「テレビは販売促進費を狙え」論の大きな間違い
あるメディアに載っていた記事で「テレビ局が今後狙うべきは販売促進費の市場だ」という論を読んだ。広告のことがあまりわかっていない論者が書いたもののようでこれを鵜呑みにすると大変なことになるので、ここで解説しておきたい。
まず企業が消費者にアプローチし商品を買ってもらうためにはプロセスがある。古いモデルでは上の左側のように捉えられていた。私のような古株になるとAIDMAという考え方を教わったものだが、それと似たようなものだ。最初に知ってもらい(認知)、面白そうだなと思ってもらい(興味関心)、他と比べて具体的に考えてもらい(比較検討)、最後はお金を払って手に入れてもらう(購入)。マスメディアの時代はテレビと新聞雑誌を上のように役割づけており、最後は店頭にノボリを立てたりパンフでフォローしたりして買ってもらっていた。ファネルとはWEBマーケティングでよく使われてきたモデルで、AIDMAとほぼ同じ考え方だ。
最近は新聞雑誌が広告キャンペーンに組み込まれなくなってきた。そうすると上のファネルの真ん中部分、ミドルファネルが失われていると広告業界の一部では問題視していた。テレビで認知してもらってもミドルファネルで興味を持ってもらい具体的検討をしてもらうプロセスがなくなっており、そこにネット上でバナーを見せても押してくれるだろうか、との問題提起だ。ビールやカップラーメンなどはそもそもバナーを頑張らなくてもテレビCMで認知すればスーパーで買うかもしれない。だが買うまでにもう少し検討しないといけない商品は、CMとバナーだけで動くはずがないのだ。
販売促進費とはどんな予算かというと、ファネルでいうといちばん下の「購入」の部分だ。その市場は大きく16兆円とか20兆円とか言われるのは確かだし、大きな市場を狙うのは成長をめざす企業の基本だろう。だがことテレビ局は、少なくとも地上波テレビ局はここをめざすとえらい目に遭う。それはなぜか?
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