昨年2014年9月、民放連会長の会見で「在京キー局が共同で見逃し配信サービスをスタートする」との発表が行われた時、筆者は正直、それが実現するとは思えなかった。まだその時点では、日本テレビが見逃し配信サービスをやっていただけで、他の局はまだまだ時間がかかりそうに見えていた。それなのに5局共同で見逃し配信をするなんて、と信じられなかったのだ。
ところがその後、会長のお膝元であるTBSが見逃し配信をはじめ、各局も続いて春までに在京キー局5局の足並みが揃った。それと併せて今年3月には、秋からいよいよ共同でのサービスをはじめると発表された。その時ようやく筆者も「これは具体化するのだな」と確信させられ、自分の読みが外れたことを反省した。
だがさらにそのあと、どこからともなく聞こえてきたのは、5局の足並みが揃っていないらしいとの噂だった。各局でもともとやっていたオンデマンドサービスの戦略や方針が違いすぎて、共同サービスでのやり方に合意形成がなかなかとれないらしい。そういう噂にも引っ張られ、筆者の期待値も高まらなかった。もともと個別にやってるのだから、共同でやると言ってもなあ。そんな印象を持っていた。
先週、10月26日にTVerの名称でいよいよ共同サービスがスタートした。いちおう見ておくか。そんな気持ちでTVerにアクセスしてみたのだが、いざ見てみると「おっ!」と心が動いた。
そこにあったのは、あらかじめ想像したものと大きな違いはない。シンプルなレイアウトの中に5局の番組が並んでいる。それだけといえばそれだけだ。だが、それだけのことが、強いインパクトを与えている。筆者は思わず、口に出してつぶやいた。「なんか、これいいじゃん!」
民放各局の番組が、局の区分なくランダムに並んでいる。サムネを押すと、すぐさまCMに続いて番組がはじまる。たったそれだけのことだが、自分が想定していた感覚をはるかに超えて「いいじゃん!」と前向きに受け止められた。そこには何か、新しい時代が来たような新鮮さがたちこめていた。
一般の反応もおおむね好評のようだ。もちろん話題沸騰とはいかないが、Twitterで”TVer"と検索すると、「なかなかいいねえ」といったツイートが出てくる。もちろん「スマホだと別アプリが出てくる局がある」という、システム上の問題を指摘するツイートも見受けられるが、それも含めて「テレビ番組がネットで視聴できる」ことを多くの人々が前向きに受け止めてくれているようだ。
そして筆者は、TVerの登場はテレビと視聴者の関係を大きく変えるターニングポイントになるかもしれないと感じた。
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