テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年06月号

テレビがひとつになればネットでも強くなるはず。だがその有効期限は、すぐそこに迫っている

2018年06月28日 17:22 by sakaiosamu
2018年06月28日 17:22 by sakaiosamu

もしテレビを見る時、何回もボタンを押す必要があったらどうだろう?例えばNHKで「西郷どん」を見終わって9時からの「行列ができる法律相談所」を見るのに、切り替えボタンを押して入力4を選びSTBを立ち上げてその中から「日テレ」を選んでたどり着くとしたらどうか?それがチャンネルごとに別々の操作をしなければならなかったとしたら?いちいち憶えてられなくて別のチャンネルを探すのをやめるかもしれない。

いま、ネットでのテレビはそんな状態だ。TVerがどこにあってFODがどこにあり、その近くにParaviはあったがhuluがどこにあるか忘れてしまった。そんな感じではないだろうか。

あるいは、いまSmartNewsの中には数多くのローカル局も入って上のようにテレビニュースがいっぱいある。それはとりあえず放送業界にとって喜ばしい状況だろう。あるいは他のテレビ局も掲載できる体制づくりを急いでいるかもしれない。

これはSmartNewsにとってもうれしいに違いない。最近彼らは動画に力を入れているので、動画メディアは大歓迎のはずだ。もっともっと全ローカル局が、独立局も含めて参加してほしいのではないかと思う。

だが、ふと、気づくのだ。もったいなくないか、と。

SmartNewsはなぜニュースメディアを増やしたいのだろう。どんどんSmartNewsがベンリになるからだ。中でもテレビニュースは動画だからほしい。伸びる要素だ。

・・・だったらテレビ局が組んでテレビ局だけのSmartTVnewsをつくればいいのではないか?・・・

SmartNewsに参加するテレビ局が増えるたびに思っていたことだ。なんだか馬鹿みたいなことやってないかと。

テレビ放送が成功したのはどうしてだろう。テレビ放送というひとつのサービスの中にすべての局を並べたからだ。冒頭に書いたように、いちいち外部機器を立ち上げる必要があったらここまで伸びなかっただろう。スイッチを入れたらあとは、チャンネルを押すだけで一通りの放送が呼びだせるのだ。間にボタンをひとつ挟むだけで途端にアクセスされなくなる。BSボタンを押せば各BSが選べるのに、多くの人はそうしない。プラットフォームを変えることは、チャンネルを変えることの何十倍もハードルが高いのだ。

テレビはネットで、というよりスマートフォン上で、ひとつにまとまるべきなのだ。テレビニュースはSmartNewsにまとめてもらうのではなく、自分たちでひとつの入口を共有したほうがいい。結果的には、その方が個々の局のアクセスも格段に高まるはずだ。だったらいっそ、ニュースに限らず「TV」というアプリで、テレビのあらゆる視聴を可能にすればいい。個々で個別にサービスを構築しアプリを作るより、「TV」というアプリ上である方式を満たせばニュースを出せるし、情報番組も出せる。そうなったほうがずっと使いやすいだろう。

そんなことは、私も講演の場などで何年も前から言ってきたし、他の論客もみんな言っている。ついには規制改革推進会議も結局、共通プラットフォームの構築を促すことが「第3次答申」の核として出てきた。

そんなことはわかってるよ、でもね・・・とテレビ局の人はいうだろう。それも何度も聞かされてきたことで、あんな事情やこんな背景でできない、となってしまう。

ただ、そろそろもう期限は近いのではないだろうか。

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