インプレッションに換算すると地上波のテレビCMは安く思える。実は安いと思われがちなネット広告の方が高かったりする。もちろん、それはターゲティングできるからでもある。そこを同じ指標で同じ在庫として扱うとしたら、地上波CMの単価が上げられるのではないか?そう質問したら、「そうなるといいと思うが、必ずしもそれが目標でもない」と言っていた。結局、価格を決めるのは広告主だからだ。<br />ともかく私はARMの話を聞いて、これまでのGRPでスポット広告を売買する際の課題や矛盾を解決する方向性として興味深いと感じた。<br />なにしろPUTの下降はどう見ても当分止まらないだろうし、そうするとスポット収入は下がる一方になる。打開策の一つとしてARMは注目すべきではないか。<br />ARMはかなりCTV時代を意識した考え方だと思う。そしてその方向づけは正しい。だからこそ、2024年度末からの稼働なのだ。今すぐ一気に全てこうしたい、ということではなく、まずは1年間じっくり説明した上で、ある程度理解を得たところで、選択肢の一つとしてローンチするようだ。</p>
<p id="2a2c9d01-ddfd-4e02-8fa3-733b30dd1e9a" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>プログラマティカ楳田氏のプレゼンと、それを元にした議論を</strong></span></p>
<p id="5f7e0098-f14c-4f23-a298-922e6278f86e">さて本ウェビナーではARMを語るわけではない。そんな新しい売り方が登場するのなら、いろんな新しい考え方もあるのではないか。CTV時代にテレビとネットを一緒に売る前に、ネット広告の売り方をテレビCMに敷衍してみると、新しい売り方が開拓できるのではないか、それを参加者とともに議論する場にしたいのが、私の企画意図だ。<br />そのポイントがCPMだ。プログラマティカの楳田良輝が提言する考え方を皆さんにプレゼンしていただく。</p>
<figure id="54096ada-bb03-43f3-ab1b-6b1985880887" data-src="https://www.programmatica.co.jp/" data-identifier="null">
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.programmatica.co.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">プログラマティカ | Programmatica Inc.</a></span></div>
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<p id="0fe26cd0-74e2-4cf4-bdd5-362c2efde5a6">楳田氏は長らく企業向けにマーケティング戦略のコンサルティングと、それに伴うメディアプランニングをデータを駆使して提案、実施してきた方。つまり広告主側のニーズや論理を把握している。またネット広告のプランニングにも関わってきた。CPMを使ってネット広告に近い売り方を皆さんに提案してくれる。<br />楳田氏の話は少々ハードルが高いかもしれない(私も何回か聞いてわかってきた)ので、ビデオリサーチそしてインテージでテレビ局の方々にデータを提供してきた深田航志氏に前説で補足してもらう。深田氏から前提となる基礎知識や情報を話してもらった後で楳田氏のプレゼンを聞くと、きっとすっと理解してもらえると思う。<br />後半では楳田氏の提案について参加者の皆さんに質問したりつっこんだりしてもらいたい。ここはどうなのか、そこはこんなやり方もできないか。具体的に掘り下げてもらうことで、ひょっとしたら楳田氏の提案が導入可能な具体的な仕組みに昇華されるかもしれない。そんな期待も持っている。</p>
<p id="02846a49-66bc-478e-81ee-563b4fbbce61">ウェビナーの申し込みはこちらのPeatixページから↓たくさんのご参加で議論が盛り上がれば嬉しい。</p>
<p><a href="https://grounddesignmtg-6.peatix.com/"><img style="margin: 0px; width: 280px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/bf798e3691074367b8238c35b627d09d.jpg" /></a></p>
<p id="8cf3394f-9e6e-4039-98a8-38735ca934b4">※MediaBorder購読者は例によって割引があるので、以下のコードを申し込み時に入力してください。</p>2023-12-20T02:14:16+00:00「視聴率の民主化!」TVAL nowが業界に問うメッセージ
2023-12-15T03:53:54+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28211/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/27d0de9663844dc98266f3da3d242275.jpg" /></p>
<p id="068f89e6-ead7-42a3-bdfd-77d9653f93cd" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>いつでも誰でもどこにいても、今の視聴率がわかる!</strong></span></p>
<p id="7f97ee55-1d03-44f0-9141-ad50e6fdde63">今月5日、スイッチメディア社が「TVAL NOW」を公開した。誰でもリアルタイムで地上波テレビの視聴率がグラフで見られるサービスで、なんと無料だ。<br />この件は私のFacebookのタイムライン上でかなり話題になり、さっそく使ってみた人々がシェアしていた。業界の人々が多いので当然だが、X(Twitter)の方でもさっそくハッシュタグ「#TVALnow」ができて、一般の方々がグラフを共有しコメントを交わしあっている。<br />長らくテレビデータについても研究したり、調査会社などにデータをお願いして出してもらっていた私としては隔世の感がある。時代が進んだなあ、と。<br />例えばこのグラフは今朝(12月15日)の各局がワイドショーを放送している時間のもので、数値は縦棒が立っている08:10時点の視聴率を示す。</p>
