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2021年09月号

LIP北信越はローカル局連携のひとつのモデルになるかもしれない

2021年09月16日 10:54 by sakaiosamu
2021年09月16日 10:54 by sakaiosamu

石川・新潟・長野を合わせると人口500万エリア!

ローカル局の行く末の不安がいよいよ取り沙汰されるようになってきた。「再編」の言葉はもうタブーではない。どうすれば生き残れるのか、本気の議論が様々に出てきている。

そのヒントになるかもしれない数字が「500万人」だ。新潟県、長野県、石川県の3県の人口を合計すると、536万人になる。これは福岡県(512万人)北海道(526万人)を上回る。こうして示されると、そうなのかと驚く。

ローカル局の方と話すとよく「うちは福岡や札幌の局さんと違って・・・」と2つのエリアのことが出る。うちは小さい、という比較対象として福岡と北海道が出てくるわけだ。

新潟、長野、石川はそのままだと福岡や北海道より小さい。だが3県がまとまると同じ人口規模と捉えられる。興味深いことではないだろうか。

上の画像は、今年設立された新会社、LIP北信越のパンフレットの表紙だ。3県がまとまると「500万人パワー!」になることをアピールしている。

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3県の放送局が設立したLIP北信越に行ってみた

LIP北信越とは、長野朝日放送と北陸朝日放送、新潟テレビ21の3局が共同で設立した会社だ。テレビ朝日系列の3局が様々に連携していくために、まずそれぞれの東京支社を同じ場所に移している。LIP北信越のオフィスであり、3つの東京支社の移転先でもある場を訪問してみた。ちなみに、大阪支社も同様に移転の準備中だという。

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晴海通りを銀座から来て、勝鬨橋の手前を曲がってすぐのビルの7階に入ると大きな空間にテーブルと椅子が並ぶ。流行りのコワーキングスペースのようなスペースだ。これがLIP北信越のオフィスだった。

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反対側の奥には、3つに区切られたスペースが設けられている。これが3局の東京支社ということだ。

どうしても3局別々に置く必要がある設備などはこの区切られたスペースにあるが、基本的に社員はその手前のコワーキングスペース的な空間で仕事をする。

LIP北信越の代表取締役であり、新潟テレビ21の取締役でもある小田研氏にお話をうかがった。

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このオフィスでは完全にフリーアドレス制で個別の席を決めてはいないそうだ。

「最初は局ごとにかたまって座っていましたが、だんだんバラバラに座るようになり、会社の違いを超えてコミュニケーションするようになりました。自然と業務に関する会話も進み、同じスポンサーについて情報共有したりもしてますね。それだけでもお互いに助かります。」

5月に設立したばかりで、さすがに営業的な成果が出ているわけではないが、コロナ明けを意識していろいろな相談が進んでいるという。

「スポットを3局連携した企画で提案しようなど様々に議論しています。コロナ禍で営業的な動きがしにくいですが、それが落ち着いたら動き出そうと言っています。」

パンフレットを制作して、代理店やスポンサーに考え方を説明している。

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冒頭の画像はその表紙だったのだが、中を開けるとこのように3県を合わせた魅力が表現されている。新潟、長野、石川という括り方はあまり聞いたことはなかったが、社名にも使われた「北信越」という言い方は元々あり、共通項の多いエリアだ。

日本酒やワインなどお酒がおいしく、女性の労働率が高く共働きが多い。生活しやすく住みたいエリアランキング5位までに3県とも入っている。新幹線でもつながっていてひとつの豊かな経済圏と言える。新潟県と石川県の間の富山県にはテレビ朝日系列の局がなく、この地図でも空白になっているのが気にはなるが。

「北信越」の系列局がまとまり、ひとつの経済圏として営業をしていくのはかなり有効に思える。CMを打ちたいスポンサー企業もエリアごとのマーケティング活動をするために、それぞれの傾向や特徴を知りたがっている。「北信越」というまとまりかたはそんな企業のニーズに応えられるのではないだろうか。

言い出したのは「テレビ局唯一の女性社長」

オフィスを訪問する前に、LIP北信越について発起人の1人である新潟テレビ21の桒原美樹社長にリモート取材をしていた。実は桒原社長への取材は2回目で、1回目は全く別の趣旨、「テレビ局唯一の女性社長」というテーマだった。

テレビ局「唯一の女性社長」意外なスタート地点(東洋経済オンライン7月2日)

この時の取材でリモートなのにかなり打ち解けた空気でお話を聞けたこともあり、LIP北信越についても気さくにお話しいただけた。話のはじまりは、テレビ朝日在籍中にさかのぼる。

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