テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年11月号

INTER BEE BORDERLESS全セッションを解説する:後編

2023年11月01日 14:35 by sakaiosamu
2023年11月01日 14:35 by sakaiosamu

前回の続きで、INTER BEE BORDERLESSのセッションを紹介していく。前回説明しそこねたこととして、今年は3日間それぞれにテーマがある。15日(水)は「ボーダレスデイ」16日(木)は「ローカルデイ」17日(金)は「フューチャーデイ」とそれぞれ設定した。各日を続けて聴講してもらうと、関連性がありテーマに沿った知見が高まる仕組みだ。
もっとも全体に関連性があるとも言え、必ずしも一日中聴講する必要もないかもしれない。できれば自分なりの問題意識でセッションを選んでもらうといいと思う。もちろん全部聴講してもらえば我々は嬉しいが。

地上波の制作者がケーブルテレビで新たな番組づくり

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さてセッション紹介の続きは、16日(木)15時のセッションからだ。「CATV発、地域”超”密着コンテンツの作り手に学ぶ、地域メディアの可能性」というタイトル。ケーブルテレビ業界の企画で、モデレーターはケーブルテレビ連盟の二瓶浩一氏だが、登壇するのは地上波テレビの制作者だった方ばかりだ。
まず注目してしまうのが、土屋敏男氏。「進め!電波少年」のT部長として誰もが知るであろう、元日本テレビの制作者だった。その土屋氏は今、ケーブルテレビ局ひまわりネットワークの顧問として同局の番組制作に携わっている。それがこの番組だ。

「地元吸着番組」のキャッチフレーズで、地元の出演者による豊田市民だけが楽しめる番組だ。もう十数話になっているのでぜひ見てもらいたい。
さらに番組制作会社アマゾンラテルナの社員として、鳥取県の大山チャンネルの番組制作を、大山町に家族で移住して引き受けている貝本正樹氏、長崎放送から、同局と資本関係にある長崎ケーブルメディアに赴任してドキュメンタリーを制作する大野陽一郎氏が登壇。地上波でのノウハウを活かしてケーブルテレビで新たな制作に挑んだことを語ってくれる。
地上波局とケーブル局には「壁」を感じてしまうが、今後は互いの力を出し合い地域のために違う方向から貢献するメディアになるべきだと思う。このセッションが、そのきっかけになればいいと考えている。

注目のFASTを軸に、海外の映像配信市場の最新動向を追う

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17日(金)10時30分からはフューチャーデイの皮切りとして、「FAST・CTVの海外最新動向と日本のリアル」をお届けする。昨年の基調講演でもCTVとFASTを扱ったが、これはいわばその続きのセッション。昨年も担当したTBSテレビ・高澤宏昌氏がモデレーターを務め、映像新聞での連載などでFASTの最新情報を書く奥村文隆氏(MediaBorderでもインタビューを掲載した)と、海外を飛び回り放送業界を取材する長谷川朋子氏(初日のセッションではモデレーターを務める)、さらに放送業界から転身したPwCコンサルティングの山畑健太郎氏が登壇。それぞれが持つ知見やデータを披露してもらいつつ、今後の日本の映像配信市場についても議論してもらう。詳しくはこちらの記事でご覧いただきたい。

配信サービスのプレイヤーが集まり、今後の日本の動向を見通す

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前のセッションを受ける形で企画されたのが「配信サービスはVODの次に進むか」だ。筆者がモデレーターを務めるこのセッションには、U-NEXTの本多利彦氏、TVerの蜷川新治郎氏、FODの野村和生氏が登壇。今後の日本のVOD市場の姿を議論して見出す。
U-NEXTは国内SVODとして最大に成長、キー局が共同で立ち上げたTVerは広告モデルの最有力サービス。果たして今後、それぞれ有料と無料にかっちり棲み分けして進むのかどうかが一つの興味だ。というのは、前のセッションで軸となるFASTは無料型だが有料プランを加えるサービスも出てきたり、米国では有料無料の境目が曖昧になっているのだ。FODは前々から無料有料を併せ持ち、野村氏はSVODでもありAVODでもあるUVODと冗談めかして言っていた。それがいまや、最新のサービスの形なのかもしれない。
その辺りを議論してもらうために、この人選となった。こちらも記事を参照してもらいたい。

放送業界のグランドデザインを見通せるか。予測不能のディスカッション!

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17日、そして全セッションを通して最後に控えるのは「テクノロジー視点で放送業界の“ブループリント”を構想する」のタイトルで、放送業界の今後の姿を議論する実験的な企画だ。NHK文研の村上圭子氏が進行を務め、企のクロサカタツヤ氏、イコーゼの大吉なぎさ氏、NHK財団の武智秀氏の3人が、テクノロジー視点で近未来の放送の在り方を議論する。
後半では、会場からの発言も募り、スタージの上も下も関係ない議論の場になる予定。終了も規定の16時30分を超えるのもありとする、掟破りのセッションになりそうだ。ぜひこの機会に物申したい方は、会場に集まってもらいたい。詳しくはこの記事を読んでいただけばわかる。

2回に分けて駆け足でINTER BEE BORDERLESSの各セッションを紹介した。我ながら今年は例年以上に好企画が目白押しになったと感じている。トータルのバランスにも自信を持っている。みなさん、ぜひ幕張に足を運んで聴講していただければと思う。ぜひ当日、幕張でお会いしましょう!

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