テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年08月号

テレビ局の競争は、視聴率から戦略へ

2022年08月10日 12:46 by sakaiosamu
2022年08月10日 12:46 by sakaiosamu

コロナで乱高下した視聴率

先週、在京キー局の決算が出揃った。このところPUTつまり視聴率全体が急落していると聞いていた。筆者は7月にそのことを取り上げた記事をYahoo!に掲載したところ、久々にえらく読まれた。

この時はインテージ社に視聴データをもらったのだが、確かに下がっていた。同社のデータでは性年齢別の多くのセグメントで特にゴールデンタイムで如実にダウンし、それが今年の4月を境目に起こっていた。

キー局の決算資料にはビデオリサーチの視聴率も掲載されるので、視聴率の変動を確認してみた。すると、ほぼ同じ傾向が見てとれた。

以下のリンクは、日本テレビの四半期決算の資料だ。P23には4月クールの個人視聴率、P24にはコアターゲットの視聴率が載っている。

https://www.ntvhd.co.jp/pdf_cms/news/20220729.pdf

その日本テレビの決算資料でこの四年間の4月クールのPUTを見ると、その推移がはっきりわかる。グラフ化してみたのでご覧いただこう。

画像 日本テレビ決算資料より筆者作成

数年間でこれほど劇的にテレビ視聴が変化したこともなかっただろう。ゴールデンタイムのPUTで見ると、2019年に36.6%だったのが2020年には40.7%へと4%以上も上がっている。お分かりの通り、コロナ感染の最初の波が来て緊急事態宣言が発令されたせいだ。日本中が一斉に巣ごもり生活に入り、外出を控えた。それによりテレビを見る人が急増したのだ。

2021年4月クールはちょうど第4波に当たるが最初ほど大騒ぎにはならずステイホームも減った。するとゴールデンタイムのPUTは5%減少した。元に戻ったのではなく、さらに下がったのが驚きだ。

そして今年、いっそうPUTは下がり、元に戻るのは絶望的になった。2019年に比べて4.2%も下がってしまったのだ。原因は、断言できるほど明確なデータはないものの、映像配信サービスにテレビを取られたせいと考えられる。

結線されたテレビが増え、家の中で普通にWiFiが飛ぶ状況で自然とテレビでネット経由の配信動画を見るだろう。2020年の巣ごもり生活でテレビ放送の視聴が増えた一方で、配信を試しに見る人も増えた。その結果、放送から人々が離れ配信が日常化していったのだ。

視聴率がCM収入と直結しない?

さて本題はここからだ。テレビ局の放送収入は視聴率に比例すると思われている。また視聴率全体が上下すると全局が同じ傾向で放送収入も上下する。

ところがまず、2020年4月にPUTは大きく上がったが放送収入は大きくダウンした。以下は、2020年度第一四半期の決算資料からタイムとスポットの放送収入、つまり放送局の屋台骨である5局のCM売上を取り出して表にしたものだ。

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視聴率が4%も上がったのに、各局とも大幅ダウン。特にスポットは30%前後急減している。

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逆に2021年は視聴率が5%も下がったのにスポット収入は50%程度上がっている。この2年は視聴率と放送収入が反比例して推移したことになる。

もちろんコロナのせいで、日本中が萎縮する中、企業が一斉に広告活動を控えたのが2020年、コロナに慣れていい加減動かなきゃと広告活動を活発化したのが2021年だった。

2022年の放送収入が下がったのは、ウクライナ侵攻などでまた経済全体が萎縮しているのは大きいだろう。だが一方で、ネットに広告費をシフトしたせいでもある。テレビ受像器だけでなく、ネットを使う時間がコロナが常態化する中で増えたのだ。接触時間が増えたメディアに広告費をシフトするのは当たり前だ。

民放連は大々的な調査でネット広告よりテレビCMの方が効果が高いと主張している。その主張自体はまったくその通りだが、それは人々がテレビとネットに同じ時間を費やすならの話だ。テレビ放送でCMに接触する人がどんどん減っている中で、テレビCMの優位性を主張してもスポンサーには響かない。それがわからないのかと不思議で仕方ない。

局による戦略の違いが放送収入の差に出た?

ここで、同様の放送収入の表の2022年版を見てもらおう。

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