テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年05月号

最新の放送技術を見に行ったら、7年前から進んでなかった件について

2022年05月30日 15:07 by sakaiosamu

放送と通信をシームレスに視聴できるこれからのテレビ

先週、NHK放送技術研究所で「技研公開2022」が開催された。今回は感染対策のため完全予約制で人数制限を行なっており、私は5月27日(金)11時に予約したら、この時間に限って大変な土砂降り。ジーンズの膝から下がすっかりずぶ濡れの状態で展示を見て回った。

タイトルを「進んでなかった」と嫌味な感じで書いてしまったが、それは後述するように思いを巡らせた感想で、実際には3年ぶりのリアル展示の数々に感心した。地下一階に並んだVR、AR関連の展示では並ぶ必要があるものもあったが、積極的に並んで様々な体験を堪能した。

だが展示の中でいちばん関心を持ったのは、1階の最初の展示、放送と通信がシームレスに視聴できるテレビ画面だった。その画面は撮影不可だったので、仕組みの構造図の方を見てもらおう。

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テレビ受像機で放送経由と配信経由の番組を一緒にしてしまい、必要に応じて放送と通信を使い分けるもの。「シームレス」というのがキーワードだ。それをNHKだけでなく民放の番組も同じ仕組みで視聴できるモデルだった。

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同じことを、地域ごとに対応できる、という仕組みも展示されていた。大阪にあるテレビ受像機ではNHKと関西民放の番組を同じように放送と通信を「シームレス」に表示できる。

NHKだけでなく民放も、というのはTVerで同時配信が始まった今、リアリティを感じる。さらに、ローカル局はどうなるのか示されていない現状で、技術的には放送と同じような地域制御は可能だと示してくれた。

放送と通信の両方をテレビ受像機で表示できると何がいいか。現在の番組を中心にしながらも、過去の番組は「見逃し」の形で見られるようにし、未来の番組を「次の番組」リストで示せることだ。過去・現在・未来の番組をリスト化でき、いつでも見られるもしくはあらかじめチェックできる。「現在」に縛られていたテレビの時間軸を過去と未来両方に拡張できる点だ。

それが地域の放送局に準じて全国で対応できるなら、今のテレビの姿を壊さずに通信との融合を果たせる。テレビがそのまま自由さだけ拡張されるのはテレビの進化の理想だと感じた。

2015年の技研公開にもあった、ほぼ同じ考え方の展示

午後には雨も止み、ランチを楽しんで帰宅したのだが、雨に打たれた疲れでぼーっとしてしまった。展示を思い出しながら考えていたら、おや?と気づいた。時間軸の展示は、前にも見た気がするぞ。
技研公開を見に行っていたく感心したことを、何かの記事に書いたのを思い出した。それがこのAdvertimesの記事だ。

記事の前半では、世帯視聴率を指標にしているテレビは、番組が完全にF3に向けられ、若い世代はそっぽを向いていることを書いている。このままだとテレビ視聴が縮小してしまう。

そんなことを書いた上で、後半でNHK技研公開で見たテレビの進化したモデルを紹介している。記事に使ったのはこの写真だ。

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上から「これから」「リアルタイム」「みのがし」と表記され、テレビの時間軸を過去と未来に拡張したモデルだ。これ、今日見たやつやん。もちろん、民放の番組は表示されていないし、大阪での見え方は示されていない。だが基本的な考え方は同じだ。

これ、いつだっけ?記事の日付を見たら2015年6月1日だった。5年くらい前かなと思ったのだが、7年も前だった!うーむ。今日感心したテレビの未来像は、今日見せてくれたNHK自身が今日見たNHK技研公開の場で7年も前に展示していたものだった。民放や地域という要素は加わっているけれども、基本的な考え方は同じだった。しかも私はそれを記事に書いていたのを忘れて今日、新しさに感心してしまった。

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