テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2023年10月号

INTER BEE BORDERLESS全セッションを解説する:前編

2023年10月31日 13:05 by sakaiosamu
2023年10月31日 13:05 by sakaiosamu

毎年恒例の業界イベントInter BEEが今年も11月15日(水)〜17日(金)に幕張メッセで開催される。放送業界の技術展と思われがちだが、確かにそこが出発点とはいえ今は多岐にわたるメディア・エンタメ関連の展示会に成長した。来場者も放送業界の方だけでなく、音響や舞台、ライブエンタメ、最近はやはりWEB動画関連の方々の来場も多い。プロ向けの機材が安くなり、プロとアマの境目も曖昧になった時代にあって、様々な人々に来てもらえる催しになった。
いくつかの特別企画があり、私はINTER BEE BORDERLESSというコーナーのセッション企画を担当している。昨年まではCONNECTEDという名称だったのを今年から変更したのだ。テレビとネットのCONNECTはすでに達成され、今後はBORDERLESSにコンテンツもビジネスも考えていく必要がある。そんな考え方での名称変更だ。
そして去年CONNECTEDのセッションは6つだったが、今年は9つの企画を展開する。コロナ禍の息苦しさもようやくなくなり、3日間めいっぱい使ってセッションをお届けする予定だ。
先日、企画メンバーの仲間たちと、各セッションを担当者が説明する映像をZoomで収録した。これは11月6日からの配信だが、その前にMediaBorderの場で先んじて紹介したいと思う。

ローカル局の4人の社長が集う基調講演

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まず2日め16日(木)13時からの基調講演をご紹介しよう。NHK文研・村上圭子氏が企画・モデレーターを務めるセッションでは、ローカル局の4人の社長が一堂に会する。それぞれ背景が違う4社長は当然、経営姿勢や考え方が違う。今後のローカル局の危機に対する4つの方向性が示せることになるだろう。こちらについてはINTER BEE MAGAZINEに事前記事があるので読んでもらいたい。基調講演はBORDERLESSの展示会場ではなく国際会議場で行われるのでお間違いなく。

恒例の電通メディアイノベーションラボのセッションに青学・内山教授が参加

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会場で行われる一般セッションを初日から紹介していく。まず15日(水)10時30分からは毎年恒例の電通メディアイノベーションラボによるセッションだ。奥律哉氏が進行役で、前半は同ラボの森下真理子氏が今年の最新メディア調査を報告。速報を少しだけ教えていただいたが、やはりCTVが生活に占める時間は伸びているようだ。
そして後半では、青山学院大学教授・内山隆氏をお招きしてのディスカッション。内山氏は、総務省の様々な有識者会議で構成員、時には主査を務めて各会議で重要な役割を果たす方だ。「デジタル時代放送制度検討会」で構成員を務める奥氏と共に、放送ビジネスや放送制度について議論することになりそうだ。憤懣も溜まってそうなお二人の”愚痴”も聞けると面白そう。こちらも記事があるのでお読みいただきたい。

テレビニュースがネットで当たり前にみられる時代をどう捉えるか

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コロナ禍では、人々が求める情報をテレビ局がネットで積極的に提供した。いまやローカル局もYouTubeにニュースチャンネルを持つのは当たり前で、ニュース解説者がオリジナルの恋解説動画を配信し、何十万回も再生される。テレビ局にとって放送とは別にネットも重要なニュースの出し口になった。
15日(水)2つめのセッションは、企画メンバーでもある日本テレビの三日月儀雄氏がモデレーターを務め、テレビニュースのDXをテーマにする。前半ではグーグルの永原錬太郎氏による講演で、YouTubeでのニュース展開をテーマにお話いただく。後半ではYahoo!ニュースを担当する藤原光昭氏と、テレビ朝日の報道局でクロスメディアセンター長を務める西村大樹氏が登壇。三日月氏とニュースのDX化についてディスカッションしていただく。テレビ局のニュース配信とプラットフォームとの関係の最前線と、あるべき像を探る議論になるだろう。
テレビ局にはFNNプライムオンライン、TBS NEWS DIG、つい先日スタートした日テレNEWS NNNといった系列ごとに自らニュースを配信する動きもある。それとプラットフォームとの関係もきっと議論になるだろう。
私は、今後のテレビビジネスのネット展開でニュースが大きな鍵を握ると考えている。ニュースこそ「イマ」の最たるものだからだ。その意味でも、このセッションは重要だと思う。

