テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2019年06月号

令和のテレビは、令和のメディアになれるだろうか〜2:穏やかさとやさしさ〜

2019年06月05日 11:41 by sakaiosamu
2019年06月05日 11:41 by sakaiosamu

令和のテレビが、クールダウンしはじめた?

6月最初の月曜日、TBSの夜のニュース番組News23の新キャスターとして小川彩佳が登場した。初登板はなかなかの落ち着きで新生News23を感じさせるものだった。

この回で筆者が注目したのは彼女だけでなく、彼女が進行したディスカッションのコーナーだった。「先鋭化する言葉、”分断”を阻止するには?」のタイトルで、劇作家の鴻上尚史と社会学者の西田亮介を招き、ネットでの”分断”を議論した。感覚的な感想になるが、TBSに限らず民放テレビのこれまでのテレビ番組の議論コーナーより、落ち着きのある空気が醸し出されていたように感じた。見ている側も落ち着いて議論を視聴し、二人の論客の意見を率直に受け止めることができた。(このコーナーの部分は見逃し配信的に動画で視聴できるので参考に→TBS newsサイト

「これまでのテレビ番組の議論コーナーより」というのは、いくぶん筆者の独断と偏見かもしれない。だがテレビの中で議論がはじまると、それを見ているお茶の間に漂う空気が濁っていき、冷静に見ていられなくなることが多かった気がしている。「朝まで生テレビ」のようなことを、どの番組もやろうとしていたのではないか。そんな気がいつもしていた。

ふと気づくと、朝のワイドショー番組も以前と比べるとずいぶん落ち着いてきたように思う。少し前まで、何か騒動が起こるとその不愉快な部分にばかりスポットを当て、誰が悪いかの犯人さがしばかりしていた気がする。見ていると心がささくれ立ってくる。日大アメフト部の事件やボクシング協会の騒動などの頃は、ワイドショーを避けてテレビを見ていた。

それが最近は、例えば月曜火曜と元農水省次官の息子殺害の事件をどの局も取り上げていたが、前までの攻撃性はすっかり後退している。犯人さがしより、こうした不幸を起こさないための議論をしているように感じた。

テレビは事件が起こると、躁状態になっていた。キャスターの深刻な表情の裏に、また派手な事件が起こってうれしい!とほくそ笑む姿が見え隠れしていた。世間を騒がせる大事件を歓喜しながら取り上げるテレビと、それを見て井戸端会議のネタにする視聴者。その共犯関係でテレビは動いていた。

だが今は、テレビがクールダウンしたように感じる。やたらとはしゃがずに、視聴者とともに解決策を考える。テレビはそういう場に変わろうとしているのではないだろうか。もしそうだとしたら、何がテレビをクールダウンさせたのだろうか。

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