テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2020年12月号

映画を見なくてもだいたいわかる、映画「NETFLIX 世界征服の野望」の解説

2020年12月22日 01:33 by sakaiosamu

12月11日から公開された映画「NETFLIX 世界征服の野望」。筆者は公開日に勇んで見に行った。公開規模が小さく上映館は少ないし上映回数も1日1回程度だ。なかなか見るのも大変だしすぐに終わってしまいそう。だがもちろん、本誌読者には見るべき点が多い内容。そこで、見る機会が作れない読者の皆さんのために、この映画のポイントを解説しておこう。ストーリーものではないので「ネタバレ」にはならない。むしろ後で見たら復習になってより内容が理解できるはずだ。ということで、いけしゃあしゃあと中身を語ってしまおうと思う。

この映画は書籍「NETFLIXコンテンツ帝国の野望」を書いたジーナ・キーティング氏が脚本に参加しており、この書籍が元になっている。そして映画に出てくるのはNETFLIXの元関係者がほとんど。中でも初代CEO、マーク・ランドルフ氏の回顧談が軸になっている。現CEOのリード・ヘイスティングス氏は画面に出てきても喋りはしない。だからと言って会社を追われた元CEOが恨みつらみを語る内幕暴露映画ではない。むしろ、大成功した企業を立ち上げた功労者が幸せに創業時を振り返る内容だ。

「何かやってみよう」で生まれたDVDの郵送レンタル

NETFLIX創業は、「コンテンツで世界征服をしよう」とか「ハリウッドにアンチテーゼを叩きつけよう」などという大袈裟な野望が原点ではない。あるIT企業を成功させ株式を売却したヘイスティングス氏とランドルフ氏が、次に何をしようかと相談した結果生まれた会社だ。

二人が創業を検討した90年代はビデオレンタル全盛の時代。多岐に渡る分野での創業を議論する中、このビデオレンタル事業も浮上した。そこへちょうど、DVDがVHSビデオに替わるメディアとして注目されはじめた。VHSのレンタルは返却が遅れると多大な延滞料がかかった。そこで、DVDレンタルなら郵送にできるのではないか、延滞料のかからないいつ返してもいいレンタル事業に可能性があるのではないか、と二人は仮説を立てた。だが郵送でDVDが傷つくようなら成立しない。そこである日、CDを買って何通か自分宛てに郵送してみた。翌日自宅に届いたCDにはまったく傷がついておらず、問題なく再生できた。いける!と二人は確信した。97年、NETFLIXが誕生する。

まったく関係ない事業をやっていた二人が、あらゆる分野の起業を議論し、辿り着いたのがDVD郵送レンタルという新事業だったのが面白い。「餅は餅屋」にこだわる我々日本人にはない発想ではないか。だからこそ「まったく新しい事業」を生み出せたのだと思う。

この話は出だしにすぎない。NETFLIXの成功はこうした「ロジカルな答え」がいくつも積み重なった結果なのだ。

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