ドラマのトータルリーチが伸びれば新しい価値が生まれる

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15日(水)3つめのセッションは、関西テレビのドラマビジネスをフューチャーする。元になったのはScreensに載ったこの記事だ。

関西テレビの竹内伸幸氏に放送業界ジャーナリストの長谷川朋子氏が取材した記事で、ドラマのトータルリーチをテーマにしている。関西テレビはドラマをTVerで見逃し配信するだけでなく、NetflixはじめVODサービスにも積極的に置き、トータルなリーチを伸ばすことに成功している。ドラマをビジネスとして評価する際も、放送収入を丁寧な計算で配分し、配信による収入も計算に加える。それによって本当の意味でのコンテンツビジネスとしての価値が把握できるわけだ。
このセッションでは長谷川氏をモデレーターに、メインスピーカーとして竹内氏に登壇してもらうだけでなく、昨年のドラマ「魔法のリノベ」で提供社となったリクシルの五十嵐千佳氏、集中度という独自の計測法で番組を評価するREVISIOの河村嘉樹氏も登壇。ドラマの価値を多角的に議論してもらう。こちらも記事があるのでお読みいただきたい。

ローカル局が取り組む地域課題解決ビジネス、4つの事例

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地域課題解決がローカル局のミッションの一つと言われるようになって久しい。取り組むだけでも大変な地域課題解決を、ビジネスにまでしていくのはなかなか大変なことだ。16日(木)10時30分からの「ローカル局の地域課題解決ビジネス」はまさにその取り組みを紹介するセッションだ。企画メンバーのTVQ九州放送・永江幸司氏がモデレーターを務める。
宮崎放送グループのトレードメディアジャパンは地域商社として宮崎の産品を台湾を皮切りにアジアや欧米に売っていくビジネスを展開し、そのプロモーションも行う会社だ。
岡山放送では30年前から手話放送に取り組んできたが、それを持続可能にするためのビジネス化に取り組み始めた。手話放送のワイプ画面横にスポンサーを表示したり、手話によるスポーツ中継にも取り組むなど、ボランティア的に捉えがちな手話放送に新しいイメージをもたらしている。
名古屋テレビでは投資と事業開発をミッションとする成長戦略部を設けているが、「メ〜テレマッチング」の名称で事業承継の事業化に取り組み始めている。仮説を立ててPoC(概念実証)を経た上で本格的に着手する、新規事業の考え方も学びになりそうだ。
札幌テレビではコロナ禍の中、道内の農業高校の相談を受けて番組コラボにトライした。高校生が作った産物を局のショッピングサイトで販売。反響が大きかったことから名物番組「どさんこワイド179」の30周年と、道内の農業高校が30校あることを絡めた番組コラボ企画を実施。協賛企業も参加して盛り上がった。
4局の具体的な事例を、実際に担当した面々が語るので、具体的に理解できるセッションになるだろう。ローカル局の皆さんには必須と言っていい企画だ。

追記:このセッションの記事も公開されたのでリンクを加えておく。

企画セッション「ローカル局の地域課題解決ビジネス〜地域の声が未来を紡ぐ〜」事前レポート

ここまでで9つのセッションのうち5つをご紹介した。明日は残りの4セッションを記事にするのでお楽しみに!そしてぜひ、幕張まで足をお運びいただければと思う。

 

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