テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年02月号

U-NEXTは日本のSVODをすべてまとめるのか?

2023年02月21日 14:29 by sakaiosamu
2023年02月21日 14:29 by sakaiosamu

2月17日、私のタイムラインでは何度もこのニュースが躍った。

2015年にNetflixが上陸して以来、日本には続々SVODプレイヤーが名乗りを挙げた。これについて、2017年には「淘汰が始まった」と気の早いメディアが書いていた。日経もその一つだ。

ゲオが撤退しただけで、ちょっと早計にすぎると筆者は感じたものだ。淘汰を言うなら、2023年の今だ。

12年で一区切りがついた日本のSVOD

ここで日本のVOD業界を振り返ってみよう。
まずSVOD以前、2000年代にTVODと分類される都度課金VODがまず起こった。と言ってもプレイヤーは少ない。AppleのiTunesStoreが映画やドラマのVODサービスを始めた。2006年にビデオ再生ができるiPodを発売し、それと同時に「LOST」などのコンテンツが購入できるようになった。これに前後して映像配信サービスを様々な事業者がスタートさせた。2010年公開の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE3」のDVD発売時に初めて同時に配信でも販売が開始され、かなりの売上になっていたのを記憶している。ただ、いま思えばまだまだ黎明期。DVD発売のついでのポジションだった。ほとんどのタイトルはDVDレンタルで見るのが主流で、配信されているコンテンツは少なかった。
2011年9月、Huluが日本でのサービスを開始した。定額のVODつまりSVODサービスが初めて日本でもスタートしたのだ。筆者はさっそく加入し、SONYのゲーム機PS3を通じてテレビで視聴しはじめた。SVOD生活の幸福を満喫したものだ。当時中学一年生だった娘はHuluのおかげで古今東西の映画を吸収し、すっかり映画好きに育った。
だがHuluは今ひとつ伸び悩んでいた。2014年4月、日本テレビがHuluの子会社化を発表、業界を驚かせた。以後、日本テレビの番組では何かとHuluが紹介されるようになる。
そして2015年、満を持してNetflixが日本上陸。タイミングを合わせてアマゾンプライムビデオも日本でサービスを開始した。
U-NEXTはそんな中、ある意味静かに成長していた。元々はUSENの宇野社長が2005年に始めたGyaOが母体。広告型のオンデマンド配信サービスだったが日本では早すぎたのか行き詰まり、一部はYahoo!に売られてGYAOとなった。このGYAOも今年3月でのサービス終了がつい先日発表された。
GyaOから生まれた定額配信サービスGyaO NEXTが2009年にU-NEXTと名称を変え、当初からテレビでの視聴を軸にコツコツ販売を拡大してきた。そこにはUSENの営業網が大きく寄与したようだ。2012年には主要テレビメーカーに内蔵され、テレビ受像機でのSVODサービスのポジションを確立。映画館との提携などBtoB連携をうまく活用して着実に伸びてきた。2015年の外資上陸を迎え撃つ体制が整っていたと言える。
国内テレビ局系ではフジテレビのFODが2008年に都度課金モデルでサービスを開始していたが、定額課金もメニューに加えた。そして2018年にはTBSとWOWOW、日本経済新聞グループによるPraviがスタート。2012年にスタートしていたKDDIのビデオパスが2020年にテレビ朝日と設立した新会社に事業を移行させTELASAもサービスを開始。在京キー局を母体とするSVODが出揃った。
こうしたレッドオーシャン化を経た末のU-NEXTによるParavi買収は、12年間の大きな区切りと言えるだろう。本当の淘汰と再編はこれからだ。どこがどうなるのか、まだわからないがテレビ局のSVODが続々できた末その一角が消えるのはどうにももったいない気持ちになる。

幻と消えたHulu軸のテレビ局連合

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