<figure id="89fdada7-4ba1-4c6e-9f1b-723e68b85b5c"><a href="https://tval-now.switch-m.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><img style="--tw-ring-offset-width: 0px; max-width: 100%; height: auto;" src="https://assets.st-note.com/img/1702602521431-rS2kGU6zYU.jpg?width=800" alt="" width="620" height="325" /></a>
<figcaption><a href="https://tval-now.switch-m.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">TVALnowより</a></figcaption>
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<p id="9411d823-3970-48f6-9567-4380b46f2a6d">朝の情報番組の中ではフジテレビ「めざましテレビ」が群を抜いて高いが、朝ドラでNHK総合がグンと上がるのが常識だ。ところがこの日は大谷のドジャーズ入団会見があり、民放は一斉に生中継を放送。テレビ朝日「モーニングショー」がなんと朝ドラ「ブギウギ」を上回った。日頃から大谷情報に力を入れてきた成果だろう。<br />そんなちょっとした分析が、今見ている番組について誰でもできるようになったのだ。これは画期的だ。<br />何しろこれまでは、朝の番組も翌日まで待たないと視聴率はわからないものだった。もちろん、ビデオリサーチと契約した会社でシステムが使える端末がないといけない。<br />それが、そんな契約がなくても、誰でもどこからでも使える。スマホにはちゃんと最適化された形で表示される。これまでの視聴率の常識を覆すツールだ。<br />ただしもちろん、ビデオリサーチの視聴率と調査パネルが全く違うので、そちらの数値と違ってくるのは当たり前だ。TVALnowで見た視聴率が、翌日発表されたビデオリサーチの視聴率と違うことは認識しておいたほうがいいだろう。</p>
<p id="27ec1134-2555-4d65-80c4-5225197e6cef" tabindex="-1"><span style="font-size: 18px;"><strong>ブラックボックスから視聴率を解放する</strong></span></p>
<p id="75c79800-3470-4757-997a-98140783d6c6">TVALnowの開発の背景については、スイッチメディア社のリリースに書いてある。</p>
<figure id="7c8727c4-6579-4c3c-ac56-3c50be49da18" data-src="https://www.switch-m.com/news/tvalnow" data-identifier="null">
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<div><a href="https://www.switch-m.com/news/tvalnow" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">地上波テレビ放送中の番組視聴率をリアルタイムにグラフで表示する「TVAL now </a></div>
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<figure id="d796a825-bd0f-44c2-a541-08705df1e231">
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<p id="8c77e799-6160-4246-aaec-c1e61b6540ce">スイッチメディアは、国内最大級のテレビ視聴パネルから独自に収集したテレビ視聴データを活用し、広告主・広告会社・放送局向けにテレビCM出稿分析サービス「TVAL」を提供してきました。「TVAL now」では従来テレビ業界向けに提供されてきたテレビ視聴率を世の中一般に公開することで、テレビ視聴データの民主化、またリアルタイムでテレビ番組を視聴することへの関心を高めていきたいと考えています。</p>
</blockquote>
<figcaption><a href="https://www.switch-m.com/news/tvalnow" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">TVALnowリリースページより</a></figcaption>
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<p id="7e4ee3cf-4fd2-43f1-8f88-626d1d9a760b">スイッチメディア社が企業向けに開発し提供しているTVALというツールがあり、TVALnowはその一部を切り出して一般向けに無料ツール化したものだ。だからTVALのプロモーション的な効果を狙ってのことだろう。だがそんな文章の中に「民主化」という言葉が入っているのが興味深い。<br />もう少し詳しく聞きたいと、スイッチメディアのビジネスコンサルティングGマネージャー、高嵜文菜氏に話を伺った。</p>2023-12-15T03:53:54+00:00Inter BEEアーカイブ映像、いよいよ12月15日まで!BORDERLESSの要チェックポイント
2023-12-11T06:33:34+00:00sakaiosamuhttp://mediaborder.publishers.fm/editor/583/http://mediaborder.publishers.fm/article/28209/<p><img style="margin: 0px; width: 560px;" src="https://publishers-static.s3.amazonaws.com/magazine_image/337/82e9669c1563445e9dfda4a02ad80695.jpeg" /></p>
