テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年09月号

ソーシャルテレビ推進会議・8月定例会レポート 「テレビ番組のtwitter分析ツール」と「テレビができること、やってないこと」

2015年09月25日 14:31 by sakaiosamu

8月25日、ソーシャルテレビ推進会議の8月定例会が開催された。一カ月経ってしまったが大変貴重な発表だったので、あらためてここでレポートをしておきたい。

なお、Media Border登録読者はこの勉強会に参加できるので、お申し出を。月に一回のペースでこうした定例会を行っている。(発行者の境治まで連絡をsakai@oszero.jp https://www.facebook.com/sakaiosamu)

 会場としてお借りしたのは、ソーシャルマーケティングのアライドアーキテクツ社・セミナールーム。素敵な空間でいつもゆったり使わせていただいている。

今回のメニューは2つ。データセクション社の伊與田孝志氏による「ソーシャルテレビ分析ツール・TV Insight」のプレゼンテーション。そして角川アスキー総研・遠藤諭氏からは「テレビができること、やってないこと」のタイトルで講演をしていただいた。

●「ソーシャルメディア分析サービスTV Insightから見える番組受容」データセクション伊與田孝志氏

前職のニフティ時代から当勉強会に参加し、テレビ番組に関するtwitter上のつぶやきを追求してきた伊與田孝志氏は、昨年データセクション社に移籍し、これまでの成果を新たに生かしている。ニフティ時代に開発したテレビ用twitterアプリ「みるぞう」での成果を、新たなアプリ「みるもん」として世に送り出すとともに、そのエンジンを活かした分析ツール「TV Insight」も開発した。この発表では、「TV Insight」から見えるテレビ番組と視聴者の関係をわかりやすく話してくれた。

「TV Insight」については、本誌でも前に記事にしている。

→ソーシャルテレビ分析ツールTV Insightで人気番組のツイートを見てみた!

上の記事も、伊與田氏への取材を元に書いているので、発表内容の中で重なる部分はここでは割愛する。

伊與田氏の発表の中で興味深かったのは、TV Insightの説明の前段部分だった。

伊與田氏はニフティ時代に「みるぞう」についてテレビ局に積極的にその活用法などを説明して回っている。このたび、「TV Insight」の説明も各局にあらためて行ったのだが、その間に局側の反応もかなり変わってきているというのだ。

「みるぞう」が世に出たのは、2012年でまさに”ソーシャルテレビ”の言葉が業界で言われるようになった頃。その頃は、「twitterで視聴率が上がる?」との期待があった。だがその期待はいささか過剰すぎるとわかり、盛り上がりは冷めていった。

そこからさらに、あらためてtwitterへの興味が高まってきているが、むしろ冷静に、何に利用できるのか、どうとらえればいいのかを、みきわめながらの興味ではないかと伊與田氏は言う。また、新しもの好きの制作者の個人的な興味から、より組織的な活用法へのシフトも見受けられるという。

さらに伊與田氏は、テレビ番組に関するtwitterは数値的な解釈がなかなか難しく感じているとも言う。それよりも、実際に視聴者が何をつぶやいたか、何に反応しどう盛り上がったのかなど定性的な分析が有効ではないかと見ている。「TV Insight」もそういう見方をしてもらえるとよいのではと話していた。

確かに、例えば久々の正統派ラブストーリーだった月9『恋仲』も、twitterでかなりの盛り上がりを見せ、局側からの仕掛けも成功したようだ。視聴者の心がどう揺さぶられているのか、そしてそれを見てこちらからどう揺さぶるか、そういったtwitterの使い方が今後重要かもしれない。

→データセクション社WEBサイトはこちら


●「テレビができること、やってないこと」角川アスキー総研・遠藤諭氏

 2つ目の発表は、角川アスキー総研の取締役主席研究員、遠藤諭氏にお願いした。

当勉強会では、遠藤氏に年に一回程度のペースで講演をお願いしてきた。遠藤氏は、「月刊アスキー」の編集長を長年務めるなど、IT界の見地から、テレビというメディアについても発言してきている。中でも2012年4月の「戦後最大のメディアの椅子とりゲームがはじまっている」と題した記事は、放送業界へも大きなインパクトを与えて多くの人に読まれた。3ページ目に出てくるチャートは、筆者も多くの場で使わせていただいた。

→スマホの普及&テレビ離れで、戦後最大のメディアイス取りゲームが始まっている

角川アスキー総研では、毎年大規模なメディア調査を行って発表している。前半ではその中から興味深いデータを披露し、最新のメディアと生活の状況を語ってくれた。

 

 さて非常に内容の濃い、多岐に渡る講演内容だったのでここですべてを書き記しにくいのだが、重要だと思われる部分を解説しよう。

まず、テクノロジーとリテラシーの関係を、いくつかの分野についてグラフで示したパート。これはいかにも”遠藤流”で、それぞれ綿密な数値を背景にしたわけではなく、遠藤氏の言わば”目分量”で作成されたもの。でも説得力がありわかりやすいのが、さすが遠藤氏だ。

例えば電子メールは、早い段階で技術のやさしさに多くのユーザーのリテラシーが追いついたので十分に普及した。

同じようにiPod、Apple Watch、Go Pro、iPhoneについて見てみるとこうなる。

例えばAppleWatchは、まだ技術のやさしさがユーザーのリテラシーの範囲まで下がっていないので大きく普及できない、ということだ。

ではスマートテレビはどうだろう。遠藤氏が作成したのがこれだ。

参加者にはテレビ関係者が多いので「すいませんイメージです」と気をつかって断り書きがついている。テレビは、技術が進歩し続けており、ユーザーのリテラシーが上がっても追いついていない、というのが遠藤氏の見立てだ。

これに対し、遠藤氏の提言がこれ。

いま新聞のテレビ欄はすっかり見られなくなった。EPGを見てチェックするからだ。そこには、いまできることのヒントがある。新しいエコシステムをつくる土台は、こうしてほしいとユーザーが感じていること、あるいは別のツールを使って実際にユーザーがやっていること。そこに広告のシステムをどう構築できるか、が大事ではないか。そしてこのチャートを見せてくれた。 

つまり、テレビは”いままでユーザーがやってきたこと”を具現化するだけでいいのではないか、と言っているのだ。それさえできていないし、それをやるだけでずいぶん使いやすいデバイスになるというのが遠藤氏の主張。

遠藤氏の話を聞いて私として感じたのだが、番組を送り出す側とハードを製造する側で新たに議論しできることがたくさんあるのではないかということだ。つまりテレビ局とテレビメーカーがもう一度テレビというものを事業構造から組立て直すことで、いろんな可能性が見えてくるのではないか。若い視聴者が戻ってくる可能性でさえ、再構築で出てくる気がした。

遠藤氏によるこの問題提議は、今後も考えていきたいと思う。皆さんもぜひ頭に留めておいてほしい。少なくともNetflixボタンとはそういう次元のことであり、彼らにできるなら日本の業界でできることも多々あるはずなのだ。

遠藤氏のこの講演内容に興味のある方は、角川アスキー総研に直接コンタクトを。

 →角川アスキー総研WEBサイト

→週刊アスキーの遠藤氏コラム「東京カレー日記ii」

 

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