テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2021年07月号

「シナぷしゅ」とGU babyのコラボで考える、テレビ番組のポートフォリオ

2021年07月19日 15:10 by sakaiosamu


※画像はGU babyの「シナぷしゅ」とのコラボ紹介ページより

 

3月にテレビ東京「シナぷしゅ」について、コンテンツ統括プロデューサー・飯田佳奈子氏に取材した記事を書いた。

「シナぷしゅ」は番組というより、育児を支えるツールにしたい

この時、「6月に大きなコラボが世に出る予定」だと飯田氏が語っていた。そのコラボとはジーユーが送り出したベビー服ブランド、GU babyが相手だった。言葉通りの「大きなコラボ」だ。飯田氏と、GU babyの担当者である平松修吉氏に取材し、東洋経済オンラインに書いた記事が、先週金曜日(7月16日)に公開されている。

「GU」が話題の赤ちゃん番組とコラボした深いワケ〜テレ東「シナぷしゅ」Tシャツが大人気で即完売

ここでは、このコラボが持つ意義をメディアの将来像の視点で解説したい。

キャラクター使用ではなく共同開発という企業との組み方

東洋経済オンラインでの記事の中で飯田氏、平松氏双方が強調していたのが、このコラボがこれまでの「キャラクター使用契約」とはまったく違うことだ。

結果として、記事中にもある通り「シナぷしゅ」のキャラクターがGU babyの服に使われている。ただしそれは結果であって、キャラを使うことがコラボの目的ではなかった。平松氏のこのコメントをあらためてピックアップしたい。

「赤ちゃんの服って何だろう、と悩んでいたのです。おうち時間が長くなり、自宅での日常生活で赤ちゃんの感性を養うにはどうしたらいいかとの声も届いていました。“感性を育む”役割も赤ちゃんの服にあるのでは?シナぷしゅを作っている人たちは赤ちゃんのことを真剣に考えているようだしセンスもいい。お話を聞いてみたいと思ったのです」

今の時代に合ったベビー服とはどんなものか。真剣に考えたいから、同じように赤ちゃんに真摯に向き合っている「シナぷしゅ」の制作者に会ってみたいと考えたのだ。ちなみに平松氏自身が「シナぷしゅ」を知っていたわけではなく、子育て中の同僚部下たちから自然と名前が出たそうだ。その際の言い方から「赤ちゃんのことを真剣に考えている」と感じたのだろう。

熱は伝わる。SNSの時代になって、SNS以外についてもそんな現象が起きるのを見てきた。「シナぷしゅ」という番組から、あるいはそれを語る視聴者から熱が伝わったのだ。

「会ってみたい」が最初の目的であり、最終的にキャラクターを服に使ったが、結果に過ぎない。「真剣に考えている」ことのほうに重きがあった。それがコラボにつながったのであり、キャラクターよりも実は制作者の熱に経済価値があったのだ。考えてみると驚くべきことであり、またそういう時代なのだと思う。作り手の「思い」が経済価値を持つ時代なのだ。

「思い」が経済価値を持つ、とは抽象的だが間違いとも思わない。そういう現象が今コンテンツ界で起こっているし、テレビ番組のポートフォリオを考える上で重要な視点になってきたと考えている。

テレビ番組のポートフォリオはどう組み立てるべきか

「テレビ番組のポートフォリオ」とは、2016年に私が書いた書籍「拡張するテレビ」の中でこんな図で示した概念だ。

ポートフォリオ

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