テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2019年06月号

令和のテレビは、令和のメディアになれるだろうか〜3:放送外収入の誤謬〜

2019年06月13日 08:33 by sakaiosamu

実は定義が曖昧な「放送外収入」

令和のテレビでもっとも重要な要素のひとつに「放送外収入」がある。何しろ、どこの局も今後「放送収入」の方は伸びそうにない。テレビ広告にスポンサーが費やす金額はじわじわ減る、そのことは誰しも認めざるを得ない未来なのだ。となると、「放送外収入」をこれから伸ばすしかないに決まっている。

ところが、この「放送外収入」という言葉ほど定義の曖昧なものもない。ざっくり言えば、テレビ局の収入でCMセールス以外の売上、ということだろうが、番組販売やDVD販売による収入は当然入るとして、それ以外はどこまで入れるべきなのかはっきりしない。

さらに、上場していて決算報告が誰でも見られる在京キー局は認定持株会社の形を取っている。ホールディングスが上にあり、テレビ局本体をはじめいくつもの会社がそれにぶら下がった形だ。BS局やラジオ局も含まれる。いやそれだけでなく、不動産事業や広告代理店、スポーツジムが入っている企業体まである。果たして不動産事業は「放送外収入」と言えるのか?放送外のさらに外で、「放送外外収入」と呼ぶしかないのではないか?

それくらい定義がはっきりしないのに、人によっては乱暴に放送外収入について語ったりしている。不動産事業もなんでも一緒くたにしてホールディングス体制の連結決算全体のうちでテレビ局以外の収入を「放送外収入」として分析している記事も見受けられる。ここで整理が必要ではないか。

上の図は、3年前の拙著「拡張するテレビ」の中で使ったものだ。放送外収入の説明ではないが、これからのテレビ番組は生み出す収入をポートフォリオでとらえるべきだと示すためのものだ。リアルタイム視聴での広告収入だけでなく、タイムシフト視聴の広告収入、見逃し視聴の広告収入、そして二次利用収入も番組販売だけでなく各種VOD、果ては海外販売やグッズ収入も加えて、その総体が番組の価値なのだととらえるべきと書いた。

これは複雑に思えるかもしれないが、前に在籍した映像製作会社ロボットで経営企画をやっていた頃、映画の事業性を把握するためにやっていたことの応用だ。映画は興行だけではなかなかリクープできないが様々な二次利用から入る収入で黒字になり、場合によっては莫大な利益になる。その作品で儲かったかどうかは二年間くらいのスパンで判断するのだ。本来はテレビ番組だってそのはずだろう。視聴率がさほどだったとしても、二次利用でたくさん収入を得ればプロデューサーは褒められていいはずだ。テレビ朝日「おっさんずラブ」はようやく、会社としてこの考え方で評価するようになった事例だと思う。番組個別のポートフォリオを追ってプロデューサーを評価する時代になるべきだ。

この観点から言うと、放送外収入とは最初の広告収入以外の二次利用の部分、ということになる。番組ごとで言えばそうなのだが、番組単位でとらえにくいイベントなどもあるので、もう少し大きな視点で「放送外収入」をとらえるべきだとは思う。

そこで、在京キー局の2018年度の決算報告書から「放送外収入」を一定の基準で割り出して比較してみたい。ただ、局によって数字のまとめ方がかなりちがうので、厳密に比べることは難しいのだが。

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