「月刊ニューメディア」の吉井編集長にお声がけいただき、電通総研・奥律哉氏との対談をさせていただいた。それを記事にしたものが、いま発売中の2017年8月号に掲載されている。それは知らなかった!という方はぜひ、いまからでも購入して読んでもらえればと思う。ここからネット上でも注文できる→月刊ニューメディアWEBサイト
”シリーズ対談「一周まわってテレビ論」提唱の電通総研・奥律哉氏と考える”という企画の第一回に呼んでもらった対談で大変光栄なわけだが、この奥氏の論はあらためて注目してもらうといいと思う。
最近の奥氏の講演に触れた方ならご存知と思うが、この「一周まわってテレビ論」。ものすごく乱暴にひとことで言うと「テレビ番組をスマホなどで見せるサービスの普及でできたパーソナル視聴の流れが、今度はそうしたサービスがテレビ受像機でも見られるようになったことで、一周まわってテレビで共視聴する傾向が出てきている」というような趣旨だ。
これについて、対談記事でも私の家庭でまさに起こっていることを話している。ここでもっと詳しく書いておこう。
私は2010年にAppleTVが日本で発売になった日に購入したし、huluが来るとさっそく契約した。このあたりは個人ブログに興奮しながら克明にレポートしている。
→「テレビに未来がやって来た!〜AppleTV即買い記〜」(クリエイティブビジネス論・2010/11/12)
→「Huluで映画とドラマ見放題!VOD市場の破壊というか創造というか・・・」(クリエイティブビジネス論・2011/9/2)
それから5〜6年経ったわけだが、わが家で言うと「一周まわって」というより「一周まわらずいきなり」テレビだった。つまり、AppleTVがある状態でhulu、dTV、Netflixとサービスを追加していったので、スマホを経由せずテレビでの動画サービスを楽しむ状態にいきなりなったし、どんどんそうなっていった、ということだ。
わが家には息子と娘がおり、娘の方はコンテンツ好きで小説もよく読むが、映画やドラマもよく見る。スマートフォンを持つ前にAppleTVが彼女の生活に入ってきたので、一周まわらなかったのだ。
しかも、地上波のドラマも並行して視聴している私に対し、娘はhulu 導入とともに地上波を観なくなった。そんな生活を中学生からはじめたので、いまやすっかり映画やドラマの通だ。キューブリックやジャン=ピエール・ジュネ、ウェス・アンダーソンなど個性的な監督のものを好み、「ウォーキングデッド」のような残虐場面満載のドラマも平気で見ている。そんな彼女からすると、きつい表現を避けざるをえないいまの地上波のドラマは物足りないようだ。
最近は、いつの間に見ていたのか、私の知らない面白いドラマや映画を、私に教えてくれるようになった。すっかり目が肥えてしまったので、普通の映画好きのオトナよりよほど信頼できる情報源だ。感想を語りあうと、私の見落としていた部分を指摘するなど、なかなかの見巧者だ。
SVODサービスが、私の娘の映画やドラマの審美眼を形成したのだ。それを育てたデバイスは、一周まわらなくてテレビ、だった。
これはもちろん私の家庭の話であり、こんな女の子も相当珍しいと思うが、一般化するとしたらどう受けとめればいいだろう。(ここから先は登録読者のみ)
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