テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年04月号

目指すのは、サービスよりメディアなのか?〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(後編)

2023年04月26日 10:12 by sakaiosamu
2023年04月26日 10:12 by sakaiosamu

dTVからLeminoへのリニューアルについてのNTTドコモ・田中智則氏へのインタビュー後編をお届けする。前編未読の方はぜひそちらからお読みください。

変わったのは、名前だけではない〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(前編)

前編ではリニューアルしたサービスの内容について聞いたが、後編ではビジネス面と今後のビジョンについて聞いていく。そこでわかってきたのは、Leminoの目標は、サービスでありつつメディアになることだった。

無料モデルでAVODとして広告の受け皿にもなる

以下、「」内は田中氏の発言。
---Leminoは有料と無料が選べるハイブリッド形式ですね。

「おっしゃる通りです。まず無料で多くのお客さんに見ていただいて、もっと徹底的に見たいというお客様には有料会員になっていただけます。」

---僕は今日入会する時にクレジットカード情報は入れましたが、31日間無料とありました。そうすると、31日後にアラートが出て選ぶことになるわけですね。その時に無料で継続したいとの選択もできる。

「はい、広告付きのサービスにはなりますが、AVODのサービスに変えていただけます。」

---AVODの部分も興味深いのですが、アメリカのサービスでは、むしろ両方やってるものが増えてきている話も聞きました。当初からハイブリッドで行こうとのお考えだったんですね?

「そうです。無料版ではプリロールとかミッドロールでCMが出てくる形です。」

画像 オリジナルコンテンツにはカジュアルな番組も多い
©NTT DOCOMO, INC. / J Storm Inc.

---そうすると、有料サービスとしての会員収入と広告収入の2本立てで成立させていきたいということなんですね。これからだとは思うんですが、無料で広告もやりますよと言った時の代理店さんや広告主さんの反応は。

「一通り営業に出させていただいていますが、我々が想像していた以上に好感触で、非常に前向きに捉えていただいております。」

---正直今、地上波のCMが売れなくなっていて、またYouTubeよりプロフェッショナルコンテンツに入るCM枠の方がいいと言う広告主さんが増えている感じですね。

「GYAOさんがたまたまこの春でサービスをやめられたので、ご期待いただいてる部分は大きいかなと思います。」

FAST形式も真剣に検討、ギリギリまで悩む

---見ていて興味を持ったのがFNNオンラインっていうアイコンが出てきました。ニュースも見られるのですね。

「フジテレビさんとタイアップさせていただきました。ライブ性という意味では、今この瞬間に起こってることが皆さん非常に関心が高い。ライブコンテンツとは別に、ニュースも積極的に配信していこうと考えています。」

---僕はドラマや映画が好きで、毎晩一通りチェックするんですが、ニュースもやってほしいと思うことも多いです。VODサービスにニュースがあるといいのですが、意外にみんなやってない。ニュースはつけておいて他のことをする“ながら見”にはいいなと思います。最近FAST(Free Ad-supported Streaming TV)というサービスがこれから伸びるんじゃないかと言われています。ABEMAは事実上FASTですがそういう打ち出し方をしておらず、事実上日本にはまだないと言ってもいい。Leminoを立ち上げられる時に、FASTは検討されなかったでしょうか。

「検討には上がりました。特に若年層を中心にコストパフォーマンスを意識する層は無料への指向性が非常に強いと思ってますので。FASTも取り入れようという話はあったんですが、マーケットの状況を見ながら取り組んでいこうと、一旦見送ってます。」

---つまり一旦ローンチ時は見送ったけど、将来的にFASTもメニューに増やすか検討するかもしれないと。

「いろんな関係者、権利者も含めて考え方もあると思いますので、状況を見ながらと思ってます。」

---確かにおっしゃる通り、FASTをやるには著作権はじめコンテンツを提供してくれる側の状況が、やりやすい環境ではないですからね。逆に言うとかなり検討されたわけですね。

「そうなんです。サービス企画段階で、どういう方々が我々のユーザーになってくださるかと考えた時、コストパフォーマンスを重要視したお客様は非常にFAST指向は強いだろうと。コンテンツをダイジェストで見たいお客様も含めて。ただ、やっぱり権利的な問題が難しいかなと。もうちょっと言うと、うちのトップは絶対やりたいとの意向があったのですが。今の市場環境を見て、いきなりやることが本当にいいのかとここでは断念しました。」

---なるほどー、さざ波というか、摩擦というかも起きかねないですしね。そこがこの国の配信サービスの難しいところかなと思います。

テレビ局との共同制作も。IP開発、海外も視野に

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