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2021年12月号

第2回で見えてきた総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の向かう先

2021年12月08日 13:48 by sakaiosamu

Introduction
先月、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」第1回のレポートを寄稿してくれた岩井義和氏から、6日に開催されたばかりの第2回のレポートも届いたので掲載する。前回から、この会議の帰着点が見え隠れしていたが、第2回ではっきりしてきたように感じる。会議の内容をほぼ再現しているので、ぜひじっくりお読みいただきたい。

 

 

 

書き手:岩井義和

(略歴:東京ニュース通信社⇒アクトビラ⇒TVision Insights⇒J:COM⇒IIJ )
yoshikazu.iwai@gmail.com

第一回のレポート記事はこちら

会議傍聴後の所感

12月6日、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」の第2回が開催された。第1回で放政課が示した論点「放送NWインフラの将来像」等に対し、民放連、NHK等がプレゼンを実施した。

民放、NHK双方とも、「あまねく受信」の義務を果たす為に、ミニサテ局等を、ブロードバンド(BB)等、経済合理性のある伝送手段に置き換えていく事に、異論は無いようであった。

ただ、その為には、放送における条件不利地域と光ファイバーが敷設されている地域のandが取れないことには、議論が進んでいかないといった委員の指摘もあり、BBに代替した場合に、本当に安くなるのか、係る費用がどの程度であるのか見えないことには、NHK・民放含めた各局、地域それぞれの事情に応じた方向性の一致を見出すことは難しいといった言が、NHK、民放、双方から見られた。
NHK資料のP.45~59が、小規模中継局、ミニサテ局等の維持費見込みを交えた具体的な内容となっているので、ぜひ一瞥頂きたい。

総務省WEBサイト「デジタル時代放送制度検討会NHK資料」より 総務省WEBサイト「デジタル時代放送制度検討会NHK資料」より

NHK放送波の世帯カバー率の4%程度でしかない小規模中継局(1,122局)ならびにミニサテ局(558局)に対し、今後10年間の更新・維持を踏まえた"年間"維持費110億/年が必要な見込み(NHK P.48)とされており、これら設備の民放との共用割合も7割を超えている(小規模中継72%/ミニサテ85%)ことから、まずは、こういったところを通信に代替するとの議論となるのだろうか?

あるいは、民放のミニサテは2,070局とNHKの4倍近くあり、NHKの協力が得られていない、より厳しいと思われる部分から着手すべきとの議論になるのだろうか?

代替の進め方にあって、利害の一致が難しい論点かもしれない。

また、筆者の理解が及ばなかった点として、NHK資料 P.57「放送NWの一部をブロードバンド(BB)で代替する場合の課題」のページがある。

総務省WEBサイト「デジタル時代放送制度検討会NHK資料」より

一見すると、条件不利地域の放送NWのBB代替を、「NHK+」の同時配信をメインに据えて課題を書き出しているようにも読めてしまう。

現在のあまねく受信の義務を履行し続ける上において、光化を進めてきたNHK辺地共聴2,600施設を含む5,300の施設には、同軸ケーブルや光ファイバー等が通っている筈であり、有線での放送が既になされている。そこには、遅延や権利に係る問題も無いと思われる。

また、「あまねくの実現 光ファイバー未整備地域への対応 17万世帯」とあり、この17万世帯という数字の中には、光化の進んでいないNHK辺地共聴の残り2,700施設あまりが包含されていると理解したが、同軸ケーブル等での放送は、あまねく実現しているのであろうと思われ、前述の遅延や権利の問題も無いと思われる。

2,700施設を光化するには、200億円程度が必要との主張もある(P.52 )が、その為に、本来業務である放送で既に届けているところを、任意業務であるNHK+に置き換えていくというのは、変な話であるので、そういったことでは無いのかもしれないが…

この「17万世帯」という数字は何なのか、もう少し詳しく見てみた。総務省の「ICTインフラ地域展開マスタープラン3.0」にて、居住世帯向け光ファイバーの未整備世帯を、21年度末までに約17万世帯に減少させる目標が掲げられている。

だが、21年度以降の光ファイバー普及の予定は描けていない。光ファイバーが引けない残り17万世帯に対しては、携帯基地局を整備してブロードバンドを提供するというアプローチで、23年度末までに、光ファイバー未整備の17万世帯を含む、現在の「携帯電話の居住エリア外人口1.3万人(1.3万人に電波が届いてない)」を解消するアプローチを採るとされている。

もしかすると、ここに利害の一致があるのかもしれない。NHK辺地共聴2,700施設の光化には200億円かかるので取り組みづらい。おそらくこのことはNTT東西の光化ユニバ議論と同義であり、また、NTT東西の光ファイバー敷設に経済合理性が見いだせない17万世帯は携帯電話の電波によるブロードバンド提供で置き換える予定とも重なるということだろう。

従って、その地域に該当するNHK辺地共聴の同軸ケーブル等での放送視聴は、携帯電波によるブロードバンド利用で、NHK+の同時配信の視聴(テレビ端末含め)を担保しつつ、緩やかに同軸ケーブルのEoLを待つ。そんな筋書きなのではないだろうか… 

そうだとすれば、「インフラの適材適所、“これからの”あまねく受信」のお題目のもと、「任意業務」であるNHK+を「本来業務」にしていく議論のきっかけや、TVチューナー付き端末に紐づく受信料徴収といった考え方からの脱却のきっかけにもなるかもしれない。

なお、ご承知の所かと思うが、NHKの8月末のリリースで、22年4月に「NHKインターネット活用業務実施基準」を変更する旨が出されているが、そこにはNHK+におけるテレビ向け配信(「見逃し配信」のみ)の開始も入っている。

NHKリリース「NHKインターネット活用業務実施基準の変更について」より

テレビ端末向けに、まずは「見逃し配信」の試行的提供のみだが、今後、テレビ端末向けに「同時配信」を行っていく、「ネット配信による"放送"」を本来業務にしていくにあっては、遅延や画質等の品質について、どのように整理するのか、制度上の明確化は避け難いと思われる。

電波と違い、品質が受け手側の環境や時々のネット環境に依存しやすいなかで、どういった落し所にするのか、有線一般放送やマルチキャストの品質省令はあるものの、既存の制度や、地上デジタル放送高度化作業班での議論を睨みながら、オープンインターネットのユニキャストをどう制度構築すべきなのか、今回の検討会の中で、論点4「1.放送設備の柔軟な整備・運用に対応した制度の在り方」に含まれると思われるが、この点を来夏の取り纏めまでにきれいに整理するのは、容易なことではないと思われる。

ということで、益体も無い前置きが長くなりましたが、本エントリーの本編である、第2回意見交換のメモとなります。(※逐語録ではなく、筆者の意訳となります。予めご了承ください。)

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