テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年08月号

Netflix、日本での料金体系を発表。同時にソフトバンクと販売提携!

2016年01月05日 01:32 by sakaiosamu
2016年01月05日 01:32 by sakaiosamu

Netflixは、9月2日のサービス開始を前に、料金プランの内容を発表した。ソフトバンクの発表会で公表された。日本でいくらではじめるのか、気になっていた関係者は多いが、ようやく明らかになった。

まず料金プランは本国同様3タイプだ。

今回発表された価格でもっとも特徴的なのがベーシックプランで、米国だと約980円のところを650円とグンと低価格を設定している。エントリープランとして思い切って下げてきた戦略価格だろう。同時視聴デバイスは1つのみ。これは「一度に視聴できる数」という意味なので、家族別々のスマホで同じ時間に使えない、ということだ。

スタンダードはHD画質で同時視聴2デバイス。ベーシックで試してもらって、アップグレードしてもらうことを想定したプランだろう。テレビをメインに視聴するならHD画質は必須だろうし、家族で使うと同時視聴2は便利だ。リビングのテレビで夫婦が映画を楽しむ間に、息子は自室でスマホ上でアニメを観る、という使い方も可能だ。

プレミアムは4K対応がポイント。新しいテレビを買った人が、せっかくだから4Kコンテンツを楽しみたい時、リモコンのNetflixボタンを押せばいい、という想定だろう。これはこれからじわじわと効力を発揮しそうなプランだ。

さてこのNetflixの料金プランと、他のSVODサービスの料金を比べてみよう。

このように、ベーシックはdTVより高いが、スタンダードはhuluとほぼ同じで、プレミアムはU-NEXTより安い、ということになる。ベーシックを650円にしたのは、やはりdTVとの対抗上なのだと感じられる。

そしてさらに本日8月24日、驚くべき提携が発表された。ソフトバンクがNetflixの販売窓口となるというのだ。

業界も世間もびっくりする発表だったが、この提携はどう受けとめるべきだろう。私の分析をここから書いておきたい。


●ソフトバンクという日本での”売り手”を獲得したNetflix(ここからは登録読者のみ)

 私はNetflixの日本進出には大いに期待するひとりだが、同時に懸念もあった。それは、「日本では誰が売るのか」という点だ。

もちろん、アメリカでは誰が売ってきたかといえばNetflix自身だった。だがそれは、内容を伝えればおのずから売れるサービスだったからだ。

よく知られているように、アメリカではテレビを見るのにケーブル事業者と契約が必要で、5000円とか1万円とかを毎月払わないとそもそも視聴できなかった。さらに、HBOやAMCなどのケーブルチャンネルが追加料金1000円程度を払ってもらうために、オリジナルドラマを大きな予算を投じて制作していた。普通のチャンネルにはないドラマを、追加料金を払って視聴する文化が成立していたのだ。

だからNetflixが新たに登場しても、HBOやAMCなどと違ってチャンネルではなくネットサービスだけど、テレビをネットにつなげば同じような追加サービスとして楽しめると受け入れられた。それに放送ではなく配信なので好きな時に視聴できるし最近はオリジナルの面白いドラマもやってる。そんな風に、アメリカ人の元々の生活にすっと入っていけたのだ。

これに対し、日本ではDVDレンタルのほうがなじみがある。チャンネルを追加する文化もない。そんな中にNetflixがやって来て、テレビをネットにつなげば楽しめますよと言われても、何が何やらわからないだろう。理屈でわかったとしても、自分の生活の中に溶けこむイメージが持ちにくいと思う。

もっと、ていねいに説明したり、啓蒙したり、場合によってはネットにつなぐ作業もやってあげたり、そんな”売り手”が必要なのだ。Netflixはネット上でのプロモーションには長けているが、リアルな場で売ってくれる誰かが必要だった。

dTVは500万人の会員数を誇るが、それは、ドコモショップという強い販売力の”売り手”がいたからだ。huluは2011年に登場して3年間でやっと60万人だった。”売り手”がいなかったからだ。2014年からは日本テレビが疑似的な”売り手”となった。それでも、一年間で40万人増えて100万人だ。リアルな場で売り手のいないhuluは今後、苦労するかもしれない。

Netflixは、”売り手”がいない壁に、9月2日以降サービスを開始してから突き当たるだろう。私はそんなイメージを持っていた。だが、その前に彼らは自ら売り手を獲得してしまった。今日の発表のかなり前から交渉を始めていただろうと想像すると、やはり彼らのしたたかさに感心するしかない。

おそらく、日本でのiPhoneの展開がヒントになったのではないだろうか。よく言われるように、日本だけiPhoneは異様に売れている。それは最初の頃のソフトバンクの独占的な売り方が功を奏したからだと受けとめたのかもしれない。

ただ気になるのは、ソフトバンクはもともとUULAという動画配信サービスを展開していた。100万人を超える会員を擁しており、そっちはどうするのだろうか。そしてこれはサービスの中身はエイベックスが運営していた。エイベックスはドコモとdTVを運営しているのだが、ソフトバンクがNetflixと提携するとかなりややこしい状況になる。どう整理していくのか、UULAユーザーはどうするのか、見守っていきたい。

いずれにしろ、Netflixが日本での売り手を手に入れたことにより、サービスイン当初からの会員獲得が急ピッチで進むと想像できる。また、9月には実はもうひとつ、大きな勢力のSVOD参入の情報がある。

これは私が想像していた以上に、日本でのSVODサービスがホットになるのかもしれない。それは既存のメディアマップにどんな影響を与えるのか。今後ますますアンテナを張り巡らせて追っていきたいと思う。

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