テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年09月号

Netflixは日本で成功する。その確信を得たスタート〜ローンチウィークを追う〜

2015年09月05日 07:52 by sakaiosamu
2015年09月05日 07:52 by sakaiosamu

2015年9月1日16時、六本木のホテル・グランドハイアットの中規模のパーティルームに、数十名の記者たちが集まっていた。部屋には赤い布で覆った椅子が並べられ、京都のお茶屋のような装いがほどこされている。ちょっとしたステージには屏風が立てられ「Netflix」の文字が。ここはNetflixのサービス開始前夜に、メディア向けに整えられた部屋だ。

やがて壇上に登場したのはNetflixの創業者でありCEO、リード・ヘイスティングス氏だ。私は初めて”生で”見た。日本の大勢のメディアの前では初めて姿を見せたヘイスティングス氏は、日本ローンチへの思いを語った。もちろん、この日に合わせて来日したのだ。話の内容より話しぶりに力強さを感じる。続いて、日本代表のグレッグ・ピーターズ氏、副社長の大崎貴之氏も次々に壇上に上がり簡単な挨拶。

さらに、オリジナルドラマである『センス8』に出演する韓国女優ペ・ドゥナ、『オレンジ・イズ・ニューブラック』のラヴァーン・コックス、ウゾ・アドゥバが壇上に登場。挨拶的にコメントしたあと、経営陣の三人も加わって”鏡開き”を披露してメディアのシャッターを浴びた。

この催しのポイントはこのあとだ。記者たちは10名程度ずつ6つのグループに分かれて座っていたのだが、半円状に座る記者のもとに、ヘイスティングス氏、ピーターズ氏、大崎氏、さらに本国から来たコミュニケーション担当役員のジョナサン・フリードマン氏の四人がそれぞれのグループを回ってひざ詰めで質問に答えていくのだ。

ちなみに、自分のグループに誰かが来るまで待つ間の心配りとして、升酒が配られた。ひとつひとつに「Netflix」の文字が刻印され、持ち帰るための袋も渡してくれた。なかなかの「おもてなし」ではないか。

こうした趣向からも、彼らが日本に対し真摯に向き合っていることが感じとれる。日本のメディアに理解してほしいと切に願い、また日本を真剣に理解しようとしているのだろう。

ヘイスティングス氏は、個々の記者の質問に熱心に、丁寧に回答していた。 そこには、世界一位の映像配信企業トップとして上から目線のような態度はみじんもなく、自分が人生を賭けて取り組む事業を目の前の記者たちに懸命にアピールしようという誠実さだけがある。彼らが日本市場にどれだけ本気なのか、あらためて思い知らされた感があった。

同じ日の夜、20時からは乃木坂駅近くの国立新美術館に場所を変え、プレオープニングパーティが開催された。先ほどのメディアセッションとは打って変わって、派手な雰囲気の賑やかな催し。メディアも来ていたが、それよりも、Netflix社と何らかの関係がある業界人たちが大集合した様子だ。7〜800人はいたと思われる会場ははじまる頃にはぎゅうぎゅうで身動きもとりにくいほど。ステージでは南海キャンディーズの”山ちゃん”こと山里亮太氏が司会し、YouTuberがゲストで来たり、先ほどの女優陣が華やかに挨拶をしたり、Netflixでの配信が発表された『火花』の又吉直樹氏が壇上に上ったり。

ここで、ハプニング的な出来事が起こった。ゲストたちに続いて壇上に上がったヘイスティングス氏とピーターズ氏が、配信サービスをもうスタートしてしまおうかと相談をはじめたのだ。わざわざ本国のエンジニアに電話で早められるかどうかを確かめ、大丈夫だとわかるとその場でカウントダウンがはじまった。「10、9、8・・・3、2、1!」時間は夜9時前後。本来は12時スタートなので、ほんの3時間程度早めたに過ぎないが、2日スタートが1日スタートに早まったのはサプライズだ。twitterを見ていると、またたくまに話題が拡散していった。もちろん、あらかじめ準備された演出に違いない。こういうところも、よく考えたものだ。

こうして、9月2日よりひと足早く、1日夜に、Netflixは日本でのサービスを開始した。振返れば、2月に日本ローンチを発表してからあっという間だった気がする。

●Netflixは、日本でも成功する。取材を通じて、その確信を得た。(ここから先は登録読者のみ)
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