本日(10月22日)発売の週刊文春におどろおどろしい見出しが躍っていた。
<菅極秘命令「携帯の次はNHKをやれ」>
文脈は明解だ。菅政権が誕生して、いきなり携帯電話料金の値下げ論が浮上した。菅首相は実際に口にしたし、武田総務大臣はその意に沿って発言している。驚くことに各通信会社もその要望にスピーディに応えようとしている。NTTがドコモを完全子会社化したのも、実際には元々準備を進めていたのだろうが、携帯電話料金値下げにも対応するためと報じられた。
つまり、携帯電話料金値下げに成功しつつある菅首相が武田大臣と総務省に、「次はNHK受信料を値下げせよ」と言っているのではないかという記事なのだ。
これに方向的には近いことを筆者も、東洋経済オンラインで書いたところだ。
「菅首相に放送業界の人々が戦々恐々とする訳 電波料見直し、NHK受信料値下げの行方に注視」
10月7日付けのこの記事では、菅首相が2006年から2007年にかけて第一次安倍政権での総務大臣時代に、放送業界に「圧」をかけたりNHKの受信料値下げを意図したことなどを書いている。首相になったら同じような「圧」をかけてくるのではないか、とくにNHKに料金値下げを要求しその分、支配力を強めようとするのではないか。各所で情報収集してそんな懸念を持つ人が多いことを確認して書いたのだが、そんな中での文春の記事は読まないわけにはいかなかった。
別の伏線もあった。
この弁護士ドットコムニュースの記事にある通り、NHKは総務省の有識者会議でテレビ放送の受信設備設置の届け出義務化を要望として出したという。現状は徴収員がテレビアンテナの有無などを確認して受信料を払ってない人をほじくり出すやり方で確かに手間がかかる。これを届け出義務化にすれば徴収員の苦労もかなり省けるだろう。ただ、カーナビやワンセグケータイなど「受信設備」は多いので、事実上の受信料の税金化につながらないかとの危惧もある。
これと菅政権から漂うNHK受信料値下げ論を合わせると、料金下げるから全員払えという流れかと邪推したくもなる。それは大いに問題ではないか。受信料を払っている筆者としても、疑問に思ってしまう。
ただ、週刊文春を実際に読むと、そういう懸念は的外れに思えてくる。記事の後半でNHK前田会長に取材した受け答えが披露される。それをそのまま受けとめると、前田会長の言動に政権からの指示は働いていないように見える。彼は純粋に経営者として課題を解決したいのかもしれない。
放送やメディアのことがわかってないと、NHKは有料放送ととらえてしまうだろうし、そうすると法律で「受信設備設置=受信料支払い義務」となっているのだから届け出義務化してくれないとスジが通らないと考えたくもなるのだろう。実際、NHKが「公共放送」としてやってこれたのは微妙なポジションだからであり、国営放送でも民間有料放送でもないので支払い義務化は難しい、という感覚はわからないかもしれない。いや、わかる方が変かもしれない。
いずれにせよ、週刊文春に書かれた前田会長の回答を読むと、政権とは関係なさそうに思える。
ただこの件は、極めて日本的な微妙さに包まれているので、様々な見方や情報が必要だと思う。
そこでMediaBorderでは購読者の皆様による参加型の議論の場を作ってみたい。
10月29日夜に「緊急議論!NHKの制度改正!」と題し、ミライテレビ推進会議(MediaBorder購読者のための勉強会)の10月会合として、このテーマについての議論をみなさんと一緒にやってみたいと思う。もちろんNHKを攻撃するための場ではなく、現状の認識を共有し、「設備設置届け出義務化」の現実性や政権との関係を冷静かつ知的に議論する場にしたい。
問題提起者として弁護士ドットコムニュース編集長の新志有裕氏に議論の口火を切ってもらい、参加者同士で活発に議論する。
この機にミライテレビ推進会議の会合に参加してみたいと思う方は、以下の手段でお申し込みください。テレビとネットの融合をめざすミライテレビ推進会議が扱うに格好の題材だと思う。ぜひ多くの皆様に参加してもらいたい。
読者コメント