テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年06月号

同時配信のあるべき姿が見えてきた〜6/21ウェビナー「同時配信の議論を決着させる」のポイント

2022年06月28日 13:49 by sakaiosamu
2022年06月28日 13:49 by sakaiosamu

6月21日にウェビナー「同時配信の議論を決着させる〜メディアのグランドデザイン会議第二回〜」を開催し、80名を超える参加者が集まり盛況となった。ここで議論のすべてをレポートするわけにもいかないので、私としてポイントだと思う箇所について記事にしたい。

登壇したのは、以下の方々だった。

電通メディアイノベーションラボ:奥律哉氏
ワイズ・メディア:塚本幹夫氏
青山学院大学 教授:内山隆氏
noteプロデューサー/ブロガー:徳力基彦氏

なぜ同時配信をやるべきか?若者の映像視聴の半分がネット経由だから

同時配信は視聴率に影響を与えるのか。長年、結論が出なかった議論だ。同時配信をやるべきではないと主張する人は、視聴率が下がるからと反対していた。今もそう考える人は多いのか?ウェビナーでは参加者にアンケートしてみた。
設問は「キー局の同時配信はローカル局の視聴率を下げると思いますか?」。結果は以下のようなものだった。

画像

「大きく下げてしまう」「少し下げてしまう」と答えたネガティブ派の人は27%、「あまり影響しない」「ほとんど影響しない」のポジティブ派は73%。視聴率が下がるという人の方が少数派のようだ。もちろんそもそも、このウェビナーに参加した人は同時配信にポジティブな人が多い傾向はあるだろう。

視聴率に影響するかしないかについては、MediaBorderでも私が何度も書いてきた。

たいして影響がなくてもテレビが同時配信すべき理由

ただ影響があるかないかは少々水かけ論だった気もする。影響があってもなくても同時配信をやるべきとの理屈が欠けていた。今回のウェビナーで奥氏が言っていたことはこの点について非常に説得力があるものだった。

奥氏が見せてくれたのは、2021年12月に調査した「自宅内映像形メディア接触時間」を性年齢別にパーセンテージで表したもの。
「映像系メディア」を「テレビRT(リアルタイム)」「テレビTS(タイムシフト)」「テレビ動画」「PCタブレット動画」「スマホ携帯動画」「再生視聴(録画テレビ以外)」の6種類に分けている。最初の2項目までが視聴率にカウントされる部分であり、残り4つはネットでの映像視聴。「テレビ動画」とはテレビ受像機で放送以外に配信サービスを見ることだ。

例えばテレビをよく見るF3層は実に78.0%がテレビRTだ。テレビTSの12.9%も合わせると90%強がテレビ視聴だ。この層にとっては今もテレビがメディアの王様なのだ。

ところが若い世代、例えば12〜19歳の場合はテレビRTが39.6%、テレビTS 6.3%を加えても50%に届かない。この層は映像視聴の過半数がネット動画なのだ。M1層はテレビRTとテレビTSの合計が48.4%でやはり50%以下。F1はRT、TS両方合計で60.9%とテレビが過半数越えではあるが、やはりネットでの映像視聴がかなり多い。

この傾向は将来そのまま持ち上がるし、より若い世代はもっとテレビが減り動画が増えるだろう。
ここに同時配信を行うべき強い理由がある。若者はネット経由で動画を見る時間がどんどん増えるのだ。テレビ放送をそこでも視聴できないと、テレビ放送の視聴は減る一方なのだから、パイは増えない。テレビ放送が減るのなら、ネット経由でも番組を届けるべきなのだ。

視聴率が下がるの下がらないのを言ってる場合ではない。テレビ「放送」の面積が減るならテレビ「配信」を増やすべきだし、テレビの「同時配信」も増やすべきに決まってる。同時配信をしないと、テレビの島は小さくなっていき海に沈むことになる。同時配信で新しい島を作るべき、いや作るしかないということだ。

「同時配信=放送」にすれば著作権がクリアでき地域制御も必要になる

青山学院大学の内山教授はテレビ番組の配信と著作権に関するいくつかの有識者会議に参加し、なかなか最終解決に至らず忸怩たる思いを持ってらした。決着しない議論についてウェビナーでお話しいただいた。

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