テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年04月号

変わったのは、名前だけではない〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(前編)

2023年04月26日 11:31 by sakaiosamu
2023年04月26日 11:31 by sakaiosamu

2015年にNetflixとAmazonプライムビデオが日本に上陸してからにわかに活気づいた日本のSVOD市場。そのタイミングに合わせるかのようにNTTドコモが立ち上げたのがdTVだった。その前はdビデオという名前だったサービスにわざわざ「TV」とつけたことにはテレビ受像機で見せたいとの意図があり、専用の外部機器も発売した。私はその発表イベントに取材し、力の入れ方に圧倒されたのを覚えている。
ところがdTVは、ドコモとエイベックスの共同事業だったのが、エイベックスが引いて行ったのと共に勢いを失っていた。私も解約してしまい、このままだとサービスをやめてしまうのかとも受け止めていた。
ところがこの4月12日にdTVをリニューアルし、Leminoの名で再びサービスに力を入れていくと聞いた。とは言え、正直さほど期待は湧いてこない。SVODはまだ伸びるからもう一度やっとくか。そんな感じではないか?
ただ、サイトの見た目や伝わってくる匂いにどこか斬新さも感じた。そこで担当者への取材を願い出た。サービスが始まってちょうど一週間経った4月19日、NTTドコモ・映像サービス部担当部長の田中智則氏にお話を伺った。
インタビューを進めるうちに、私の冷めた気持ちが、大きな期待感へと変わっていった。これは面白いサービスになりそうだ!私の膨らむ期待をみなさんにも共有いただくために、そのほぼ全文を前後編に渡ってお届けしたい。

画像 NTTドコモ スマートライフカンパニー 映像サービス部 映像サービス担当部長 田中智則氏

目次

  1. これまでとの違いは、オリジナル拡充と作品の選び方
  2. リニア感も重視しテレビでの視聴を意識
  3. この夏の目玉は井上尚弥選手のビッグマッチ
  4. プラスワンを狙って大人と若者それぞれをターゲットに

これまでとの違いは、オリジナル拡充と作品の選び方

以下「」内は田中氏の発言
---新たにリニューアルに至った経緯から、まず伺わせてください。

「Netflix、Amazon始め様々な競合の映像サービスが登場する中で、dTVが相対的に厳しい事業環境に置かれ、立て直しの検討を始めました。dTVの単純なリニューアルではユーザーに新しいものとして訴えかけるのが難しい。名前も含めて新しいサービスとして、抜本的にアプリを作り直しました。」

---ここが変わったというところを少しずつ挙げていただけますでしょうか。

「まず、名前に関して少しお話ししますと、Leminoはドコモに近しい名前ではなくdがつきません。ドコモのお客様だけではなく、他のキャリアの方にもぜひ使っていただきたいとの思いです。dTVの時代から課題感を持っておりまして、 どうしてもdがつくとドコモユーザーしか使えないサービスだと思われがちでした。

---dTVでも、他のキャリアでも使えますとアピールしておられましたけど、やっぱりdがつくとイメージがついてしまいますね。思い切ってdを外したのは英断だと思います。

「これまでとの機能面での違いですが、1つ目はコンテンツのラインナップを大きく変更したことです。dTVでもオリジナルに取り組んではいましたが、基本的には外部調達コンテンツの総合編成型ラインナップでした。Leminoではオリジナルコンテンツの拡充に力を入れていきます。特にライブ系のコンテンツは重視し、そこがまず大きな違いになります。コンテンツ数に関してもdTVよりパワーアップしています。機能面の2つ目は“検索性”です。単純にタイトルや出演者で検索できるだけでなく、コンテンツを見た後の感情にフォーカスして探し当てられないか。そこからUXを開発しました。

---感情と言いますと、具体的には?

「コンテンツを見た後に共通して感じることがあると思います。例えば、興奮した、ワクワクした、ドキドキした、 非常に悲しい気持ちになったとか、もしくは元気になったとか。そういう様々な感情を軸にコンテンツを探せるようなキーワードを設定しています。具体的には感情をスタンプにして、それを押すと当てはまるコンテンツが出てくる仕組みです。例えば『わくわく』のスタンプを押すと、当てはまるコンテンツがリストに出てきます。『ハラハラ』を押しても同様です。

画像 Lemino操作画面よりキャプチャー

---なるほど、スタンプを押すとリストが出てくるのは面白いですね。

「この感情はお客様ご自身でも入れていただけます。コンテンツを見ている時に、感情スタンプが押せる。それが蓄積していって、より精度の高いレコメンドができるようになる仕組みです。」

---ワクワク度何パーセントという数値もついてますね。そうするとワクワクは15パーセントだけど、興奮は40パーセントといった組み合わせでも表示されるのですね。それはとても面白い!私自身、映画やドラマが大好きで、毎日いくつもの配信サービスをのぞいてみますが、それぞれたくさんありすぎて選べなくなっています。おすすめというだけでは物足りず選べない。これは世界初の試みかもしれませんね。

「もう1つの特徴は、SNS要素を取り入れたサービス設計にしており、他のユーザーをフォローすることで繋がりができることです。トップ画面が2つあり、『おすすめ』の方は普通に作品を紹介する画面ですが、もう1つの『エモートライン』は自分がフォローしてるユーザーが今どういうコンテンツを見ているのか、どういう感情で見ているのかがタイムラインとして出てきます。私が境さんをフォローすると、境さんが見ているコンテンツが私に紹介されたり、境さんがレビューを書かれると案内が来て、こんなコンテンツをこんな風に見てるとわかる仕組みになっています。先ほどのお話にもあったように、コンテンツを探すのが大変との課題に我々はアプローチし、自分で探すよりも、自分の友達や家族から紹介されたものは見やすいと考えました。このサービスではそれを実現しようとしています。」

---この中にSNSがあると言ってもいいわけですね。

「そうですね、それに近しい機能を実装しています。」

---なるほど、それも本当によく思うことで、配信に限らず映画を見終わった後でも、みんなどんな感想だったのか知りたいですし、同じ感想を持った人と共有したいです。それが実現できるのはいい!Filmarksというレビューアプリもよく使ってますが、 感覚的にはそれが入ってるようなものですね。

「すでに非常に多くのレビューを書いていただいています。」

---この人 たくさん見てるし自分と共感できそうだとフォロワーが増えると、承認欲求が満たせてますます書き込みたくなります。

リニア感も重視しテレビでの視聴を意識

 
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