テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年04月号

ソーシャルテレビ推進会議・2月3月定例会レポート「ツイキャス」「韓国レポート」「パナソニックとリクルートのコミュニケーション戦略」

2016年04月08日 18:27 by sakaiosamu
2016年04月08日 18:27 by sakaiosamu

MediaBorderと連携して開催している勉強会「ソーシャルテレビ推進会議」は毎月定例会合を行っている。この記事では、2月と3月の会合の様子をまとめて簡単にレポートしよう。

まず2月の定例会合は、17日に六本木の日本マーケティング協会・セミナールームをお借りして開催した。

●2月発表(1)「パーソナルライブ配信サービス・ツイキャスのご紹介」 モイ・丸吉氏

まず最初に、ツイキャスについてモイ社の丸吉宏和氏が、西村顕一氏とともに発表した。ツイキャスについては、1月号で記事を書いているので、そちらも参照されたい。

ライブ配信とは、コミュニケーションだ!〜ツイキャスの運営会社モイを取材した〜

ツイキャスは1000万人を超えるユーザー数と、その大半が若者であることが特長だ。そしてスマートフォンがあれば誰でもカンタンに映像配信ができる。その気軽さで、若者たちの配信が絶えることはない。若者たちの日常生活に溶けこんだサービスだといえるだろう。

さらにフジテレビの昨年夏のドラマ『恋仲』で、出演者の太賀さんと大原櫻子さんによるコメンタリー配信が行われたことも紹介された。テレビ番組の若者向けの盛上げ策としても有効活用できそうだ。

なお、2月の勉強会の模様は、試みとしてツイキャスで配信された。「合言葉」が必要だが、MediaBorder登録読者には伝えているので、活用してほしい。

→ソーシャルテレビ推進会議・2016年2月定例会ツイキャス配信映像

●2月発表(2)「韓国での放送サービスのポジショニングあれこれ」テレビ朝日・岩田氏

2月の発表、2つ目は韓国の放送事情を、先日同国を訪問したテレビ朝日の岩田淳氏に発表してもらった。同氏は韓国に駐在していた時期もあり、同国事情にはもともと詳しい。今回はその最新の状況を解説してもらった。

韓国のテレビは「直接受診率」がわずか3.6%だという。つまりほとんどの家庭がアンテナで電波を受信するのではなく、通信によりテレビを視聴しているのだ。テレビと人びとの関係が日本とは根本的に違っている。基本的にテレビはオンラインで見るもので、VODも当たり前。だから録画視聴はほとんどしないそうだ。

各テレビ局は自社の番組をいつでも視聴できるようアプリなどを整えている。現地で撮影した映像を見せてくれたのだが、そのアプリを使ってカンタンに番組がオンデマンド視聴できる。それが当たり前なのだ。

さらに、Wi-Fi環境も充実しており、建物の中だけでなく、都市のあらゆる場所でどこでもWi-Fiにつながる。携帯電話の4G環境を整える前に、すでに街のWi-Fi化が実現していたのだ。ネットワークとともに映像サービスが行き渡っている。

一方、日本の放送環境はどうだろう。岩田氏からはそんな問いかけもあった。少し前までは無料広告モデル一辺倒だったのが、いまはタイムシフト視聴が当たり前になり、VODも出てきてデバイスも多様化している。新しいビジネスモデルへの模索を急がねばならないのではないか。

韓国は新しいビジネスへのトライアルは旺盛だが、意外にもビジネスモデルはできておらず儲かっているわけでもないそうだ。あとから考える、という姿勢だそうで、そういうのびのびした感覚は学ぶべきものがあるのかもしれない。

 

