Introduction
緊急事態が解除され、日本中が平常運転へ動き出した。ただ、何もかもが元通りになるわけではなさそうだ。今後放送業界のプレイヤーは大きな変化を自ら起こしていくべきではないか。元フジテレビのメディアストラテジストとして放送業界に提言してきた塚本幹夫氏が、米国のメディア界に詳しい人物への取材をもとに、アフターコロナに何を変えるべきかについて寄稿してくれた。とくにローカル局の皆さんにはじっくりお読みいただきたい。
書き手:ワイズ・メディア メディアストラテジスト・塚本幹夫
コロナで最も深刻なのは映画館
5月の上旬、ロサンゼルス在住のメディアコンサルタントとリモートでインタビューした。毎年春、ラスベガスで開催されるNAB(全米放送協会)ショーの帰途に立ち寄り訪問していたのだが、今年は新型コロナウイルスの影響で渡米が中止。70歳代のおじいさんなのでZoomが使えるかどうか心配だったが、無事オンラインで話が成立したので、一部を読者の皆さんにも共有したい。
なお、彼はもともとネットワーク出身。エミー賞の主催団体のトップを務めた人物なので、スタジオ寄りだということをあらかじめお断りしておく。
インタビューした時はカリフォルニア州も外出禁止の最中。メディアも日本同様、大変な状況になっていた。彼曰く、最もやばいのが映画館のチェーン。
米では数千スクリーンを抱える大手シアターチェーンがいくつかあり、メディア産業の統計なんかでもケーブル、衛星、DVD、配信などと並んでメディアとして扱われているのだが、当たり前の話、客足が途絶えて経営危機に陥っている。仮に外出禁止が解けても一足飛びに元に戻るわけではないので、下手をするとこの夏、大手の中から破産宣告するところが出るのではないかという。
これに対してスタジオ側は冷たいもので、手のひらを返すように配信ファーストに変更。NBCユニバーサルは人気シリーズの新作「トロールズ ミュージックパワー」を、劇場公開をスキップして19ドル99セントで先行配信すると発表。チェーン側が反発する事態となっているそうだ。
元々映画館は鑑賞料金に加えてポップコーンやコーラを合わせると何十ドルという高額なエンターテインメント。彼曰くケーブルと同様、構造改革の必要性が叫ばれていた中、今回のウイルスで時期が早まっただけだという。
米国ローカルテレビの状況は?
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