テレビとネットの横断業界誌 Media Border

2020年08月号

映画「はりぼて」が暴いたのは、地方政治の裏側だけではない

2020年08月27日 11:56 by sakaiosamu


※ユーロスペースに置いてあった映画のチラシ

映画「はりぼて」が面白かった。富山県の地上波民放であるチューリップテレビが作ったドキュメンタリー映画で、同局がスクープした富山市議会議員の政務活動費乱用についての作品だ。2016年にチューリップテレビが報道し、全国的にも話題となったので憶えていた人は多いだろうが、あれで終わりではなかったのだ。次々と明るみになる議員たちの乱用。それを追う取材は実は今年になっても続いていた。

日本の政治はコメディだった

この映画の魅力は、政治家の腐敗を追うという深刻なテーマのはずが、大笑いしながらコメディ映画として楽しめることにある。

予告編を見れば雰囲気は十分伝わるだろう。脚本のある喜劇映画ではないかと思いたくなるくらい、政治家たちが笑えるのだ。どう見ても怪しい政務活動費の報告書。市政報告会が行われたはずの公民館はそもそも報告書にある人数がどう見ても入らない大きさだ。その点を追求するといけしゃあしゃあとウソをつく。返答に困ると「ううむ」と詰まる。見え見えなのだ。

驚くべきことに、半年で14人の市議が辞職した。公費の不正流用は犯罪だ。辞職後に3人の市議が裁判で有罪になった。

額は莫大ではない。何十億円も流用し財界に流れた、というどす黒い話ではない。数年分合わせて数百万円で、要するに飲み会なのだ。手口も印刷会社に白紙の領収書をもらったり、飲食の領収書に数字を書き加えたり。ちょっと注意してみればバレバレのやり方。

その小ささ、ちんけさも含めて地方政治家たちがどこか人間的でかわいらしくも思えてくる。「愛すべき」小悪党たち。そんな気がしてくるし、そういう描き方をしている。ただ、こんな「政治」はきっと日本中で繰り広げられていることだと思うと、涙も出てくる。私たちが民主主義というものをまったく獲得できておらず「愛すべき」政治家たちの姿にほだされてきて、なれ合いの議会が続いてきたことを突きつけられもする。まったく情けないことだし、なんとかしないわけにはいかないとも感じた。

という、ここまでは一般的なこの映画の感想だが、MediaBorder的見方では、この映画の持つ意義が倍増する。実はこのドキュメンタリー作品で描かれているのは、テレビ局自身なのだ。それを作り手たちはどう見ても自覚的に行っている。番組から映画になった価値はそこにこそあると思う。

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