<p>11月15日から17日まで幕張で開催されたInter BEEからもうすぐ1ヶ月経つ。ただ、オンライン会場ではまだ続いており、様々に展開されたカンファレンスもアーカイブ映像化されて視聴できる。それも12月15日(金)までなので、クローズ直前にあらためて紹介しておきたい。</p>
<p>アーカイブ化されたセッションはこちらのリストから視聴できる。幕張に行ってない人でも今登録すれば無料で見ることができる。</p>
<p><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/sessionlist/archive.html" rel="nofollow">Inter BEE カンファレンス・アーカイブリスト</a></span></p>
<p>私が担当したINTER BEE BORDERLESSは業界の旬なネタを漏らして9セッションを展開したが、そのうちの8つがアーカイブ化されている。</p>
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<p>17日10時30分からの「FAST・CTVの海外最新動向と日本のリアル」は残念ながら非公開だが、それ以外についてあらためて簡単に紹介したい。今年はほとんどのセッションで立ち見が出る盛況ぶりで、その盛り上がりを映像から感じてもらえればと思う。</p>
<h3>15日「ボーダレスデイ」の3セッション</h3>
<p>15日10時30分からの「配信・放送ボーダーレスの時代~先行するオーディエンスにビジネス、制度は追いつけるのか~」は毎年恒例となった、電通・奥律哉氏が軸となり、同社メディアイノベーションラボの最新の調査結果を発表するセッション。今年は青山学院大学の内山隆教授をゲストに迎え、タイトルにある「オーディエンスに放送制度は追いつけるのか」の議論を展開した。総務省の放送制度を議論する会議で構成員を務める奥氏と内山氏だけに、具体的な議論となった。同会議への愚痴(?)とも取れる発言も含めて、楽しめるセッションだ。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2392" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - BL-151 (アーカイブ中)</span> </a></div>
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<p>15日13時からは「ウェブニュースの現在地~放送局のデジタル報道とプラットフォーム~」のタイトルで、日本テレビで報道のDXを推進する三日月儀雄氏が企画しモデレーターを務めたセッション。GoogleでYouTubeを担当する永原錬太郎氏の単独公演と、LINEヤフーでYahoo!ニュースを担う藤原光昭氏とテレビ朝日で系列局のニュースをYouTubeで配信してきた西村大樹氏によるディスカッションの2部構成。BORDERLESSの前身CONNECTEDでも何度か報道をテーマにしたセッションを行ってきたが、今回は定員の200名を優に超える来場者となり、いよいよ報道も通信を活用する時代になったと痛感した。新聞も含めて報道に携わる人には必見のセッションだ。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2393" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - BL-152 (アーカイブ中)</span> </a></div>
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<p>15日15時からは「ドラマの未来を変える、広告とデータアナリティクス」のタイトルでジャーナリストの長谷川朋子氏が企画したセッション。元になっているのはこの記事だ。</p>
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.screens-lab.jp/article/28864" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">ドラマ『罠の戦争』で証明するカンテレ「トータルリーチ」のセールス成功事例</a></span></div>
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<p>関西テレビでコンテンツビジネスを展開して来た竹内伸幸氏が、同局のドラマがもはや放送収入だけでなく配信も含めた「トータルリーチ戦略」によりビジネス化していることを語るインタビュー記事だ。<br />セッションでは長谷川氏と竹内氏にLIXILの五十嵐千賀氏が加わり、リフォームをテーマにしたドラマに、住まいを彩る製品メーカーとしてどう関わったかを解説。さらに新しい手法で番組の価値をデータ化するREVISIOの河村嘉樹氏も登壇。トータルリーチの効果を数値で示した。<br />配信でもドラマが視聴されることで、企業も単純にCM取引をする以上の意義を番組に見出せる。そのポテンシャルが議論された。新時代に注目のセッションとなった。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2394" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - BL-153 (アーカイブ中)</span></a></div>
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<h3>16日「ローカルデイ」の3セッション</h3>
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<p>16日は「ローカルデイ」と括り、いずれもローカル局の今後を考える上で大いに参考になる内容となった。<br />10時30分からは「ローカル局の地域課題解決ビジネス〜地域の声が未来を紡ぐ〜」と題し、4つのローカル局の課題解決のビジネス化の事例を、TVQ九州放送の永江幸司氏のモデレートで紹介した。<br />農業高校と地域の流通企業を結んだ札幌テレビ大阪しの氏、宮崎放送の放送外事業としてトレードメディアジャパン社で地域と海外をつなぐ市原智氏、地域企業の事業継承の事業化を推進するメ〜テレ(名古屋テレビ)の安藤全史氏、30年前から続けて来た手話放送を持続可能にすべくビジネス化に取り組む岡山放送の篠田吉央氏。それぞれテレビ局として思いもよらぬ方向のビジネス化に取り組む姿は、ローカル局に限らず参考になるはずだ。</p>
