テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2021年02月号

clubhouseで起こりつつある、メディア業界の新しい「連帯」

2021年02月08日 13:21 by sakaiosamu

1月下旬のある日、私のFacebookのタイムライン上に突如、もじゃもじゃ頭の黒人のアイコンが登場し埋め尽くした。どうやら新しい音声ベースのSNSらしい。友人知人の中でも新しいものに敏感な人びとが次々に参加し面白がって感想を共有している。もちろんclubhouseのことだ。私は必ずしもこういうものに真っ先に飛びつくタイプでもなく、数日間様子を見守っていた。新しいSNSは何が起こるかわからない。だがあまりの盛り上がりについに我慢できなくなりダウンロードした。招待してほしいとFacebookで投稿したらすかさず招いてくれた人がいて、無事登録。

最初はおそるおそるroomと呼ばれる空間に入ってこっそり聴いていたが、メディア関係のroomに入るとスピーカーに招かれてしまう。おそるおそるスピーカーになり、少しずつ慣れていった。いまではちょっと手が空いたらclubhouseを開いて面白そうなroomがあると入るようになった。この週末は深夜まで話していたら家族にうるさいと叱られてしまうくらいにはハマっていた。

この2週間ほどの間にテレビのニュース番組やワイドショーでもこぞって取り上げられたので、すでにMediaBorder読者諸氏ならどんなSNSかはご存知だろう。音声で気軽に参加でき、オープンな空間で見知らぬ人同士で簡単に会話できる。著名人やタレントを中心にしたroomになると最大人数の5,000人に近い人びとが集まっているが、むしろ数十人から数百人で絞ったテーマで話しているものが多い。数十人のroomに招かれてしゃべっていると数百人にふくらんでいることも何度かあった。どこかZoomに似ているようで、オープンな空間になんの準備もせずに気軽に参加できるところはまったく違う。映像コミュニケーションの普及の後で逆に音声のみのものが流行るのが面白い。2009年にTwitterに参加した時を思い出した。あのころも、一般に普及する前に何かを求めている人たちがこぞって入ってきて、思わぬ繋がりで多くの人と出会うことができた。その後のTwitterがギスギスした空間になってしまったことを思うと、clubhouseが楽しいのもいまのうちかもしれない。興味があればやってみることをおすすめしたい。

clubhouseでは実に多様なテーマで話が盛り上がっているが、「起業」「地域コミュニティ」「エンタメ」などと並んで定番化しているのが「メディア」だ。ラジオを類推するのもあるだろう。WEBメディアはもちろんだが、放送メディアについてインナーの人びとが集まってしゃべっているものも多い。

そこではもともと私が知る、メディアの議論の常連的な人びとや、キー局準キー局のいつもの論客たちが当然多い。だが、「テレビとネットの未来」を語ってきたつもりの私の知らないメディア界の人びとも大勢いる。あるいは、これまで私が出会っていなかったローカル局の人びとや若いテレビ局社員が大勢出てきている。なるほどなあと思ったのだが、私は10年ほど前から主にTwitterやFacebookを通じてメディア界の人びとと繋がってきた。そういう場で公然と話せる人は直接的な現場から離れた、ある程度の年齢層の人が多かった。clubhouseでは現場にいる人が気軽に出てきやすいのだろう、若い層、あまり表で発言しにくかった人びとが出てきている。

そして面白いのは、そんな人びとが急激なスピードでゆるやかに繋がり始めていることだ。私もすでに何人か新しく知り合った人がいるが、そんな現象が参加した人数分起こっているとしたら、すごいことではないだろうか。新しい「連帯」が生まれようとしているのではないか。 

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