テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2016年12月号

「地域のための放送局」を愚直なまでに貫いて、三冠王〜MBC南日本放送取材記(2)〜

2016年12月22日 15:01 by sakaiosamu
2016年12月22日 15:01 by sakaiosamu

「ふるさとたっぷり」に一丸となって取組む放送局

前回のMBC南日本放送の取材記事を書いたあと、ホットな情報が入ってきた。MBCが、2016年間で鹿児島地区の視聴率三冠王を獲得したそうだ。心をこめて言いたい。おめでとうございます!

まだ2016年終わってないじゃないか、と言う人もいるかもしれない。ビデオリサーチの視聴率調査には「24週地区」という区分があり、月の前半が調査期間なのだ。(→ビデオリサーチ社の調査地区説明ページ)鹿児島地区もそこに含まれているので、すでに「年間視聴率」が出ているということだ。

 「てゲてゲ」副調整室の様子。この人数で平均15%を獲得するのだからすごい!

牽引役はやはり水曜19時『てゲてゲ』20時『どーんと鹿児島』の自社制作番組で、平均視聴率はそれぞれ15%以上、18%以上。20%を超えた回が合わせて6本あったという。"鉄板"と言っていい時間だ。

さて前回の続きとして、『てゲてゲ』など自社制作に力を入れてきた背景を書いていきたい。そこには、社員が共有している「理念」があるのだ。

MBCはもともと鹿児島県と市の資本も入っており、比較的公共性の強い民放局だった。そして1993年に8.6水害と呼ばれる大災害が起こった際、自らの社屋が被害に遭いながらも必死になって報道を続けた。キー局からの電波を途中で打切って自局の放送をする英断をし、県民から感謝されたそうだ。そのことが大きな大きな財産となり社員たちの胸に焼きついていて、誇りに感じているという。

そして2006年、中村耕治氏が社長に就任。「ふるさとたっぷり」を社是として掲げた。そのカリスマ性あふれるリーダーシップでその言葉通りの放送局となるべく、全社員を率いている。もともとあった公共意識を中村社長が明確に理念化し、それが社員ひとりひとりに浸透した結果が、いまのMBCの姿なのだ。

ローカル局が「ふるさとたっぷり」という社是を掲げる。そのこと自体はさほど驚くようなことではないだろう。だが普通は「まあ地域に貢献とか何とか言っておかなきゃね」とばかりに言葉だけに終わってしまい、本気でそれを貫こうとしないものではないだろうか。MBCの場合は、「ふるさとたっぷり」に全社一丸となって本気で取り組んでいる。その結果が「三冠王」という形で実を結んだのだと言えるだろう。視聴率は目的ではなく、地域のための放送局をめざしたら今年はそうだった、ということにすぎないのだ。その点がもっとも大事であり、もし他の放送局が学ぶべき点があるとしたら、そこに尽きると思う。

そして「ふるさとたっぷり」を貫くことには、さらに今後の難しいローカル局の行く先にとっても、大きなプラスをもたらすはずだ。MBCには、その萌芽がすでに見受けられる。(ここから先は登録読者のみ)

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