日本のニュースデリバリーを支えてきたヤフーの方向転換?
ヤフーがZOZOの株式の過半数を取得し、子会社化した。先週、突然の発表とともに大きな話題になったこの出来事自体は、MediaBorderの対象として少々外れている。ヤフーがAmazonや楽天に対抗して通販分野を補強するための策だというのはすでに論じられている通りだろう。もちろんさらにその背景には、ソフトバンクグループが打とうとする次なる一手があるのだと思う。
MediaBorderとしてのこの件への注目ポイントは少し違う軸にある。ヤフーがECに注力する戦略の先には、メディア界で持っていたポジションを手放す可能性がある点だ。
誰もが知る通り、ヤフーは日本のニュースを牛耳ってきた。旧来の活字メディアはどこもヤフーに記事を提供している。ユーザーから見ても、ヤフーのすべてのサービスの入り口としてニュースが機能していたのだ。ヤフーはポータル、つまり様々なサービスの玄関が基本機能だが、ポータルのポータルがヤフーニュースだった。
ヤフーは筆者のような個人にもニュースを提供する権利を与えてくれた。そのため、場合によっては個人が書いたニュースが、大手メディアのニュースと同等のバリューを持つことができた。ネットの時代は個人が発信する場を持ったが、そのパワーがマスメディア並みになる装置として、ヤフーはニュースの民主化を果たしてくれたと言える。
テレビ局もいまでは、ヤフーニュースへの重要な供給者だ。ヤフーと契約していることが、テレビ局にとってネットの基盤になっていた。最近はローカル局の多くもヤフーニュースに参加している。
ヤフーに参加する意義は、何より収益にあった。既存メディアが自前のWEB上ではなかなかまともな収益を立てられなかったのが、ヤフーに参加することでそこそこの収益が得られた。とくにヤフートピックス(通称ヤフトピ)に載ると、爆発的なPVにより収益も何倍にもなった。多くのメディアが、自分のサイトよりヤフトピに掲載されることを目標にするようになった。
ヤフーの存在は、メディア企業にとってエコシステムの要として最重視すべきものになっていた。逆に言うと、日本のメディアはヤフーに依存して収益を立てていた。そんな依存はこれから、できなくなりそうだ。ZOZO買収に象徴される、ヤフーの方向転換がその理由だ。もう少し詳述しよう。
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