テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年08月号

「デジ放検」まとめにあえて今さら入れたいツッコミ

2022年08月02日 10:27 by sakaiosamu
2022年08月02日 10:27 by sakaiosamu

MediaBorder購読者の諸兄なら注目してきた方も多いと思う。総務省の有識者会議「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する検討会」がとりあえず一旦終了したようだ。終了と言ってもこれでおしまいではなく、どうやらメンバーを入れ替えて新たなテーマで議論するらしい。現メンバーでの議論を終えたということだろう、7月29日の第13回の最後には座長である早稲田大学大学院教授・三友仁志氏が最後の挨拶を述べておられた。

どんな内容だったかは総務省のWEBサイトに掲載されているのでじっくり確認してもらいたい。

デジタル時代における 放送の将来像と制度の在り方 に関する取りまとめ(案)

53ページにも渡る長大な文書だが、役所の文書の割に平易な文体で構成もわかりやすく読みやすいと思う。この会議は運営も手際がよく総務省もずいぶん変わったように感じている。

ここでの議題はテーマを「攻め」と「守り」に分け、「攻め」では放送番組のネット配信の在り方を扱った。だが正直こっちは本格的議論は後回しになった感がある。むしろ「守り」の議論が際立ったのがここまでだったように思う。

ツッコミ1:ミニサテ局のBB代替の実現は、ローカル局の同時配信の実現?

まず、インフラについての「守り」が多様に議論に上った。何度も出てきたのが「ミニサテ局のBB(ブロードバンド)代替」だ。地上波テレビ局は域内に数多くの中継局を建てて「あまねくすべての人びと」に電波を届けようとする。最も末端がミニサテライト局だが、コストの割にカバーできる人数は少ない地域で、それでもメンテナンスを続けることが経営上重荷になりはじめていた。

ミニサテ局のエリアは電波での中継だけで頑張り続けるのではなく、BBつまりインターネットでの代替を選択肢に加えてもいいのではないか。これが「ミニサテ局のブロードバンド代替」だ。電波に拘り続けるのが大変なら通信に替えればいい、というのは前向きな発想だし、それにより放送が届かないエリアを少しでも無くすのは素晴らしい考え方だと思う。

ただ、検討会では出なかったツッコミを入れてみたい。そこがネットでいいなら全部ネットもありじゃね?ということだ。しかもミニサテ局に替わるブロードバンドで配信されるのは該当エリアの地上波局の番組のはずだ。鹿児島県の離島にネット配信で届くのは、鹿児島エリアで放送する4つの地上波局のはず。

そうすると、域内の末端の地域では、地域制御された形での同時配信が行われることになる。それを実施するなら、同じことを鹿児島県全域でやってもいいのでは?

つまり「ミニサテ局のBB代替」が実現するなら、同時にエリアごとにローカル局の同時配信が実現できてしまうのではないか。だったらやっちゃおうよ。これについてはどうなのだろうか。

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