テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2021年11月号

FNNプライムオンラインはなぜ月間1億PVを達成できたのか

2021年11月01日 09:19 by sakaiosamu

フジテレビ系列のニュースを集めて運営するニュースサイト「FNNプライムオンライン」が8月の月間PV数1億を達成したと9月初旬に報じられた。

フジテレビ、『FNNプライムオンライン』月間1億PVを突破 歴代最高アクセス数を記録(Screens 9月6日)

9月はさらにPV数が伸びたそうで、これはなかなかの快挙だと言える。テレビ局が運営するWEBサイトが新聞など他のニュースメディア同様、億単位のPVを獲得したのだ。いったいどんな秘訣や魔法を使えば達成できるのか。気になって取材してみた。

”なぜ1億PV?”の見出しに惹かれて読んでいる方には申し訳ないが、取材してわかったのは何か特別な秘訣や魔法はないことだ。ただ取材して感じたことがある。ニュースサイト運営で大事なのはこんなサイトにしたいという理念と、関係者との間で固く信頼を結ぶこと。このサイトに携わるお二人の話から、それを感じ取ってもらいたい。

取材に応じてくれたのは、フジテレビ報道局の松井信樹プライムオンライン編集長とプロジェクトの責任者である宮澤徹局次長。

ネットワークの全国取材体制を維持するために

FNNプライムオンラインは2018年4月に誕生した。フジテレビがテレビで放送したニュースをWEB化した記事がベースだがそれだけではない。系列ローカル局のニュースもたくさんある。またWEB版独自の記事もある。さらには「めざましテレビ」「めざまし8」などの番組から記事化したものも入っている。個人の署名記事も多い。

「テレビのニュースの時間枠から落ちたこと、テレビで伝えきれない取材内容を届けるメディア、ある種の受け皿の形でスタートしました。テレビでは生かしきれなかった報道局のリソースをWEBに有効活用するのが幹となる部分です。」FNNプライムオンラインを、松井編集長はこう説明する。

「そこを幹として育てる一方で、情報番組の力を借りた記事や編集部が取材したWEBオリジナル記事でPV数の底上げも狙っています。」

これらの記事は、FNNプライムオンライン本体だけでなくあらゆる外部配信メディアでも読むことができる。これにより本体の数倍にもなる大きなリーチ力を獲得している。

FNN提携サイト
※FNNプライムオンライン媒体資料より 提携先サイト

系列局のニュースが読めるのも大きな特長。FNNプライムオンラインは系列28局が共同出資し、その運営をフジテレビが託される形をとっている。系列局から毎日ニュースが集まってくる仕組みを整えているのだ。宮澤氏はその背景を説明してくれた。

「シュリンクが危惧される放送ビジネスの中で、いかにしてFNNの全国取材体制を維持するか。そのためにWEBサービスとして自立し、会社からお金をもらわなくても回るように、そして取材インフラとして生き延びられるように、きちんとマネタイズしようというのが最初の一歩でした。」

ネットワークのニュース体制を維持するのがFNNプライムオンラインのミッション。だからこそマネタイズは重要なのだ。1億PV達成はその目的の大きなマイルストーンと言える。

「”出資者”である系列局の皆さんに月に1回のFNNの会議で、プライムオンラインの月々の成績や収入と費用などを報告しています。会社に例えれば、系列局が株主で私が雇われて運営している立場。」

コントロールしない、という方針

様々なリソースの記事が集まってくると、整理するのが大変そうだ。毎日何本の記事を配信しているのか。そう聞くと、宮澤氏の答えは意外なものだった。

「インターネットは無限の棚。総数のコントロールはしてません。社内の記事も、ローカル局の記事も、さばける限りは全部さばくつもりでやっています。それがもしかしたら強みの一つで、何が当たるかはわからないから、Twitterなどで話題になってワーッとお客さんのうねりができ、思わぬヒット記事が生まれることもあります。本数をこうしようとかあまり意識的に運用してないのです。系列局から毎日平均10本以上は記事が来てると思うので、ローカル局で300本、フジ発のニュースがおそらく60本、読み物記事を含めると1日400本くらいだろうと思います。」

乱暴なようだが、WEBメディア運営とはそういうものかもしれない。どんどん記事を配信しながらユーザーの動きに身を委ねるのが基本姿勢だ。

本数はコントロールしないと言う一方で、松井編集長は「どんなニュースサイトか」について明確な方向性を持っている。

「まだ実を結んでるとは言いがたいですが、毎月組む特集では”これまでの常識が通用しない未来を予見するサイト”をテーマにしています。大きく二つあり、ひとつはAIの出現で人の代わりにロボットが考えるようになって、その先どんな世の中になっていくのか。もうひとつは将来への漠然とした不安、人生100年時代と言われ終身雇用や年功序列がなくなりつつある中で、結婚はどうするかお金はどうしたらいいかなどについて、こういう情報やこんな考え方があると選択肢を提示するサイトになるといいなと考えています。」

FNNプライムオンラインには様々なテーマの特集の「箱」が並ぶページがあり、松井編集長の言う「予見」的なテーマの他にも衆議院選挙の箱やSDGsの箱もある。いわゆる調査報道の受け皿になる「追跡ニュース記者の目」という箱もあり、ローカル局の記者が追い続けるシリーズ記事もある。こうした特集はニュースメディアとしての大きな特長であり、ローカル局にとってのモチベーションにもなっている。ローカル局も自分たちの記事の出し先として、PV数が上がるに従って意欲的になっているという。これも躍進の大きなエンジンだ。

1億PV達成は、毎日の努力の積み重ね

それにしても、1億PVを叩き出せたポイントはどこにあるのだろう。宮澤氏は考えながらこう説明した。

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

LIP北信越はローカル局連携のひとつのモデルになるかもしれない

2021年09月号

「ローカルにもっと伝える力を」と掲げるKBCの新事業会社、Glocal K

2021年08月号

日本のコンテンツ産業はジャンプする時!〜韓国と日本を結んできた、黄仙惠氏に聞いてみた

2021年04月号

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2021年10月号

緊急事態宣言は10月1日に解除された。世の中には平穏な空気が流れる。メディ...

2021年09月号

コロナ禍はゆっくりピークアウトに向かうように見える。だが新種株などまったく...

2021年08月号

ゲリラ豪雨が突如ある地域を襲うように、メディアの天気は移ろってゆく。快晴と...