テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年10月号

ここ数年、テレビ局の視聴率も収益も乱高下しているのを、知っておいた方がいい

2022年10月24日 13:38 by sakaiosamu
2022年10月24日 13:38 by sakaiosamu

のところ、テレビ業界やテレビ番組についての記事を見かけると強い違和感を感じることが多い。先日も「ちむどんどん」が「2010年以来視聴率ワースト1」との記事への違和感について書いたが、その後も例えば、「夏ドラマは不作で視聴率2桁のものが1つしかなかった」のような記事を見かける。いまだにコロナ前の感覚で番組について語っているようだ。令和に入り、コロナの影響でテレビ業界は状況にむちゃくちゃに振り回されている。視聴率も収益も乱高下しているので、これまでの感覚で捉える意味がなくなっていることに気づいてもらいたいと思う。

画像 2019年度〜2022年度第1四半期の状況をグラフ化

そこでこんなグラフを作ってみた。オレンジの線は、2019年度から2022年度の決算資料から在京キー局5局の「放送収入」に当たる数字を合計したものだ。関東地区のCM収入の合計値、つまり放送が得た広告売上の推移だ。

見てわかる通り、2020年に大きく下がった。コロナ禍により激減したのだ。それが2021年には盛り返したが、2022年になるとガクンと下がっている。

PUT(テレビ放送の個人視聴率の合計)は逆に2020年にグンと上がった。コロナで巣ごもり生活を強いられたからだ。これが2021年にガクンと下がり、2022年もまた下がってしまった。

つまり放送収入と視聴率が2020年、2021年と逆の動きをしていたのが、2022年は一緒に下がったということだ。この先どうなるかはわからないが、おそらく「一緒に下がる」傾向は続くだろうと、私に限らず考えているようだ。

民放連は放送業界を鼓舞する役割もあるせいか、見通しをやや甘く予測する傾向があると感じているが、その民放連でさえ、2022年度下期もそして来年度も、放送収入の減少が続くと見ているそうだ。

「乱高下」の期間は終わり、今後は「ダダ下がり」になっていく。その未来は決まっている。下がると決まっているが、放送がなくなるのではなく、テレビ、そしてスマホでの映像コンテンツとの接触の仕方が変わり、その中で放送コンテンツは比率は下がってもそれなりのポジションを確保することになる。問題は、そのスピードであり意欲であり、マネタイズの発想だ。ぼーっとしているとひたすらダダ下がるだけになる。

画像

テレビ受像機の使われ方が、左から右にシフトしている。その変化がコロナによって加速したのがこの2年間だった。テレビ受像機の利用時間のざっくり半分が放送を見る時間になり、放送収入はそれに見合って減るだろう。

これまでの放送の面積の半分くらいを配信サービスが占める。その半分が有料のSVOD、残り半分が無料のAVODになる。またスマホでの映像コンテンツ視聴も増えている。同じように有料と無料が混在している。さらに重要なのがテキストメディア。テレビ局の主にニュースもそこに入り込み始めている。今後の広告収入を考えると実は非常に重要なメディアになるだろう。

先日ある大学で講義をした。関東の標準的な偏差値の大学で、メディア関係の学科なのでそれなりにテレビにも興味を持っている学生たちだ。彼らにたくさん質問をしたのでいずれ記事にするが、ここで一つだけ紹介しよう。

画像

テレビで一番見るのはどれか、との問いに4割が「民放のテレビ放送」と答えた。残りは緑のYouTube、紫の有料配信(Netflixなど)だった。たまたまだが、まさに上の図で示した、半分が放送で残りは有料と無料で半々、という在り方と一致した。彼らがこのまま社会人になり家庭を持つと多少変化もありつつ、こんな感じで進むのかもしれない。

つまりテレビ局にとって、ダダ下がる放送収入を守りながらもいかに有料無料の配信で居場所を獲得するかが今後の勝負になる。

これは2010年台から私に限らずメディアについて情報発信する人々みんなが言っていたことだ。はっきり言ってここまでは業界全体が大きく出遅れた。これからどう巻き返すかだ。

そんな状態で視聴率がどうのと言っていても仕方ない。番組の価値を語るならせめて、配信も含めてどう見られているかを語るべきなのだ。数字の把握は大変だが、「視聴率最低」などと記事を書いても仕方ないことにみんな気づいてもらいたいものだ。

テレビ局にとって今後、放送と配信をどう操るのかがいよいよ課題になってきた。そんなテーマのセミナーが10月28日に開催される。毎年SSk新社会システム研究所の主催で、私が企画しMCも務めてきたセミナーだ。ご興味あればお申し込みを。

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