テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2022年03月号

コロナはコネクテッドTVをどこまで進めたか「情報メディア白書2022セミナー」

2022年03月07日 20:06 by sakaiosamu
2022年03月07日 20:06 by sakaiosamu

メディア動向を追う人にとっては恒例の「情報メディア白書セミナー」が今年も3月15日(火)に開催される。2020年にはコロナ禍で延期して会場で開催、昨年2021年はオンラインでの開催だった。今年は会場でもオンラインでも聴講できるハイブリッド形式。参加者の都合に合わせて聴講できるので、この機に申し込みをお勧めしたい。

MediaBorderでは開催直前のこのタイミングで、毎年このセミナーを担当してきた電通メディアイノベーションラボ統括責任者・奥律哉氏と、同ラボ主任研究員の森下真理子氏に取材した。「日本の広告費」の発表から「情報メディア白書セミナー」の開催が2月から3月にかけての恒例だが、今年は奥氏の担務になってから12回目に当たるそうだ。2011年の地デジ化からも干支でひとまわりで、メディア動向の節目とも言えるかもしれない。筆者にとっても年中行事となった本セミナーの今年のポイントを聞くと、やはりコネクテッドTVにフォーカスされるようだ。

 

コネクテッドTVを軸にすると3層に分かれる

奥氏と森下氏が発表する本セミナーのセクション1では、例年通り最新のメディア動向を一通りおさえつつ、コネクテッドTVが一つの核になりそうだ。電通メディアイノベーションラボでは2021年秋にコネクテッドTVについての調査を行った。私たちはメディア接触についてスマホネイティブの若年層とテレビ主体の中高年と2層で捉えがちだが、今や40〜50%にまで普及したコネクテッドTVで見ると3層に分かれるという。
ティーンと中高年の間の20代〜30代の社会人がコネクテッドTVでもっとも動画サービスを視聴する世代で、PCでの視聴を超えてきている。
「社会人になってリビングルームのテレビを自分で占拠できる人たち、ということだと思います。」と奥氏は言う。
親元で暮らすティーンはスマホ中心。スマホネイティブだからだが、テレビを親が占拠しているのも大きいだろう。彼らのスマホ利用の様子も気になる。
「コロナ禍になり最初は巣篭もりでテレビ放送の視聴が増えましたがやがて下がり、結局はスマホ利用が思い切り増えました。中でもスマホ利用を維持しているのがティーンです。」
ではテレビとスマホの視聴はどれくらい重なっているのか。その分析を担当する森下氏がこう解説してくれた。
「スマホの普及であれもこれも重複して利用する傾向が、ある時期から若い人はセレクティブになりました。それがコロナになってまた重複利用が増えたように思います。その重なり具合を今、一生懸命に分析中です。」
セミナーではそのホットな分析結果を披露してもらえそうだ。

画像を拡大表示 奥氏、森下氏へのZoom取材画面

さらに奥氏は言う。
「ひと頃は<セカンドスクリーン>と呼ばれ、テレビがメインでスマホがセカンドと言われましたがどうでしょう?ユーザーからすると、スマホがメインでテレビがサブかもしれません。」
だからネットにもテレビコンテンツを出すべきだし同時配信も推進すべし、というのが奥氏の長年の主張だ。ところが逆に今はテレビ受像機にネットのコンテンツが進出している。
同時配信については4年間も総務省の会議で議論された。有識者として参加してきた奥氏は現在の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」にも引き続き出席している。
セミナーには最後にQ&Aの時間があるが、この会議についての質問もしてみてはどうだろう。ふだん聞けないざっくばらんな奥氏の見解が聞けるかもしれない。筆者の目からは、ぜひ聞いて欲しそうに見えたのだが。

「視聴質」測定の試み、TikTokの企業活用も

セクション1の奥氏、森下氏によるプレゼンののち、セクション2では電通ソリューションクリエーションセンターの谷内宏行がユニークな取り組みについて発表する。テレビ放送についてのTwitter分析から「視聴質」を測定するもの。ツイートの全量をAIで分析し、テレビの指標の一つにしようとする試みだ。
「実は<視聴質>の議論は20〜30年前からあり、私も若い頃レポートを作りました。」と奥氏は言う。ただ、スポンサーによって何を「質」とするかは様々で、業界全体の基準にするのは難しかったそうだ。
Twitterが登場してから、これを元にした番組評価の試みも出てきたが、全量をAIで分析することでこの方向性の結論が出るかもしれない。
この手法については谷内氏が昨年11月のビデオリサーチ社のフォーラムでも話していたが、さらにまとまったレポートが披露されるのだろう。
セクション3では天野彬氏が「TikTok売れ」について発表する。若年層の間ではすっかり根づいた動画プラットフォームであるTikTok。最近は様々な企業やメディアがその活用を多彩に試みている。天野氏による、TikTokを中心にした動画のマーケティング活用についての新著がもうすぐ出版される。本セミナー申込者は例年通り最新版の「情報メディア白書」が手に入るほか、この天野氏の新著も後日送付されるとのこと。いつもより少しお得感があるかもしれない。

本セミナーは先述の通りハイブリッド形式。感染を避けるにはリモート参加が一番だが、3回目接種も済んだ方は会場で聴講してもいいのではないだろうか。登壇者に直接会えるだけでなく、いつもの仲間たちに久々に会えるかもしれない。そろそろ、私たちはコロナとうまく付き合いながら、未来へ立ち向かうべき時ではないかと思う。会場でどなたかとお会いできることを、私自身も楽しみにしたい。お申し込みはこちらから↓

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