テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年05月号

エージェントシステムは日本のコンテンツビジネスを変えられるか?〜弁護士・四宮隆史氏がCRGを設立したワケ〜

2016年05月25日 08:28 by sakaiosamu

弁護士の四宮隆史氏は、「エンタテイメントローヤー」を標榜している。ハリウッドのエンタテイメント業界では弁護士が重要なプレイヤーであり「Entertainment Lawyer」という言葉は”普通”に使われる。その中から製作に関わってプロデューサーになる人材が登場するのもよくあることだ。四宮氏は、日本ではまだ弁護士の活用が少ないエンタテイメントビジネス界で活躍するレアな存在。もともとNHKでディレクターをしていたのに、弁護士としてキャリアを新たに踏み出した変わり種である。そのモチベーションがそもそも、日本にもエンタメローヤーが必要だとの思いからだった。

『テルマエ・ロマエ』が大ヒットした漫画家・ヤマザキマリ、脚本家・福田靖、いま公開中の映画の主役級の俳優や女優など、一流のクリエイターや役者の代理人として活躍している一方、エンタメローヤーの第一人者としてセミナーや講演にもよく登壇している。でも人柄は明朗快活、その場を楽しくしてくれる愉快な人物で、私もお会いするたびに大笑いさせてもらっている。

株式会社CRGのWEBサイト・トップページをキャプチャー

その四宮氏が株式会社CRG(Creative Guardian)を設立した。『HERO』やいま放送中の『グッドパートナー』で知られる脚本家の福田靖氏も所属するエージェント事務所だ。他に役者も所属しており、いわゆるタレント事務所のようでかなりちがう。

そもそも「エージェント」とは何だろう。日本のタレント事務所は、マネージャーがタレントの出演作やスケジュールをマネジメントする。ハリウッドのエージェントはそれとちがい、タレントやクリエイターの立場を代行し、交渉してくれる存在だ。日本のタレント活動が事務所がイニシアチブを握るのに対し、ハリウッドでは役者やクリエイターの側に主体性が置かれている。

CRGはそういうハリウッド型を目指して設立されたのだろうか。あるいは、また別のビジョンがあるのかもしれない。大いに興味を触発された私は、さっそく四宮氏に取材した。

まず設立の経緯について聞いてみた。四宮氏は前述の通り、様々なクリエイターの代理人として交渉を請け負ってきたわけで、その延長線上に生まれたのがCRGだ。一方で、若手のクリエイターの中には非常に意識の高い人びともいて、ハリウッドに倣って日本のエンタテイメント界を変えたいという人物もいた。その声に押された面も大きいという。

「ハリウッドにはストーリーアナリストがいて、ロジカルにシナリオ作りをするのが常識です。日本でもそういう姿勢を示す人はいますが、結局は理屈で進めず感性頼りになりがちですね。ハリウッドでは合理的計算で脚本を構築していくのに、日本ではプロデューサーの感覚主導になる。日本のシナリオ作りは変えるべきだし、俳優もそういうロジックを理解したうえで演技をすべきなのだ。そう考える若い脚本家が出てきているんですね。」

 そんなクリエイターの声を得てCRGの設立に至ったが、もちろん基本は「エージェント」としての機能にある。ということは、役者やクリエイターの側に立ち、テレビ局などプロデュース側に毅然とした態度で交渉する姿勢なのだろうか。

「日本では口約束で条件などが曖昧なまま仕事を進めて行くことが多いですよね。だからもちろん、代理人としてクリエイターの立場を尊重した進め方になるよう交渉します。でも私はプロデュース側の立場もわかるので、一方的にクリエイターの立場に立つのではなく、両者の間を”調整する”ことを重視しています。一時的にクリエイターの利になるかどうかだけでなく、業界全体の視点でうまく交渉をまとめていくことを信条にしています。」 

エージェントシステムが日本には必要だ、ということは私も長らくフリーランスで活動してきて感じていた。多様な分野で今後必要になるのではないだろうか。そんな中で、四宮氏のように”依頼する側”の立場も理解している交渉者は双方にとって頼もしいだろう。

だが四宮氏の話は、さらに奥行きがあった。日本のコンテンツビジネスに欠けている部分を埋めていきたいとの思いもあるのだ。(ここから先は登録読者のみ)

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