テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2015年07月号

Netflixという企業が、いかにユニークでクレバーで奇妙であるかについて

2015年07月17日 09:25 by sakaiosamu
2015年07月17日 09:25 by sakaiosamu

Netflixがどんな会社か、おそらく読者の皆さんにも最初に伝わってきたのは、「『ハウス・オブ・カード』はユーザー分析の塊で、何でも徹底的に理系の頭で考えるやつららしい」という噂ではないだろうか。

おおよその傾向として、メディア界の住民たちは分析だのデータだのを信じていない。分析を元に企画やキャスティングを決めるとは、なんとおぞましい連中かと嫌悪感を持った人も多いだろう。でも同時に、面白いなあ、という感覚も持ったのではないだろうか。そんな作り方があるのか、そんな作り方でエミー賞とかとっちゃうんだ。いったいどんな連中なんだろう。という好奇心がぐんぐんふくらんだ、という人も多いと思う。

VODの普及が、日本の映像コンテンツ業界に新たな息吹を吹き込む。10年ほど前からそんな思いに駆られていた私は、Netflix上陸近しの情報を得て、少しずつその片鱗をつかんでいき、ついには直接会うことができた。そのプロセスは、パズルのピースをつなぎ合わせるようで面白かったのだが、直接会うと、それまで持っていたイメージとずいぶん違う姿が見えてきてまた面白い。なーんだ、そうだったのかあ。

彼らのVOD事業そのものも面白いのだが、一方で企業としての面でも興味深い部分が多々見えてきた。それは「なんでも分析で決める理系なやつら」という印象が、まちがいでもないけどそれだけでもない、むしろそれは表層的にすぎずもっと深さを持つものだった。ただのプラットフォーマーでも、ただのIT企業でも、ただの外資でもない。他ならぬNetflixだけが持っている独自の企業理念と、ユニークな企業文化が少しだけだが見えてきた。

この稿ではそのユニークでクレバーで奇妙な姿を、とりあえずここまで私が見聞きした事柄から文章にまとめてみようと思う。キーワードは彼ら自身が明示してスライドを公開している。「Freedom & Responsibility」。


Culture from Reed Hastings(上の矢印を押していくとスライドをすべて見ることができる) 
つまり、”自由と責任”だ。当たり前のような、いささか哲学的なような、政党の名前のようなこの二つの言葉に彼らの理念が凝縮されているのだ... 
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