さる7月1日、Zoomウェビナー「アフターコロナ テレビ局の選択肢」が開催された。境治の企画・進行のもと、この6月いっぱいをもって南海放送の会長に退いた田中和彦氏と、本Media Borderでもおなじみのメディアストラテジスト・塚本幹夫氏がテレビ局の今後について熱く議論した。飛び入りゲストも何人も登場し、内容の濃い2時間となったこのウェビナーをレポートする。
今回のウェビナーは、2月25日に開催された「地域とテレビの未来を考えるシンポジウム in 福岡」の続編にあたる。コロナウイルス禍を受け、しばらく間が空いた上でのオンライン開催となった。南海放送の田中氏にはそのときにも登壇いただいた。「手枷足枷がなくなったので、言いたい放題言いたい」と意気軒昂だ。
コロナウイルス禍における日本のテレビ業界
ウェビナーは、まず塚本氏からコロナ後のテレビ局の選択肢についてプレゼンを行い、それに対して田中氏や参加者を交え議論していくという構成だ。塚本氏は、「これからお話することは新しいことではない。一部の識者が話してきたことと重なる」としながら、放送局(フジテレビ)出身者の発言であることを意識してほしいと前置きする。新型コロナは、放送局に前代未聞の影響を与えている。撮影、収録ができず、放送を支えるサプライチェーンが切れてしまった。『麒麟が来る』『SUITS』『半沢直樹』という各局を代表するドラマはスケジュール変更を余儀なくされている。バラエティはアーカイブの利用やリモート収録などで食いつないでいる状態だ。スポーツイベントは中止になり、編成・営業への影響は大きい。
「Stay Home」の巣ごもり需要で、テレビの視聴率は上昇した。しかしスポット広告は大打撃を受けている。5月は平年の6割と言われた。リーマンショックに襲われた2009年総広告費は前年比88.5%、テレビは89.8%となったが、もし今年のスポットがこのまま前年比6割で推移すると、仮に100%のタイム収入を確保してもテレビ広告の総売上は8割に届かないことになる。スポット収入の漸減傾向が一気に加速してしまった格好だ。TBSの決算資料によれば、外食・サービス、交通・レジャー、自動車・輸送機器等、上位業種の落ち込みが激しい。
テレビの多角化として期待されている映画やイベントは、「3密」を避けるために大打撃を受けているは言うまでもない。この八方ふさがりと言える状況は、根本的に放送局の経営を問い直す時期が来ていることを示している。
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