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2022年03月号

ローカル局が同時配信やってみた!〜ミヤギテレビ、夕方ワイド「311特集」での試み〜

2022年04月01日 09:11 by sakaiosamu
2022年04月01日 09:11 by sakaiosamu


画像はミヤギテレビ「OH!バンデス」WEBサイトより

この4月からキー局の同時配信が出揃う。そうなると次に気になるのは、ローカル局がどうするかだ。ほとんどの局が16時前後から「夕方ワイド」と呼ばれる地域の情報番組を放送している。通勤通学の時間帯と重なり、帰宅途中に電車の中などで番組の同時配信を見ることができたら便利だろう。実はプライムタイムより夕方ワイドの方が同時配信のニーズが高いのではと筆者は考えている。だがローカル局のそういう動きは伝わってこない。
と、思っていたら「動き」が出てきた。日本テレビ系列のミヤギテレビがこの3月11日に、夕方ワイドを2時間同時配信するというリリースが筆者のもとにも届いた。

2022年3月11日(金)東日本大震災から11年のこの日 宮城の今を、地上波放送とインターネット同時配信でお伝えします。
※OH! バンデスは 1995 年 4 月の放送開始以来、初めてのインターネット同時配信を行います。
THEME 忘れない 繋ぐ声
番組のテーマは「忘れない 繋ぐ声」。 東日本大震災以降、番組の企画「がんばろう宮城!」でこれまで取材し放送してきた 映像を交えながら、宮城県内各地の今をお伝えいたします。 震災の記憶を風化させず次の世代へ教訓として伝え続けるためにも「OH! バンデス」を 宮城県の皆様のみならず、1人でも多くの方にご覧いただき、被災地の今を知ってもら いたいと考え配信を決定致しました。

ミヤギテレビ・リリースより

ミヤギテレビの夕方ワイドは「OH!バンデス」のタイトルでさとう宗幸氏が総合司会の人気番組だ。これが同時配信されるのは興味深いと、3月11日当日にライブで見ようと思った。ちょうどワクチンの予約と重なってしまったのだが、接種会場で待つ間、途切れ途切れながら見ることができた。常時2000ほどのアクセス数でこの日だけの試みにも関わらず大勢見に来たことに驚いた。さらに驚いたのが、コメント欄に中国語が並んだこと。どうやら羽生結弦ファンのようだ。なるほど仙台発の同時配信にはこんな視聴者がつくのかと感心した。
さて気になるのが、この同時配信はどれくらい大変だったかだ。ミヤギテレビは昨年、総務省実証実験に参加し実施を取りまとめる役割を担った経験がある。とは言え、権利処理など様々な困難があったのではないか。

地域の情報をエリアを超えて伝える意志を持ちたい〜宮城県民放4局同時配信実証実験を終えて〜

そこで後日、ミヤギテレビに取材をお願いした。報道制作局局長の水本豊氏と編成業務局局長の昆野俊行氏が応じてくださった。どれくらい大変だったかを聞くのだが、大変さよりもむしろ初めての試みに楽しんで取り組んだ様子が伝わってきた。思いの外、興味深い話もたくさん出てきた。(当初の取材日の前夜に大きな地震があり、一旦延期してからの取材となったことを書き添えておきたい)

同時配信の課題はアイデアを出し合いクリアした

報道制作局局長・水本豊氏(左)と編成業務局局長・昆野俊行氏(右)

311の同時配信となると、少なくとも2月から準備を始めたのではないか。そう私は考えたが、準備開始のタイミングを聞くと意外にも「10日前です」と返事が返ってきた。
これまで311と言えば特番を組むのが常だった。それが11年目の今年は初めて、当日が通常編成になった。平日なので夕方ワイド「OH!バンデス」の中で311を振り返ることになる。「いつもと同じ番組で、いつもと違う311特集をやることになるだろう。」と昆野氏は考えたという。
「だったら県外の人にも届けられないか」と思いついて水本氏に「同時配信やってみない?」と声をかけたのが10日前だった。会議の席でさえなく、たまたま顔を合わせた際に。お二人は同期入社で気安く話せる関係だった。
「OH!バンデス」は長年続く看板番組で、11年目にして通常編成の中で「OH!バンデス」が何をやるか、広く伝える意義があると考えたのだ。
受け止めた水本氏は現場に声をかけ、昆野氏ら編成、ビジネス開発(配信実務部門)とのミーティングを持った。それが1週間前だったそうだ。
勝手に想像したのは、その会議の場で同時配信にあたっての課題が噴出し、みんなで頭を抱えたり、負担が増えると制作現場が怒ったりする場面だが、逆に「アイデアがたくさん出て課題をクリアしていきました」とお二人が楽しそうに語ってくれた。もちろん制作スタッフは課題を細かに洗い出し持ってきてくれたが、だからできない、という姿勢ではまったくなかったのだ。
例えばオープニングタイトル。制作チームは普段通りそこから番組を始めたい。編成は著作権の問題があるならなくてもいいのではと考えてしまう。議論した結論は、「問題があるパートは放送するけど配信では見せない」というものだった。オープニングタイトルはいつも通り放送するが、その場面は配信はしない。同じように、配信できない箇所はCMの前後に持ってきて、放送はするが配信ではCM中断にくっつけて映像を出さない。そんなことで多くの課題はクリアできたという。


配信時、CM中に使われた画像

そのために配信チームがサブに入って、オンエアを見ながら切り替えを行なった。配信でよく「フタをする」と言うが、番組をうまく構成することで、フタをするのではなくCM時間を巧みに使って対応したのだ。
困り果てたり対立するのではなく、会議でみんなでクリアした。どうしたらうまくいくかを、みんなで知恵を出し合って解決した。だからと言って制作チームがこだわりを諦めるのではなく、できる限りそのまま実現した。放送局が新しいことに取り組む際の理想的なチームワークではないだろうか。

さらに関係者や当日の反応を聞いた。

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