さて続けて3月の会合もレポートしよう。3月30日にスマートニュース社のセミナールームをお借りして開催した。

●3月発表(1)「リクルートが考えるTV×動画×ソーシャル事例と戦略」リクルートジョブズ金井統氏

3月は、偶然企業によるコミュニケーション戦略の話が2つ重なった。内容的に相関性も高く、合わせて聞くと大変ためになる内容となった。

まず、リクルートジョブズでタウンワークのプロモーションを担当する金井氏が、最新の事例をお話ししてくれた。

非常に面白かったのが、いちばん最初に「過去の失敗例」を赤裸々に語ってくれたことだ。非常にエネルギーもコストもかけて製作したWEB動画が期待した再生数にまったく達せず、失敗に終わった。そうした失敗を積み重ねることで様々な学びを得て、逆に最近の成功例に繋がったという。

商品から遠い面白い動画を作るのではなく、自分たちのコンテンツそのものを面白くする。そんな考え方で取り組んだのが「激レアバイト」だ。バイトという商品自体をコンテンツ化することで非常に多くのアクセスと、コンバージョンに繋がった。

金井氏が何度も見せてくれたのが、"ファネル”だった。日本語に訳すと"漏斗"にあたる言葉なのだが、マーケティングでは昔からよくこのファネルが使われてきた。最初に興味を持ってから商品購入に至るまでに徐々にターゲットとして絞り込まれるので、下に行くほど細くなる形が"漏斗"に似ているのでこう呼ばれる。

動画を製作して置くにしてもそれがファネルのどの部分に役立つことなのか、きちんと整理して行わないと効果が出ない。金井氏の話からは、面白いことをやって人目を引くことと、ファネルのような考え方を冷静に組み立てることの両方が大事なのだとあらためて感じさせられた。

●3月発表(2)「パナソニック家電製品の動画活用・考え方の大転換」パナソニック木村和世

3月2人目の発表は、パナソニックの動画戦略を木村氏に話してもらった。木村氏については、MediaBorder3月号で取材している。

「テレビCM中心」から「テレビも含めたデジタル」へ〜パナソニック・木村知世氏が語る企業コミュニケーション最前線〜

詳しい内容はこの記事と重なる部分も多いので、あらためて読んでもらうといいだろう。

木村氏は、木村氏は、広告宣伝に関わるメンバーとともに、アメリカのソーシャルメディア企業をひと通り訪問して研修した。これまでマスメディアだけの仕事をしてきたメンバーも現地で直接ソーシャルメディア企業に接することで、大きく意識が変わったという。

戦略のポイントは、これまでのテレビCM中心の考え方から、動画を各メディアでどう活用するかそれぞれ考えるという、発想の転換だ。

それによっていままでにない多様な効果をもたらした。例えばこれまではPCによるアクセスが多かったのが、見事にスマートフォン中心に入れ替わった。あるいは、洗濯機を買ってくれたユーザーが、Instagramで自分の家の洗濯機を投稿してくれたという。白物家電が、"素敵なライフスタイル”の一環として受けとめられた証だろう。

パナソニックの戦略である、機能訴求を共感訴求に変える狙いが見事に反映されたと言えそうだ。

さて、リクルートジョブズ金井氏と、パナソニック木村氏の話には、共通する部分が多かったのも面白く感じた。

以下はお二人の”まとめ”のスライドだ。

金井氏の「今を捉える」と木村氏の「モーメントへ」というのは、ほとんど同じ話だ。「今この瞬間に何が人びとの心を捉えるか」それがコミュニケーションで大事だ、と言っている。「今」をとらえられれば、バズるのだ。

他にも、お二人の話には共通点が多く、企業コミュニケーションの最先端は会社が違っても似ているのかもしれないと感じた。

この回の会合もツイキャス配信したアーカイブがあるので、興味がある方はぜひ直接確かめてみてほしい。

→ソーシャルテレビ推進会議・2016年3月定例会ツイキャス配信映像

 

この勉強会は、MediaBorder登録者には誰でも参加してもらえる。

(希望する方は、発行者の境治までご連絡を sakai@oszero.jp https://www.facebook.com/sakaiosamu)


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