テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年02月号

ソーシャルテレビ推進会議・1月定例会レポート「ジャーナリスト小林恭子氏・講演」「ソーシャルテレビ2015プレイバック」「CES2016ホットレポート」

2016年02月05日 19:48 by sakaiosamu
2016年02月05日 19:48 by sakaiosamu

2月最初の記事は、筆者が運営する勉強会・ソーシャルテレビ推進会議1月定例会合の様子をレポートしよう。 いつも月末最後に回してしまっていたが、開催後できるだけ早くお伝えすべきだろうと考え、今月は最初にお届けする。

なお、Media Border登録読者はこの勉強会に参加できるので、お申し出を。月に一回のペースでこうした定例会を行っている。ちなみに今月は2月17日夜に六本木で開催する。(発行者の境治までご連絡を sakai@oszero.jp https://www.facebook.com/sakaiosamu)

●新著『 フィナンシャルタイムズの実力』より(ジャーナリスト小林恭子氏)

1月の会合は年初恒例となった2つのプログラムの前に、英国在住のジャーナリスト小林恭子氏に講演をお願いした。小林氏はいつも年末に日本に戻られるので、そのタイミングでお話をお願いしてきた。今回は、書籍『フィナンシャルタイムズの実力』を1月21日付で出版されたばかりということで、その中からお話いただいた。

フィナンシャルタイムズはご存知の通り、英国の経済紙。これを日本経済新聞社が買収したことが大きな話題になった。それを受けての1月の出版はかなりスピーディだと思う。

フィナンシャルタイムズは言わば英国版の日経ではあるが、価格は高く1部500円程度、月の契約だと約1万5千円する。読者層はかなりの高額所得者なわけだが、一方でデジタル化に早くから取組み成功している。約73万部の購読部数のうち紙版は22万部。デジタル版のほうが多いわけで、ここまでの成功例も他にはないだろう。

小林氏の話は同紙のデジタル戦略を多岐に渡って紹介したのだが、印象的なのは「オーディエンス」という言葉が何度も出てきたことだ。オーディエンス分析チームがあって、どの記事がどう読まれるかなどを緻密に解析するのだ。そのうえで、「読者ひとりひとりとつながる」考え方で編集されるのだという。

これらは今後のテレビを考える上でも大いに参考になりそうだ。

『フィナンシャルタイムズの実力』はすでに書店に置かれており、気軽に買うことができる。この機会にぜひ読んでみてもらいたい。また小林氏は今月24日に東京で、27日には大阪でそれぞれイベントに登壇するのでここで紹介しておきたい。

→2月24日「メディア放談:これからのジャーナリズムに僕たちは何ができる? @神保町EDITORY」

→2月27日「ヨーロッパのメディアから見る日本メディアの異常 @スタンダードブックストア心斎橋」

両方とも面白そうだ。興味ある方はご参加を。

 

●ソーシャルテレビ2015プレイバック(データセクション・伊與田孝志氏)

続いてデータセクション社でテレビ番組のtwitter分析ツール「TV insight」を担当する伊與田孝志氏にソーシャルテレビの2015年を振返るお話をお願いした。伊與田氏はこの勉強会起ち上げ時からのメンバーで、このソーシャルテレビプレイバックは年初の会合の恒例になっている。

ただ今年の発表内容は、これまでと一味違っていた。過去には、どの番組でtwitterがどれだけ盛り上がったかなどを中心に発表してくれていたのだが、今年はもっと理論的、概念的に”ソーシャルテレビ”の現状を解説した。

そのうえで、テレビ局のtwitter活用を「商品(番組)そのものについてのインサイト分析」「商品利用者のプロファイル分析」「プロモーション/コミュニケーション」「情報検出」の4つに分けて説明した。

 

例えば主婦向け番組のtwitterを分析することで、主な視聴者が”どんな主婦か”を解析し、営業活動に役立てることができる。また報道の現場で、twitterから事故や事件の現場の情報をリアルタイムに検出するシステムも動いているという。

"ソーシャルテレビ"が新しいステージに入っている、というのは8月の定例会でも伊與田氏が語っていたことだが、この発表ではそのさらに具体的な話を聞くことができた。こうした活用は、2016年もさらに進んでいくのではないだろうか。

●CES2016ホットレポート(江口靖二事務所・江口靖二氏+Google中谷和世氏)

最後に、これも年初の定例会で恒例になってきたCESレポートを、コンサルタントの江口靖二氏にお願いした。年明けにラスベガスで開催されるCESは、世界中の注目を集める家電の最新情報が集まるイベントだ。 

ただ、今年のCESは大きく様変わりしたことが明らかに感じられたそうだ。象徴的なのが主催団体の名称変更だ。"Consumer Electronics Association"だったのが"Consumer Technology Association"になった。つまり、家電から技術にテーマがリセットされたに等しい。日本の家電イベントCEATECでも”テレビの存在感の後退”が言われてきたが、CESではそもそも家電の展示会でさえなくなってきたのだ。昨年も"IoT"がクローズアップされたことが話題になったが、今年はさらに進んで、まるでテクノロジーのベンチャーのイベントのようだったという。

江口氏の話は、CESを離れトレンドの分析と予測に入っていった。ソーシャルの動向を解説し、その中でキーになるコンテンツが写真から動画、そしてライブ動画にシフトしつつある。twitterとPeriscopeの提携が注目される中、日本でもライブ動画は鍵になりそうだと予測を述べた。

江口氏の話を引き継いで、Googleの中谷和世氏が再びCESについて発表した。実は同氏は会合の数日前に連絡をしてきて、自分もCESについて発表したいと名乗りを挙げてくれていた。初めてのCES参加だったそうで、その興奮冷めやらぬレポートが楽しかった。

VR、ドローン、3Dプリンターについて見聞きしたことをレポートしてくれ、その最新の驚くようなテクノロジーを自ら体験した様子を生々しく語ってくれた。VRでアートを楽しむようにバーチャルな造形の体験や、人間が乗れるドローン、3Dプリンターで作ったスニーカーの話などを喜々としてレポートし、何より中谷氏自らが楽しかったことがよく伝わってきた。

 

1月も内容の濃い充実した定例会となった。2016年も、毎月の開催を予定しており、毎回の充実を図りたい。参加希望者は気軽に連絡していただきたい。

 

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