テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2019年07月号

ワイドショーが事件現場になった〜吉本興業の闇営業騒動〜

2019年07月23日 12:56 by sakaiosamu
2019年07月23日 12:56 by sakaiosamu

土曜日から今日までの一連の出来事は、そこいらのドラマよりずっと(言い方が悪いが)エキサイティングだった。事実は小説より奇なり。そして起こった出来事をテレビが追いかけるのではなく、テレビの上で出来事が起こっていた。テレビでなければ起こりえないし、テレビでなければ見られない。21世紀的なことが起こったと思う。

土曜日の宮迫・亮の会見は地上波テレビでは放送されなかった。突然だったし、異例だったし、あそこまでの事実がわかるとは誰も思わなかっただろう。だからテレビ局は中継して放送する準備もしてなかったようだ。

AbemaTVはちがった。何しろチャンネルがたくさんあり、編成も臨機応変に対応できる。山里・蒼井結婚報告会見で「緊急会見といえばAbemaTV」というブランドを確立していた。そしてご丁寧にも会見が終了したらまた最初から放送した。私も途中から生で見て、その後頭から見ることができた。宮迫と亮がそれぞれ何を言ったのか、つぶさに見ることができた。

実はNHKや民放もネットでライブ配信はしていた。だがAbemaTVで見た人が圧倒的に多かったはずだ。アプリがあるのでどこでやっているかを探さなくていいのだ。AbemaTVが三年やってきてポジショニングができあがってきた証しだろう。

そして地上波テレビもその夜の報道番組で会見を放送した。TBSは22時からの「新・情報7daysニュースキャスター」でかなりの時間を割いて放送した。30分以上は使っていたと思う。ここで会見内容を把握した人は多いだろう。

さらに会見ダイジェストが終了した後、ビートたけしが感想を述べた。かなり長々と、宮迫・亮に対してではなく、彼らをこんな会見をさせるまで追い込んだ吉本側を強烈に批判した。よその事務所をここまではっきり断罪するたけしを初めて見たと思う。

番組の中で起こった事件の第1ラウンドがこれだった。世の中で起こっている騒動を客観的に論じるのではなく、当事者(あるいは当事者に強く共感した似た立場の者)が自分ゴトとして語る流れの最初がこの時だったと思う。

一方、松本人志がツイッターで「動きます」と書いたと伝えられた。仲間の窮地に呼応して、吉本興業上層部に何かを言いに行くのだという。大崎会長にものが言える大御所として、芸人たちのために「動く」のだろう。そこで気になったのが、日曜日の「ワイドナショー」だ。宮迫・亮の会見という一大事があり、さらにそれについて松本人志が「動く」とまで言った。おそらく金曜日は収録済みの「ワイドナショー」ではこの件に触れてるはずもない。それをしれっと放送できないのではないか。

翌朝、事態は第2ラウンドに進んでいた。

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