テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2017年06月号

テレビが便利になると、放送は不便になる〜Smart Media LABを見学して〜

2017年06月23日 13:16 by sakaiosamu

先日、博報堂DYメディアパートナーズのSmart Media LABを訪問した。ご覧の通り、各メーカーの最新のスマートテレビを一堂に集めた空間だ。テレビだけでなく、Google HomeなどのAIスピーカーや最新のプロジェクターなど、「テレビを視聴するための最新テクノロジー」が一通り整っている。

同社のデータドリブンビジネス開発センター、今野真人氏と田代奈美氏のご案内でデモンストレーションも見せていただいた。現状のテレビの最新の視聴環境を身体で感じることができた。

この部屋は、役員室のフロアに設置されている。つまり同社を訪れるメディア企業の上層部を招いて、最新のテレビの状況を感じてもらうのがひとつの目的なのだと思う。実際に、テレビ局や新聞社などの上層部が訪れているという。私のような人間を案内していただいたのは特別な計らいだと思うが、興味ある方は訪問してみるといいと思う。

各社のテレビはテレビ用のOSを使って動いている。SONYとSHARPのテレビはアンドロイドTVを採用しているし、PanasonicはFirefoxOSを使っているそうだ。このことは、そのUIがスマートフォンやタブレットに近いことを示している。

ただ、「スマートテレビ」という言葉が盛んに飛び交った2011年あたりにイメージされた姿が、それこそスマートフォンなみにありとあらゆることが可能になるデバイスだったのに比べると、この部屋に居並ぶそれらは言わば「映像配信サービスのデパート」だ。映像以外のサービスも各OS上であまたの数が出ているようだが、映像以外はむしろスマートフォンやタブレットの方が便利だろう。

スマートテレビの一旦の結論は、多様な映像サービスの受け皿、だったのだ。

だが映像に絞ると、実に便利なデバイスに進化している。実際にデモで見せてもらったのだが、音声入力で「マツコデラックス!」と呼びかけると、マツコ出演のありとあらゆる映像が様々なプラットフォーム上に出てくる。マツコのような人気タレントになると、こんなに幅広く出演しているのかとあらためて驚いた。あるいは、びっくりするほど多くのプラットフォームに出演番組が配信されている。

私はふだん、10年近く前のテレビに2年前に買ったFireTVをつないで使っている。だから擬似的にスマートテレビ視聴を楽しめているつもりだったが、やはりテレビそのもので配信サービスが使えるのは感覚が全く違う。スマートテレビは、根本的にテレビを変えてしまうのだと実感できた。

FireTVのような外部機器を使っていると、基本的に放送を視聴して”他に何かないか”という時に「入力切り換え」をしてFireTVを起動する流れだ。入力を切り換えるワンステップが、”イレギュラーな視聴をする”気持ちにさせる。だがボタンひとつで配信サービスのアイコンが並ぶ画面が出てくるのは、テレビそのものの概念を変えてしまう作用をもたらす。STBでは味わえないリアルな未来的視聴を体感できた。

そしてSmart Media LABに並ぶスマートテレビは、現在すでに販売されているものばかりだ。ここではすでに、未来が今になっている。さらに言うと、これからオリンピックに向けて日本中のリビングルームで、この空間の未来が今になっていくのだ。そのことをどうとらえるべきだろう。(ここから先は登録読者のみ)

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