『シン・ゴジラ』に続いて『君の名は。』が大ヒットしている。今年は日本映画の当たり年のようだ。それに両作ともこれまでとはちがう、新しい傾向の作品であることも注目ポイントだ。
「新しい傾向」にはいろいろあるが、ひとつ大きいのは「東宝が中心になって製作した映画」であることだ。これについて私が日経ビジネスに書いた記事がちょうど今朝配信された。
→「シン・ゴジラに見るテレビと映画の微妙な関係」(日経ビジネスオンライン 2016年9月20日)
同誌の『「シン・ゴジラ」、私はこう読む』と題したシリーズの一環だ。ざっくり要約すると、テレビ局によって復活しテレビ局が主役となった2000年代以降の日本映画界のターニングポイントがやって来ており、その象徴が『シン・ゴジラ』のメガヒットではないか、という内容だ。
東宝が、自社企画映画つまり東宝自身が中心になっての製作に力を入れるのはいろんな理由がありそうだ。そのひとつに、収益性の向上があると思う。
そこでこの記事では、映画の収益構造を解説しつつ、『シン・ゴジラ』『君の名は。』の二本が東宝の収益にどれだけのインパクトをもたらしたかをシミュレーションしてみる。
まず、映画のビジネスモデルを説明しておきたい。これについては、今月初めにYahoo!に書いたこの記事の中で詳しく述べている。
→「製作委員会方式を議論するなら映画ビジネスがどれだけリスキーか知っておこう」(Yahoo!個人 2016年9月7日)
その中で、いくつかチャートを使って映画の収益構造を説明しているのでそれを見るとわかりやすい。
以下、○割というのはケースバイケースなので、大まかには、という注釈付きで受けとめて欲しい。
いま一般的に映画の成績は「興行収入」で語られる。劇場に入ってきた金額の合計値だ。劇場はそこから作品ごとにあらかじめ決められた割合で配給会社に渡す。”大まかには”、5割と考えられる。配給会社が受け取った金額を配給収入といい、昔はこの数字が一般に使われていた。
配給会社は、これもあらかじめ決めた割合の配給手数料を取る。ケースバイケースだが、大まかには3割。さらに配給会社は宣伝費をそこから引く。全国公開の映画なら数億円はかかる。
フィルム上映の時代はさらに”プリント費”がかかっていたが、いまはデジタル上映になり、それが格段に安くなった。 試算上は無視して考えていくことにする。
配給収入から配給手数料と宣伝費を引いた金額が製作委員会に戻ってくる。この委員会収入から製作費を引いた金額が製作利益だ。
上の図では黒字になっているが、委員会収入より製作費がかかっていると当然赤字になる。これを多くの場合はDVDやテレビ放映などの二次収入で補う。
2000年代まではDVDが売れていたので、劇場でトントンだったり赤字になったりしても二次収入で大きく黒字になることも多かった。だがいまはDVDが売れなくなり配信サービスはまだまだ発展途上なので二次収入があてにならなくなりつつある。
さて、こうした前提をわかってもらったうえで、『シン・ゴジラ』『君の名は。』のシミュレーションを試みてみよう(ここから先は登録読者のみ)
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