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2395" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">コンファレンス詳細 - BL-161 (アーカイブ中)</a></span></div>
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<p>13時からはBORDERLESSの基調講演としてこれだけ国際会議場で華々しく開催された「ローカル局社長が語る地域メディアの“未来ビジョン”」。モデレーターのNHK放送文化研究所・村上圭子氏が切れ味鋭く繰り出す質問に、4人のローカル局社長が回答していくセッションだ。<br />テレビ朝日HD専務から東日本放送に出向し社長を務める藤ノ木正哉氏、LOCIPOなどで協調する中京地区の雄、CBCテレビ社長・松波啓三氏、アプリなどでユニークな展開が際立つ難解放送社長・大西康司氏、そしてMediaBorderでもインタビューした島根の地域財閥も率いる山陰中央テレビ社長・田部長右衛門氏。(田部氏のインタビュー記事はこちら→<a href="https://note.com/oszerosakai/n/n280bdb47c11c?magazine_key=mcc88d6d56440" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">さんいん中央テレビ・田部社長インタビュー</a>)<br />それぞれ違う背景を持つ4人の社長が村上氏の切り込みを受けて立って発言する、その様子をぜひご覧いただきたい。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2364" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - KN-162 (アーカイブ中)</span> </a></div>
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<p>16日15時からの「CATV発、地域”超”密着コンテンツの作り手に学ぶ、地域メディアの可能性」もユニークなセッションだった。ケーブルテレビの世界に、それまで地上波テレビで番組を作っていた制作者たちが参加し始めている。際たる存在が「電波少年」のT部長こと土屋敏男氏で、今年から愛知県豊田市のひまわりネットワークで「進め!豊田少年家族」という番組を制作している。また鳥取県の大山ケーブルの番組を、東京で番組制作に携わって来た貝本正樹氏が家族で大山町に移住して作っている。長崎放送で番組作りを長年やって来た大野陽一郎氏は長崎ケーブルメディアで、地上波ではできないドキュメンタリー制作に挑んでいる。それぞれ、地上波での経験を生かしつつも、ケーブルだから、小さなコミュニティ向けだからできる番組制作を発見しながら作っているようだ。ケーブルテレビの方々だけでなく、地上波の人々にもきっと役立つ話が聞けるだろう。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2396" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - BL-163 (アーカイブ中)</span> </a></div>
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<h3> </h3>
<h3>17日「フューチャーデイ」の2セッション</h3>
<p>17日13時からは私がモデレーターを務めた「配信サービスはVODの次に進むか」。U-NEXTの本多利彦氏とTVerの蜷川新治郎氏、FODの野村和生氏に登壇してもらい、2015年以来盛り上がって来た日本のVOD市場のネクストステップを議論した。U-NEXTはParaviを統合したが、だからと言ってTBS・テレビ東京以外の局ともローカルも含めて積極的に向き合っていくと明言していた。一方でTVerは現状の直行直帰型を滞留型にどう進化させるかを聞くと、蜷川氏はFASTのように開いたらすぐに番組が流れ始めるような要素を加えたい、とはっきり言っていた。野村氏はFODを何処かと統合させたりはせず単独で今後も頑張ると明確に宣言。それぞれ、強い言葉を引き出せたのではないかと思う。ぜひご覧いただきたい。</p>
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<div><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2398" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow"><span style="font-size: 18px;">コンファレンス詳細 - BL-172 (アーカイブ中)</span> </a></div>
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<p> </p>
<p>17日15時からの最後のセッションは異色の企画だった。「テクノロジー視点で放送業界の“ブループリント”を構想する」のタイトルで、業界の未来予想図を見出そうという意図。様々な公の会議に有識者として関わるクロサカタツヤ氏、TBSを昨年退職した放送技術の異端児・大吉なぎさ氏、NHK財団で主に欧州の放送技術を研究する武智秀氏が登壇し、NHK放送文化研究所の村上圭子氏がモデレートした。最初に3人のパネリストがプレゼンした後は会場の参加も含めてフリーにディスカッションする流れで、会場の閉会ギリギリまで使ってやりとりした。ディスカッションの実験としても楽しめるだろう。</p>
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<div><span style="font-size: 18px;"><a href="https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2399" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">コンファレンス詳細 - BL-173 (アーカイブ中) </a></span></div>
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<h3>所感:曲がり角を曲がった放送業界</h3>2023-12-11T06:33:34+00:00