テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2021年01月号

映画産業は大きなターニングポイントを迎えた〜「劇場+配信」型へ

2021年02月01日 14:40 by sakaiosamu
2021年02月01日 14:40 by sakaiosamu


※グラフは筆者作成

1月27日、日本映画製作者連盟が国内の映画興行について2020年の統計を発表した。

2020年の映画興行収入は1432億円、前年の2611億円に対し45.1%減少した。その中で、邦画は1092億円で前年比23.1%減少、洋画は340億円で71.4%減少となった。

筆者は毎年の結果を加えてグラフ化している。2001年以降のグラフに去年の数値を加えたものが上だ。ひと目で見てわかる通り、全体的に2020年はカクンと極端に折れ下がっている。2011年の東日本大震災でも大きく下がったが、昨年の下がり方に比べるとかわいく思えるほど。この時は2010年に史上最高の2200億に達したのが1800億円に下がって映画業界がうなだれたが、いま思えば大したことではなかった。

さてこのデータ、邦画だけをとってみると少し受け止め方が変わってくる。2019年の1421億円が1092億円に大きく落ちたとはいえ、2000年代後半以降の平均値の範囲内と見れなくもない。ただし、ここには「鬼滅の刃」の興行収入365億円が含まれている。それを抜いた数値をグラフに入れてみたのが点線部分だ。全体は1067億円と前年から6割減、邦画に絞ると727億円で前年から5割弱の減少になる。

たった一本のアニメ映画が、映画興行史上、とくに邦画の興行を崩落一歩手前で押し留めたのだ。さすが煉獄さん!と映画を観た者としては言いたくなる。

邦画に比べて洋画の落ち込みの方が激しいのはなぜか。日本が欧米に比べてコロナの感染被害が少なかったからだろう。毎週のように映画館に行く筆者も4月5月は一本も映画館で見なかったが、それ以外の月はコンスタントに映画館に行けた。一方、例えばロサンゼルスではかれこれ1年間映画館はクローズしているそうだ。

そのため、洋画は世界的に公開延期が続き、日本でも公開されていない作品が多い。「モンスターハンター」にせよ「007」の新作にせよ、一年中映画館で予告編を見た気がするが、何度も公開が延期されいまだに本編を見ていない。

これもワクチンが整い、コロナ禍が去れば元に戻るだろう。だが、他のことと同じで、まったく元通りにはなりそうにない。ではどうなるのか。

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