テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2018年01月号

「テレビは何のために存在するのか?」2017年話題ランキングの結果

2018年01月09日 14:04 by sakaiosamu

あけましておめでとうございます。2015年7月に創刊したこのMediaBorderも2年半を経てますます充実させていきたい。あらためてよろしくお願いします。

さて最初の記事は、昨年末に読者の皆さんに投票を呼びかけた「2017年テレビとネットの話題ランキング」の結果をお伝えしたい。結果は上の通りで「同時配信の議論、混迷へ」が24票を獲得して1位となった。”テレビとネットの横断業界誌”を掲げる本誌としては当然の結果かもしれないが、1位になるくらい混迷化したのだとも言える。

ただ、投票を呼びかけたあと12月25日開催の「放送をめぐる諸課題に関する検討会」では新しい局面が出てきた。混迷を超越した議論の方向性が示されたのだと筆者は受け止め、Yahoo!にこんな記事を書いた。

テレビ局の新たな公共性を問うステップへ~NHK同時配信の議論~

あの会議にはいろんな解釈が成立するので違う切り口で感想を述べる人もいるだろう。いろんな人の意見を聞いてみたいところだ。

投票の多かった項目をランキング順に並べると、こうなる。(4位は同数で2項目)

  • 1位:「同時配信の議論、混迷へ」24票
  • 2位:「視聴データ活用活性化」14票
  • 3位:「AbemaTV72時間本音テレビ」12票
  • 4位:「SVODオリジナル番組ますます盛況に」11票
  • 4位:「視聴率は世帯から個人全体へ」11票
  • 6位:「若者の動画コミュニケーション」9票
  • 7位:「インスタグラム定着」8票
  • 8位:「PPJ設立」5位
  • 9位:「4K8K実現間近へ」
  • 10位:「DAZN躍進」

番外で回答者が作った項目として「テレビ番組の劣化がますます進む」「docomoTVch、AmazonのIPリニア放送開始から時期の発表」「深まるマスメディア不信」「NHK最高裁判決で勝訴」が出てきた。2つ目は少々わかりにくいが「から」が要らないのだと思う。ドコモTVがすでにはじまり、Amazonがリニア放送サービスを発表した、つまりネット経由の放送サービスが盛んになるということだろう。

自由回答のコメントからいくつか紹介しよう。

「もうテレビが旧来の指標で、旧来のビジネスモデルで、旧来の考え方では売れなくなってきている、ということを大変感慨深く受け止めています。 ユーザの生活スタイルがどんどん変わってきているのに、それに即応しようという考えに至らない同胞たちへの無念の思いが尽きません。」強い危機感の表明だ。日々接することから感じることと、そういう情報収集をしていない周囲とのギャップに悩んでおられるようだ。

「動画配信の新旧勢力争いの明確化の年でしたので。無料が標準の日本でSVODが浸透しない機会の窓を生かしきれないTV陣営のもたつき、どちらが先に解決するかの勝負かと思いました。」こちらも危機感の表明だ。”もたつき”という言葉に強い焦りが感じられる。

「マスメディアを信頼する人と、そうでない人との断絶が深まっているように思います。フェイクニュースの跋扈もその側面の一つでしょう。過熱する不倫報道もマスメディア不信を作り上げている要因に違いありません。」こちらは信頼性への危機感だ。旧マスメディアの伝え方も考え直す時だということだろう。

「テレビ×デジタル施策をする中で、視聴率のデータ連携や、価値の再評価はとても大きい流れだなと思ったことと、amazonのオリジナルコンテンツをはじめとした番組を日常会話で「あれ見た?」と言うのが通じてきたのが体感としても大きな変化と思いました。」視聴データが重要になっていること、SVODのオリジナルが影響力を持ちはじめたことに触れている。

「受信料を巡る最高裁判決もあり、今年はNHKがらみのテーマが目立ちました。公共放送のあり方はその肥大化も含めて国民全体で議論していくべきと思います。」NHKが多様に注目されたのも2017年だったかもしれない。さらにテレビ局そのものの社会的役割が今後問われそうだ。

多様な論点がありとてもまとめられないが、強引に総括すると「テレビとは何のために存在するのか」が問われはじめていると言えそうだ。広告メディアとして、公共的なメディアとして、SVODと比較して、何のためにあるのか。そこをいま一度議論するタイミングが来たと、2017年を振り返ると思えてならない。

ある意味、考えるべき点がステップアップしたのだ。よくあるビジネスモデルの議論も、「なぜ存在するのか」から導き出せるかもしれない。2018年は、そんな高次元の議論が各所で展開されそうだ。MediaBorderとしても、頑張ってキャッチアップしていきたい。

なお、発行人・境治個人としてのご挨拶をブログに掲載している。併せて読んでもらえれば幸いだ。

→In 2018, May The People Be With You〜私たちのフォースは、私たちの周りの人びとがくれる〜

 

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