テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年08月号

ケーブルテレビに学ぶ「メディア=コミュニティ」

2022年08月30日 10:29 by sakaiosamu
2022年08月30日 10:29 by sakaiosamu

(↑トップ画像はケーブルコンベンションWEBサイトよりキャプチャー)

1ヶ月も経ってしまったが、遅ればせながら7月28日に行われたケーブルテレビ業界のイベントから記事にしたい。

毎年この時期に、ケーブルコンベンションのタイトルでこの業界最大のイベントが開催される。東京国際フォーラムで「ケーブル技術ショー」という展示会が開催され、セミナー会場では様々なカンファレンスが行われるのだ。コロナで2020年、2021年はオンラインのみだったため、3年ぶりのリアル開催となった。

筆者はここ数年、このコンベンションの一環として実施される「ベストプロモーションアワード」で審査員を務めている。プロモーションというタイトルだが、チラシ部門・映像部門に加えてグッドプラクティス部門という企業活動の審査もある。そのため、ケーブルテレビ業界の大きなトレンドもわかるアワードだ。

各部門ごとの賞や協賛社の賞など様々な賞が選ばれるが、この記事では、準グランプリとグランプリの作品を紹介したい。

野菜の生産からクラフトコーラ事業へ

グッドプラクティス部門から準グランプリに入ったのが入間ケーブルテレビの「ベジコーラ」だ。その誕生の背景を解説した番組がYouTubeにアップされている。

ケーブルテレビの会社はメディア事業だけでなく様々な事業に取り組んでおり、入間ケーブルテレビはスマイル農場という野菜生産も行っていた。

最近、クラフトビールに続いてクラフトコーラも密かなブーム。入間ケーブルはコロナ禍による物流激減で悩んだ末、野菜を元にした飲料の開発を発案。地域ですでにクラフトコーラを製造していた、ときがわブルワリーに相談して、地元の農家が生産するゆずも使った野菜のコーラ、ベジコーラが生まれたのだ。

ケーブル局制作の映像と発信力により話題となり、埼玉県商品AWARD2021に入賞。順調に販売実績を積み重ねているという。ケーブルテレビ局が地域企業の集約基地として機能した例だ。地域メディアの可能性を示す事例でもあると思う。

南こうせつ氏の曲で人々を迎える「おかえりの唄」

もう一つの準グランプリが、大分県杵築市の杵築ど〜んとテレビ「おかえりの唄」だ。

城下町の風情が売りの杵築市もコロナ禍で観光客が減り大打撃を受けた。また町を出た人々の帰省も制限され活気が失われた。

会えなくなったからこそ、「おかえり」と町のみんなが迎える映像を作ろう。実は杵築には南こうせつ氏が40年間住んでいる。そのことをみんなは知ってはいたが、静かに暮らしているからとあまり交流してこなかった。映像に曲の提供をおそるおそるお願いしに行ったら、快く無償利用許可をくれたのが「おかえりの唄」だった。これをベースに、杵築市のプロモーション映像として制作されたのがこの動画だ。

(動画の埋め込みがうまくいかないので下のリンクを押してください)

「おかえりの唄」イメージビデオ

 まさに杵築市の皆さんが「おかえり」と迎えてくれる映像だ。杵築の人に限らず、日本人なら見ているときっとホロリとくる懐かしさに満ち溢れている。杵築市役所はじめ、町の様々な場所で流されているという。

この歌について南こうせつ氏が語る映像も探すとすぐ見つかるのでぜひ見てもらいたい。グッとくる話が聞ける。(テレビ番組の海賊映像かもしれないのでここではURLを掲載しないでおく)

世界中の岐阜県民が同時に郡上節で踊る

さていよいよグランプリだ。CCNという、岐阜県の中心部分をエリアとするケーブル局による「岐阜県人会インターナショナルと連携した取組み」というタイトルの作品だ。

これも映像があるのだが、3時間以上の長尺なので飛ばし飛ばし見てもらうといいだろう。簡単に説明すると、メディアとインターネットを駆使して岐阜県人の忘年会を、世界中繋いで行ったのだ。

岐阜県人会は日本はもちろん世界中にあり、ブラジルはサンパウロからロサンゼルス、アラスカ、そしてインドネシアなど東南アジアにも広がっている。各地の県人会をZoomで繋いで国境を越えて盛り上がる忘年会の様子をケーブルテレビで放送したのだ。びっくりする企画だが、考えてみれば技術的には困難ではない。

やろうと企画して本当に実行したのが面白いと思う。CCNだけでなく、岐阜新聞、岐阜放送とも連携し、地域メディアの力を結集しているのも素晴らしい。長い動画の1時間15分あたりで郡上節を民謡歌手の方が歌い、それに合わせて郡上おどりを世界中の岐阜県人が踊る場面があり、胸熱になる。

この企画には様々な側面で学べるものがある。CCNの方が言っていたのは、広告ビジネスの可能性だ。「岐阜県人」という替えようのない価値がここにはあり、協賛したい企業は数多くあるだろう。ありていの広告効果を超えた魅力がそこにはある。

私が感じたのは、「メディア」の意義の広がりだ。これまでのメディアは作り手がより多くの人にコンテンツを見てもらう装置だった。だがそれはメディアの一面に過ぎない。本当のメディアの存在意義は、人が集まることそのものにあるのではないか。

もちろんここにも「グローバルな忘年会」や「郡上節」といったコンテンツがある。コンテンツに人が集まるのだ。そしてサンパウロやアラスカなど世界中の岐阜県人が踊る時、そこにいるのは視聴者ではなく参加者だ。共通のアイデンティティを持つ人々が集まる場こそがメディアなのだと、この企画が教えてくれる。

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