テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2019年11月号

事件への対応〜テレビは神経質になりすぎていないか〜(山本英治氏寄稿記事)

2019年11月21日 10:35 by sakaiosamu
2019年11月21日 10:35 by sakaiosamu

Introduction
毎日放送の社員でTwitter上では「ほなね爺」の名で知られる山本英治氏による久々の寄稿。前回は「視聴率という厄介な代物」だったが今回はタイムリーなテーマだ。タレントや役者の不祥事にテレビはどう対処すべきか?考えたり議論したくなる文章だと思う。ぜひ読んでコミュニティで感想など書き込んでもらえればと思う。

 

 

書き手:毎日放送・山本英治

 女優の沢尻エリカが逮捕された。来年の大河ドラマの出演が決まっていて、初回から出演してかなり撮り終えており、今からでは撮り直しが間に合わないとか。チュートリアルの徳井義実に続いて NHK は災難続きだとか。

そんなニュースを目にしながら、もういいんじゃないかな、と思うのである。つまり、撮り終えた部分はそのまま放送してもいんじゃないかな、と。

僕が放送局なんぞに務めているからではない。会社に入る前、単なる視聴者だった頃から、と言うか、すでに少年時代から僕はずっとそう感じてきた。

罪を犯したかどうかということと、その人の演技が素晴らしいかどうか、その人の漫才が面白いかどうか(これは主に横山やすしを念頭に置いている)は関係がないのであって、演者として良い仕事ができる(できた)のであれば、それをお蔵入りにすることはないではないか?

──と、僕は中学生の頃から、中学生らしい一途な正義感を以てそう感じ、憤ってきた。

その一方で、思えば昔はおおらかなもので、「この番組は○月○日に収録しました」というスーパーを出して放送しているケースも多々あった。

それは確かに「いや、これを撮ったのは事件が起こる前ですよ」「いや、この番組を撮ったときにはそんな人だとは誰も知らなかったんです」という局の言い訳である。でも、それを許さない視聴者もほとんどいなかったのではないかと思う。

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

ある放送局OBから放送業界へのメッセージ

2023年07月号

「放送の地域性」の議論の行く末がちょっと不安になった、ある委員会について

2022年06月号

「テレビ離れ」という厄介な発想

2022年03月号

読者コメント

バックナンバー(もっと見る)