テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2024年02月号

X(Twitter)は告発と攻撃の場になってしまった(最初はおだやか空間だったのに)

2024年02月01日 10:38 by sakaiosamu
2024年02月01日 10:38 by sakaiosamu


※画像は「スマートフォンの中でたくさんの人たちが激しく口げんかしている 」と入力して生成されたもの

芦原さんの死で、逆に増える脚本家への攻撃

「セクシー田中さん」の原作漫画の作者、芦原妃名子さんが自殺したニュースには大きなショックを受けた。ドラマ放送時は毎回欠かさず見ていたのに。
だが私はここで「誰が悪いか」の追及はしたくない。ただ、今のテレビドラマ制作についてはかねがね問題があると感じていたので、これについては別途書こうと思う。
それより、今回の件ではっきりしたのが、SNSがすっかり殺伐とした場所になっていることだ。芦原さんの件で言うと、「脚本家が悪い」と攻撃する人があまりにも多い。だが芦原さんは、今回のプロセスを自分が書き綴ったことで彼女自身が攻撃されたわけではなく、脚本家への攻撃が殺到したことを気に病んだようだ。それは最後の投稿にこう書かれていることから推測できる。

だが驚いたのは、彼女の自殺が伝わると、脚本家への攻撃のボルテージがますます高まったことだ。どう見ても、自分の投稿がもとで脚本家が攻撃されたことを憂いていたのに、攻撃がさらに高まるのはどういうことかと思う。
ここで私が言いたいのは、このままではX(Twitter)がコミュニケーションの場として終わってしまいかねないことだ。痛切に感じているのが、いつのまにかXは誰かの悪事を暴露したり、それをもとに一斉に攻撃する場になってしまったこと。芦原さんの件でも「脚本家を責めるのは芦原さんの意志ではないはず」という投稿に「原因を作ったのは脚本家だ!」と噛み合わない議論を吹きかける人がいた。あいつが悪いのだから攻撃して何が悪いのだ、という姿勢。
と思っていたら、こんな記事があった。

何かを批判したい人がX上で増え、何か言ってやろうとウズウズしながら投稿を見ているのだろう。

X(Twitter)とはネットの声でありバズを生む場だった

Xとは悪人を見つけて攻撃するための場であることが、すっかり共通認識になってしまったように思える。みなさん、そういう前提でXを使い、悪人が見つかったらそれ行けと集中砲火を浴びせる。それがXなのだと、みなさんが捉えているのではないか。
そのせいか、誰かを告発する投稿も増えた気がする。もちろん、長い間我慢し黙っていたことを告発することはいけないことでは決してない。黙っているより発した方がいい。ただ、いまあまりにも告発が多いのだ。そして告発を見つけたらすごい勢いで大勢の人たちが飛んできて告発された人物を罵倒し始める。

画像

Xで何かを言うのがものすごく怖くなってきた。
さらに、トレンドワードに乗っかっただけの意図不明な投稿が増えた。イーロン・マスクの方針変更の一つに、プレミアムアカウントを取得するとビュー数に応じた支払いを受け取るシステムがある。これを利用し、とにかく何がなんでもビュー数を獲得するために、何種類ものトレンドワードを貼りまくって奇妙な画像をくっつけた投稿が多いのだ。
X(Twitter)とはイコール、ネットの声だった。スポーツ紙の記事でよく「ネットではこんな声が上がった」と紹介されるのは、Xの投稿のことだ。SNSはいろいろあるが、オープンな発言が中心なのは今もXなのだから。
また「バズる」のも要するにX上で何度もリポストされることであり、他のSNSはバズを生まない。
つまりネットとはXのことであり、SNSの中心はXなのだ。比喩的に言うとインターネットの血流のようなもの。Xがなければネット上のどこに何があるかが伝わらなくなる、拡散されなくなるだろう。血がドス黒くなり、あちこちで固まって動脈硬化を起こしかけている。
X(Twitter)の終わりが近いのだと思う。今後、ぐんぐんユーザー数が減っていき、攻撃したい人たちだけが残るのではないか。それでも私は、自分の活動の告知に使い続けるだろうが、もうこれまでほど反応を期待できない。それより怖いのは、ちょっとしたことで攻撃者たちが殺到してなぜか炎上してしまうことだ。

見知らぬ人々と出会える穏やかな空間だった

私は映像制作会社ロボット(「ゴジラ-1.0」もこの会社制作!)で経営企画室長をやっていて、2008年ごろからブログを書いていた。友人に「とにかくやりなさい」とTwitter(当時)を勧められたが、最初は何がなんだかわからなかった。
ブログは本名を隠して「我々プロダクションやデザイン会社はネットの時代になるとテレビ局や代理店に頼れなくなるぞ」と、業界環境を見て警鐘を鳴らすような内容だった。仲間内で1日50人くらいが読んでくれるブログだった。
ある日確認したらPV数が2000以上になっていた。どういうことだ?

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