テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年05月号

ローカルだって同時配信!KBCが朝の情報番組を毎日ネットで生配信しはじめた

2022年05月13日 09:48 by sakaiosamu
2022年05月13日 09:48 by sakaiosamu

ローカル番組「アサデス。KBC」が毎日同時配信

KBC九州朝日放送は福岡県のローカル局で、MediaBorderでは和氣靖社長が打ち出した理念と、その具現化である「ふるさとWish」について何度か取材してきた。私自身が福岡出身であることもあり、その地域に根ざした活動には注目している。
そのKBCが今度は、同時配信に取り組み始めた。「アサデス。KBC」という朝6:00-8:00の看板番組で、ローカル局が月金で毎日情報番組を放送している時点で大変なことだと思うが、これを放送と同時にネットでライブ配信するのだ。「どこでもアサデス。」のサービス名で、4月18日からスタートした。キー局がようやくTVerでリアルタイム配信を始めたこのタイミングで、ローカル局が単独で毎日配信を始めるとは。これは話を聞きに行くしかない。
「ふるさとWish」で取材した大迫順平氏にコンタクトしたところ、やはり今回の同時配信も同氏の管轄だという。「アサデス。」のGPとして番組を育てた大迫氏は現在、全社横断タスクフォース責任役員の肩書きで、つまり部署の垣根を越えた新しい取り組みを担当している。コロナ禍で丸2年行けなかった福岡へ行き、4月26日にKBCを訪ねた。大迫氏から同時配信の担当者として紹介を受けたのが、「アサデス。」ゼネラルプロデューサーの野村友弘氏と、技術面を担当する総合編成部の水口剛氏だった。

画像 左から、水口氏と野村氏

「アサデス。KBC」について説明しておくと、福岡県民ならおそらくみんな知ってる人気番組で、何しろ福岡の地域情報を毎朝放送している。目玉はもちろんソフトバンクホークスの試合を翌日丁寧に解説するコーナー。また芸能情報もこってり扱う盛り沢山の内容だ。この番組がKBCの現在の躍進を支えてきた。
その「アサデス。」が同時配信を実施する意義について、野村氏はこんなチャートで説明してくれた。

画像

視聴率同時間帯1位の「アサデス。KBC」だが、やはり若者層へのリーチは課題だった。また「アサデス。」はKBCにとっての大きなブランドであり、10時からの九州山口地区の系列局との連携番組「アサデス。7」やKBCラジオの「アサデス。ラジオ」、そしてイベント企画「アサデス。ライブ」などに展開してきた。「アサデス。」アプリを通しての「どこでもアサデス。」によりクロスメディア化をネットにも広げるのが目的だ。
野村氏はさらに「社員全体のDX意識改革も裏テーマでした。」と語る。「次のステージに行けば見えてくることを、関わる社員みんなと共有するのも目的の一つです。実際にやってみることで初めてわかることがこの一週間でもたくさんありました。看板番組である「アサデス。KBC」のクロスメディア化は、変わろうよというメッセージでもあります。」深夜などではなく、月金ベルトのKBCを支える番組だからこそ、同時配信の社内的波及効果があるのだろう。

追記:ちょうど昨日(5/12)キッザニア福岡に「アサデス。KBC」のパビリオンが誕生することが発表された。これも「アサデス。」クロスメディア化の一環と言えそうだ。以下のリリースページを参照されたい。https://kbc.co.jp/file/pr.php?id=145


「アサデス。」アプリは元々、愛媛県の南海放送アプリをベースにしている。同アプリはKBCだけでなく多くのローカル局に南海放送がエリアも系列も越えて提供しており、各局が独自にカスタマイズして活用している。同時配信を始めるにあたっても、水口氏が南海放送の担当者に相談しながら機能を加えていったという。アプリのダウンロード数は今回の同時配信でまた増えて、19万を超えて20万が見えてきたそうだ。
また同時配信にはCDNを強化して同時に多くのアクセスがあっても耐えられるようにする必要がある。水口氏は「サービスが落ちるとイメージが悪くなるのでかなり増強しました。突然の災害が起こるとアクセスが急増する可能性もあるので、当面はそのままで行くつもりです。」と説明してくれた。
ここまでが「基本情報」だが、おそらく多くの放送関係者が気になるのは著作権処理についてだろう。ネットでは配信できない部分についてのいわゆる「フタかぶせ」ではユニークな手法を取った。

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