境さんが紹介しているように、今月も霞ヶ関を舞台にした放送改革の議論が繰り広げられました。その中で、5月22日に開催された、放送を巡る諸課題に関する検討会の分科会・放送サービスの未来像を見据えた周波数有効活用に関する検討分科会(第6回)をご紹介します[配布資料]。周波数有効活用と謳われていますが、「放送の未来像」を探る前向きで本質的な議論が進んだように感じました。
まず、「有識者からのヒアリング」として2名からプレゼンテーションがありました。日本テレビ・藤井氏からは「放送と通信の融合の現状について」と題し、日テレが進めているMR(Mixed Reality)の取り組みについて発表がありました。HoloLensを用いたデモコンテンツは3月開催のクリエイティブテクノロジーラボでも展示され話題となっていました(以下、藤井氏の発言を抜粋)。
「Mixed Realityは向こう側が見られるのがVRとの違い。家族で食事をしながら、テレビを見ながらCGを見ることができる」
「ポイントは二点。複数人同時視聴。システム上は100人でも同じモノが見られる。スマートフォンでも同時に動くように開発。スマホだとMRというよりARだが、同じエンジンで動くように開発」
「情報、データを可視化して体感。テレビは大きさを表現することが難しかった。スポーツ選手の体形を実寸で出せる。通販番組では『ズワイガニ5キロ』がテーブルの上に出てくる。家の冷蔵庫に入るかわかる」
「動きのデータが今後コンテンツに。人をリアルな形で表現できる。後ろに回り込み背中が見える。ダンスレッスンをしたり、好きなアーティストを出すこともできる」
実用化の時期が気になるところですが、「まだまだ研究開発状態」とのこと。家庭にデータを届けるので、インターネット上の「土管」が詰まることが最大の問題といいます。どのように効率的にコンテンツを届けるのか、そのインフラ整備が課題です。もう一つの課題はスマートグラスの普及。こちらにも時間がかかることが予想されるので、スマホでサービスができないか検討するとのことです。何らかの形で今年中に実現できるよう検討すると藤井氏。期待が膨らみます。
もうひとりは委員会の構成員でもある三菱総研・中村秀治氏から「将来に向けた放送サービスについての一考察」として、2040年のテレビサービスの予想図が整理されました。前提となるのが放送を取り巻く技術革新。まず変化の潮流として「大画面化」「極小・薄型」「リアルとバーチャルの融合」「コンテンツのリッチ化」「双方向性の実現」の5つが挙げられました。
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